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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(4) 地域医療再生臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業が補助の目的を達していなかったもの[厚生労働本省](70)


1件 不当と認める国庫補助金 2,982,000円

地域医療再生臨時特例交付金(以下「交付金」という。)は、平成21年度地域医療再生臨時特例交付金交付要綱等に基づき、医療機能の強化等の取組等、地域の医療課題の解決に向けて都道府県が策定する地域医療再生計画に基づく事業を支援するために、都道府県に設置する基金の造成に必要な経費を国が交付するものである(以下、造成された基金を「地域医療再生基金」という。)。

都道府県は、厚生労働省が定めた「地域医療再生基金管理運営要領」に基づき、地域医療再生計画の範囲内で、必要に応じて、地域医療再生基金を活用して行われる事業(以下「基金事業」という。)に必要な経費を地域医療再生基金から取り崩して、基金事業を実施する事業主体に対して助成するなどしている(以下、地域医療再生基金から取り崩して助成したものを「助成金」という。)。

本院が、14道県(注)において、助成金の交付を受けた61事業主体が実施した基金事業を対象に会計実地検査を行ったところ、1県の1事業主体が実施した基金事業において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者 間接補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
基金使用額 左に対する交付金相当額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
摘要
            千円 千円 千円 千円  
(70) 厚生労働本省
青森県
国立大学法人弘前大学 地域医療再生臨時特例交付金 25 2,982 2,982 2,982 2,982 補助の目的を達していなかったもの

青森県は、周産期医療情報共有システム(以下「周産期システム」という。)の整備事業を実施した国立大学法人弘前大学(以下「弘前大学」という。)に対して助成金2,982,000円(交付金相当額同額)を交付していた。周産期システムは、周産期医療等を担う弘前大学医学部附属病院(以下「大学病院」という。)等の県内3医療機関及び県内2療育施設にサーバ等を設置し、これらをネットワーク接続して、転院する障害児の診療歴等の情報を共有する情報システムであり、このうち、大学病院へのサーバ等の設置及び大学病院のネットワークへの接続が本件整備事業として実施されていた。

弘前大学は、大学病院での診療歴を持ち2療育施設へ転院した障害児がいた実績があったことから、2療育施設から大学病院への情報提供要請の需要があるとして、本件整備事業を実施し、平成26年3月までに周産期システムの整備を完了していた。しかし、周産期システムの利用が可能となった26年4月以降に大学病院から2療育施設へ転院した障害児がいなかったことから、大学病院は、30年3月まで周産期システムを一度も利用していなかった。この間、弘前大学は、周産期システムが利用されていない原因を調査して接続先の見直しを行うなどの有効活用に向けた青森県等の関係者との協議・検討を行わないまま、今後の利用も見込めないとして、30年4月以降は周産期システムのネットワーク接続回線等の周産期システムを利用するために必要な契約を解除していた。

したがって、大学病院における周産期システムは、整備された当初から全く利用されておらず今後も利用される見込みがないことから、本件基金事業は、補助の目的を達しておらず、これに係る助成金交付額2,982,000円(交付金相当額同額)が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、弘前大学において本件基金事業の適正な実施に対する認識が欠けていたこと、青森県において弘前大学に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
14道県  北海道、青森、岩手、宮城、福島、新潟、滋賀、兵庫、鳥取、島根、山口、福岡、長崎、沖縄各県