ページトップ
  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 内閣府(内閣府本府)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

認定こども園に係る子どものための教育・保育給付交付金について、費用の額の算定に当たり、主幹保育教諭等の人件費等に相当する費用が基本分単価に含まれていること及び主幹保育教諭等2人又は1人を配置していない場合に減額調整を行う必要があることを明確に示し、市町村等に対して周知することなどにより、交付額の算定等が適切に行われるよう改善の処置を要求したもの


所管、会計名及び科目
内閣府及び厚生労働省所管
年金特別会計(子ども・子育て支援勘定)
(項)子ども・子育て支援推進費
部局等
内閣府本府(令和5年4月1日以降はこども家庭庁)
交付の根拠
子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)
子どものための教育・保育給付交付金の概要
小学校就学前の子どもの保護者が教育・保育認定給付の認定を受けた場合の当該子どもに対して民間保育所等が教育又は保育を実施する際に、市町村が当該民間保育所等に対して支弁する施設型給付費等に要する費用の一部について国が交付するもの
検査の対象とした事業主体数及び交付金交付額
137市区町 2906億2989万余円(令和2、3両年度)
費用の額の算定に当たり、主幹保育教諭等2人又は1人を配置していないのに減額調整を行っていなかった事態に係る事業主体数及び交付金相当額
23市区  28億0749万余円(令和2、3両年度)
上記について主幹保育教諭等の実際の配置人数等に応じて試算した調整額
8236万円

【改善の処置を要求したものの全文】

認定こども園に係る子どものための教育・保育給付交付金の交付額の算定等について

(令和5年10月16日付け 内閣府特命担当大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 制度の概要

(1) 子どものための教育・保育給付交付金の概要

子どものための教育・保育給付交付金(以下「交付金」という。)は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)等に基づき、小学校就学前の子どもの保護者が教育・保育給付の認定を受けた場合の当該子ども(以下「教育・保育給付認定子ども」という。)に対して社会福祉法人等が設置する保育所や認定こども園等(以下、これらを合わせて「民間保育所等」という。)が教育又は保育を実施する際に、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が当該民間保育所等に対して支弁する施設型給付費等に要する費用の一部について、国が交付するものである。

(2) 交付金の交付額の算定等

交付金の交付額は、「子どものための教育・保育給付交付金の交付について」(平成30年府子本第333号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

  • 費用の額
  • 利用者負担額
  • 交付対象事業費
  • 交付対象事業費
  • ×
  • 国庫負担率
  • 交付金の交付額
(注1)
国庫負担率  令和2年度は2分の1又は100分の56.835、3年度は2分の1又は100分の57.72となっている。

このうち、費用の額については、「特定教育・保育、特別利用保育、特別利用教育、特定地域型保育、特別利用地域型保育、特定利用地域型保育及び特例保育に要する費用の額の算定に関する基準等」(平成27年内閣府告示第49号)等により、民間保育所等の所在地域、利用定員、教育・保育給付認定子どもの年齢等の別に1人当たり月額で定められている基本分単価や各種加算の額に、各月の教育・保育給付認定子ども数を乗ずるなどして算出した年間の合計額によることとなっている。そのうち認定こども園の基本分単価等は、教育給付認定を受ける子ども(以下「1号認定子ども」という。)及び保育給付認定を受ける子ども(以下「2・3号認定子ども」という。)の区分ごとに算定することとなっている。

そして、費用の額の算定に当たっては、市町村は、「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(平成28年府子本第571号、28文科初第727号、雇児発0823第1号。以下「留意事項通知」という。)等に基づき、基本分単価に各種加算の認定等を行って一定の額を加算する調整を行うほか、所定の要件に該当する場合に、基本分単価等から地域区分等に応じた単価を基に算出した額(以下「調整額」という。)を減額する調整を行うこと(以下「減額調整」という。)となっている。

減額調整の認定に当たっては、留意事項通知で定める所定の要件に該当することとなった民間保育所等は、所在する市町村に申請し、市町村は、その内容等を確認することとなっている。そして、交付要綱等によれば、市町村は、交付金に係る交付申請書、実績報告書等を都道府県に提出し、都道府県は、市町村からこれらの提出があった場合には、必要な審査等を行い、適正と認めたときはこれを取りまとめの上、こども家庭庁(令和5年3月以前は内閣府本府。以下同じ。)に提出することとされている。

(3) 認定こども園における主幹保育教諭等の配置及びそれに係る費用の額の算定等

「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」(平成18年法律第77号)によれば、認定こども園において、必要があれば、通常の保育教諭等のほかに主幹保育教諭等を配置できることとされており、主幹保育教諭は、園児の教育及び保育をつかさどるとともに、園長を助け、命を受けて園務の一部を整理することとされている。

また、認定こども園に係る費用の額の算定については、留意事項通知等において、認定こども園に係る基本分単価に含まれる職員の構成、人数等が示されている。その内訳は、年齢別配置基準による必要人数(注2)、主幹保育教諭等2人(1号認定子どもに係る分及び2・3号認定子どもに係る分でそれぞれ1人ずつ)を教育・保育計画の立案、保護者や地域住民からの教育・育児相談、地域の子育て支援活動等(以下、これらを合わせて「子育て支援活動等」という。)に専任化させるための代替保育教諭等2人(同1人ずつ)等となっている。そして、代替保育教諭等2人を配置することにより専任化された主幹保育教諭等は、子育て支援活動等の取組を実施することとなっている。

こども家庭庁は、認定こども園に係る基本分単価には、主幹保育教諭等2人(1号認定子ども及び2・3号認定子どもの両方の利用がある場合。以下同じ。)又は1人(いずれか一方のみの利用がある場合。以下同じ。)分及び代替保育教諭等2人又は1人分の人件費等に相当する費用があらかじめ含まれているとしている(参照)。

図 認定こども園に係る基本分単価に含まれる職員の構成、人数等

認定こども園に係る基本分単価に含まれる職員の構成、人数等、画像

そして、留意事項通知によると、認定こども園に係る費用の額の算定に当たり、代替保育教諭等を配置するなどして一時預かり事業や障害児に対する教育・保育の提供等の所定の事業等を複数実施していないなどの場合には、減額調整を行うこととなっている。

一方、留意事項通知において、主幹保育教諭等を子育て支援活動等に専任化させるための代替保育教諭等の配置等に関しては定められているものの、専任化して子育て支援活動等を行う主幹保育教諭等の配置等に関することは定められておらず、主幹保育教諭等を配置していない場合の減額調整の要否については明確に示されていない。

(注2)
年齢別配置基準による必要人数  4歳以上児30人につき1人、3歳児及び満3歳児20人につき1人、1、2歳児(2・3号認定子どもに限る。)6人につき1人、乳児3人につき1人、それぞれ保育教諭等を配置することとなっており、これらの配置に必要な人数を指す。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、認定こども園における主幹保育教諭等の配置はどのようになっているか、交付金の交付額の算定に当たり、認定こども園に係る費用の額の算定は適切に行われているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、2、3両年度に交付金が交付された21都道府県(注3)の137市区町(交付金の交付対象となった認定こども園2,340施設、交付金交付額計2906億2989万余円)を選定した。そして、当該市区町を対象として、支弁台帳、実績報告書等を確認するとともに、職員の配置等に関する調書等の提出を受けてその内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。また、こども家庭庁において、交付金の算定方法、基本分単価の構成、留意事項通知の周知方法等について確認するなどして検査した。

(注3)
21都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、秋田、山形、茨城、群馬、埼玉、千葉、新潟、石川、山梨、岐阜、愛知、兵庫、奈良、島根、香川、宮崎、沖縄各県

(検査の結果)

前記137市区町の認定こども園2,340施設における主幹保育教諭等の配置等について検査したところ、55市区町の193施設では、主幹保育教諭等2人又は1人を配置していなかった。そして、これらのうち、23市区の93施設における費用の額の算定に当たっては、代替保育教諭等2人又は1人を配置するなどしていることから、主幹保育教諭等や代替保育教諭等の配置に関して減額調整の要件に該当する事項はないとして、減額調整が行われていなかった。

しかし、前記のとおり、認定こども園に係る基本分単価には、主幹保育教諭等2人又は1人分及び代替保育教諭等2人又は1人分の人件費等に相当する費用が含まれている。したがって、主幹保育教諭等2人又は1人を配置していない場合には、その配置人数に応じて減額調整を行う必要があると認められる。

前記23市区の93施設(主幹保育教諭等2人又は1人の配置がない1号認定子ども又は2・3号認定子どもに係る交付金相当額計28億0749万余円)について、主幹保育教諭等の実際の配置人数等に応じて調整額を試算すると、計8236万余円となる。

また、上記の23市区及び93施設に対して、主幹保育教諭等2人又は1人を配置していなかったのに減額調整を行っていなかった主な理由等についてアンケート調査を行ったところ、市区においては、主幹保育教諭等に係る費用が基本分単価に含まれていて2人又は1人が配置される前提であることを知らなかったという回答が最も多くなっていた。また、認定こども園においては、留意事項通知等における主幹保育教諭等の配置に関する内容及び取扱いを知らなかったという回答が最も多くなっていた。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

名古屋市に所在する認定こども園Aでは、令和2、3両年度に、主幹保育教諭を1人、代替保育教諭等を2人、それぞれ配置していた。そして、同園では、2、3両年度における各種加算や減額調整の申請に当たり、代替保育教諭等を配置しており、留意事項通知に定められている所定の事業等を複数実施していることなどから、減額調整の要件に該当するものはないとして申請書類を作成し、名古屋市に提出していた。

そして、同市は、交付金の交付額の算定に当たり、認定こども園に係る費用の額について主幹保育教諭等を配置していない場合の減額調整を行うことなく、同園の1号認定子どもに係る交付金相当額を、2、3両年度合わせて2743万余円と算定していた。

しかし、同園に係る基本分単価には、主幹保育教諭等2人分の人件費等に相当する費用が含まれていることなどから、主幹保育教諭等1人分に係る減額調整を行う必要があり、調整額を試算すると、2、3両年度計110万余円となると認められた。

(改善を必要とする事態)

認定こども園に係る交付金について、費用の額の算定に当たり、主幹保育教諭等2人又は1人分の人件費等に相当する費用が基本分単価に含まれているのに、主幹保育教諭等2人又は1人を配置していない場合に減額調整が行われておらず交付額の算定が適切に行われていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、市区において、留意事項通知等についての理解が十分でないことなどにもよるが、こども家庭庁において、認定こども園に係る基本分単価に主幹保育教諭等の人件費等に相当する費用が含まれていること及び主幹保育教諭等2人又は1人を配置していない場合における減額調整の必要性を明確に示していないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

こども家庭庁は、子ども・子育て支援法の規定等に基づき、今後も民間保育所等に対して交付金を交付していくこととしている。

ついては、こども家庭庁において、認定こども園に係る交付金の交付額の算定等が適切に行われるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 留意事項通知等において、認定こども園に係る基本分単価には主幹保育教諭等2人又は1人を配置するための費用が含まれていること及び主幹保育教諭等2人又は1人を配置していない場合には減額調整を行う必要があることを明確に示し、都道府県を通じて市町村に対して周知するとともに、市町村を通じるなどして認定こども園に対しても周知すること

イ 都道府県を通じて市町村に対して、認定こども園に係る費用の額の算定に当たり、認定こども園から各種加算の認定や減額調整に関する申請を受けた際等に、主幹保育教諭等の配置等に係る減額調整の必要性等について十分に確認するよう助言を行うこと