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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(22) 被災者支援総合交付金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省](199)


1件 不当と認める国庫補助金 6,847,000円

被災者支援総合交付金(以下「支援交付金」という。)は、被災者支援総合交付金実施要綱(平成27年復本第572号・厚生労働省発雇児0409第3号等)等に基づき、東日本大震災の被災者を取り巻く環境の変化に対応し、それぞれの地域において、被災者支援のための事業を効果的に実施することを支援することにより、被災者の心身の健康の維持向上、生活の安定等に寄与することを目的として、都道府県又は市町村等が作成した被災者支援事業計画(以下「事業計画」という。)に基づく事業に要する経費を対象に、国が交付するものである。

「被災者支援総合交付金の交付について」(平成30年厚生労働省発子0412第3号等厚生労働事務次官通知)によれば、支援交付金の交付対象事業は、「被災者支援総合交付金(厚生労働省交付担当分)による被災者支援事業の実施について」(平成27年雇児発0409第10号等厚生労働省雇用均等・児童家庭局長等通知。以下「実施要領」という。)に基づき実施する保育料等減免事業等とすることとされている。

また、実施要領によれば、国は、都道府県、指定都市、中核市(以下「都道府県等」という。)又は市町村(特別区を含み、指定都市及び中核市を除く。以下同じ。)が、東日本大震災の被災者に対して、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に基づく特定教育・保育施設等(以下「保育所等」という。)の利用者負担額(保育認定の子どもに限る。以下「保育料」という。)等の減免を行う保育料等減免事業を実施した場合、減免相当額について、直接又は間接に補助を行うこととされている。

保育料は、子ども・子育て支援法等により、原則として、一月につき定められた額(以下「月額」という。)とされているが、国は、令和2年2月に子ども・子育て支援法施行規則(平成26年内閣府令第44号)を改正し、災害その他緊急やむを得ない場合は保育料の日割計算を行うこととした。そして、厚生労働省等は、同月に事務連絡等を発出して、保育所等の臨時休園、市町村からの登園自粛要請等により保育の提供がなされない場合の保育料の日割計算の方法等を都道府県等に示している。

本院が3県及び10市町において会計実地検査を行ったところ、1市において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
交付対象事業費
左に対する交付金交付額
不当と認める交付対象事業費
不当と認める交付金相当額
            千円 千円 千円 千円
(199)
厚生労働本省
宮城県
石巻市
被災者支援総合交付金
2 143,078 143,078 6,847 6,847

石巻市は、令和2年度に、宮城県の事業計画に基づき保育料等減免事業を実施し、減免の対象となる被災者459世帯に係る保育料の全額計143,078,090円を免除したとして、「宮城県被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業費補助金」(以下「県補助金」という。)の実績報告書等を3年4月に同県に提出して、同県の審査を経て同年5月に県補助金の額の確定を受け、県補助金143,078,000円(支援交付金相当額同額)の交付を受けていた。そして、同県は、県補助金の交付実績等に基づき作成した支援交付金の実績報告書等を同年6月に厚生労働省(5年4月1日以降はこども家庭庁)に提出して額の確定を受けて、支援交付金の交付を受けていた。

しかし、同市は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、2年4月20日から5月30日までの期間において、保育所等の利用者に対して登園自粛を要請しており、上記459世帯のうち430世帯は登園を自粛していたため、その保育料については月額ではなく保育所等に登園した日数に基づく日割計算を行った額とすべきであったのに、日割計算を行っていなかった。

したがって、上記430世帯の保育料について、保育所等に登園した日数に基づく日割計算を行った上で、459世帯の保育料等減免事業における保育料の減免相当額を算出すると、適正な県補助金交付額は136,231,000円となることから、前記の県補助金交付額143,078,000円との差額6,847,000円が過大に交付されていて、これに係る支援交付金相当額6,847,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において保育料等減免事業における保育料の減免相当額を日割計算の結果に基づき算定しなければならないことについての理解が十分でなかったこと、同県において県補助金の実績報告書等の審査が十分でなかったこと、厚生労働省において実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。