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  • (3) 工事の設計が適切でなかったもの

護床工の設計が適切でなかったもの[近畿農政局](220)


(1件 不当と認める国庫補助金 109,934,567円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(220)
近畿農政局
兵庫県
西脇市
(事業主体)
農業用施設災害復旧
平成29〜令和2
146,467
(143,498)
139,398 113,168
(113,168)
109,934

この補助事業は、西脇市黒田庄町黒田地区において、平成29年台風第21号及び平成30年7月豪雨により被災した頭首工(注)のエプロン、護床ブロック(以下「ブロック」という。)等を復旧するために、エプロン本体工、護床工等を西脇市が実施したものである。このうち、護床工は、堰(えん)体の下流側の河床の洗掘を防止するために、新たに製作したブロック236個を連結して設置したものである(参考図1参照)。

同市は、本件工事の設計を「土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「頭首工」」(平成20年3月農林水産省農村振興局整備部設計課監修)、「農地・農業用施設・海岸等災害復旧事業の復旧工法2014年版」(平成26年9月農林水産省農村振興局防災課監修。以下、これらを合わせて「基準」という。)等に基づき行うこととしていた。

基準等によれば、護床工は、河床の洗掘を防止するために、河床の状況を考慮して必要な箇所に設けること、護床工としてブロックを設置する場合には、流水による河床土砂の吸出しを防止するために適切な工法(以下「吸出し防止策」という。)を選択することなどとされていて、吸出し防止策としては、ブロックとブロックの間に栗石等の中詰めを行うなどの工法が考えられるとされている。

同市は、設計図書において、前記の被災により洗掘された護床工の河床部分(最大深さ3.8m)を現地の河床土砂で埋め戻した後、その上に直接ブロックを連結して設置することとしていたが、吸出し防止策については示していなかった。そして、同市は、本件工事の請負人との吸出し防止策についての協議において、ブロックとブロックの間に現地の河床土砂の中詰めを行うよう指示しており、請負人は、当該指示を受けて、吸出し防止策として現地の河床土砂の中詰めを行っていた。

しかし、前記のとおり、基準等によれば、吸出し防止策として、ブロックとブロックの間に栗石等の中詰めを行うなどの工法が考えられ、適切な工法を選択することなどとされているのに、本件護床工で使用された現地の河床土砂は、中詰めの材料として適切でない粒径の小さなものであり、吸出し防止策が十分に講じられていなかった。

このため、本件護床工は、流水の作用により中詰めした上記の河床土砂が流失することによって、ブロックとブロックの間隙から埋め戻したブロック設置面の河床土砂が吸い出され、河床に洗掘が生ずるおそれのある構造になっていた。現に、本件工事のしゅん工から2年8か月が経過した令和5年2月の会計実地検査時点で、本件護床工の河床部分が洗掘され、ブロックが沈下していた。そして、同市が同年5月に計測を行ったところ、当該河床部分の洗掘により236個全てのブロックが沈下しており、沈下が最も進んでいる箇所ではしゅん工時から3.6m程度沈下している状況となっていた(参考図2参照)。

したがって、本件護床工は、設計が適切でなかったため、埋め戻した河床土砂が吸い出されて河床の洗掘が進行することにより復旧したエプロン等(補助対象事業費113,168,047円)に損傷が生ずるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額109,934,567円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、護床工の設計に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
頭首工  河川から必要な農業用水を用水路に引き入れるための施設で、固定堰(ぜき)、護床工等から構成される。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)