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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 令和3年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 過剰木材在庫利用緊急対策事業の実施について


(令和3年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した意見

林野庁は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて、公共建築物等の構造材等への木材製品の利用促進を緊急的に支援することにより、輸出できずに行き場のなくなった原木在庫の解消に貢献することを目的とし、令和2年度限りの事業として、過剰木材在庫利用緊急対策事業(以下「対策事業」という。)を実施している。林野庁は、対策事業の実施に当たり、一般社団法人全国木材組合連合会(以下「全木連」という。)を事業実施主体とし、木材製品の利用促進を行う工務店等への助成金の交付(以下、対策事業において工務店等へ交付する助成金を「対策事業助成金」という。)等の業務に要する経費について、国庫補助金を交付している。また、林野庁は、JAS構造材等の消費拡大に向けた普及・実証の取組等に対して助成を行う実証支援事業等(以下「実証支援事業」という。)を平成30年度以降実施してきており、対策事業は、実証支援事業を参考にしている。そして、対策事業の対象とすることができる建築物等は、対策事業以外に国からの助成を受けていないことなどが要件とされている。しかし、一部の建築主が国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けていて、建築物等が対策事業以外に国庫補助金等を財源に含む地方公共団体の補助金等の交付を受けているか確認することについて全木連に対して適切な説明が行われていなかったり、当該確認を行う仕組みが構築されていなかったりする事態、及び公募要領が公表された日より前に建築確認申請や工事請負契約、入札公告が行われるなど対策事業が実施されなくても木材製品が利用されることが見込まれていて、対策事業助成金の交付が木材製品の利用促進のために効率的に行われていない事態が見受けられた。そして、林野庁は、対策事業に対する本院の指摘を踏まえて、全木連に対して、令和4年度の実証支援事業の実施に当たり、工務店等の事業主体が事業申請を行う際には、建築主が地方公共団体の補助金等を含めて国からの助成を受けていないことを建築主に書面で回答を求め、当該書面を提出させるよう規程に反映させる措置を講じている。

したがって、林野庁長官に対して4年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。

ア 今後実証支援事業を含めて対策事業と同様に他に国からの助成を受けていないことを要件とする事業(以下「同様の要件を規定する事業」という。)を実施する場合、当該要件を確認する措置を講じた4年度の実証支援事業の実施状況を踏まえ、工務店等の事業主体が事業申請を行うに当たり、国からの助成の有無について、建築主から地方公共団体に照会するなどして地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれていないことを確実に確認する仕組みを構築すること。また、事業実施主体に対して、地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれているか確認することについて適切な説明を行うこととするとともに、当該構築した仕組みを規程に反映させるよう指導することとすること

イ 今後木材製品の利用促進を支援する事業を実施する場合に備えて、木材製品の利用促進のために対策事業助成金の交付が効率的に行われるためには、どのような方法で事業を実施するべきであったかについて、今回の対策事業を改めて検証するとともに、その結果を制度設計に活用する方法を検討すること

2 当局が講じた処置

本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 4年度の実証支援事業の実施に当たり講じた前記措置の状況を踏まえ、今後実証支援事業を含めて同様の要件を規定する事業を実施する場合には、地方公共団体等に照会するなどして地方公共団体の補助金等の財源に国庫補助金等が含まれていないことを確認した資料を事業主体から事業実施主体に提出させ、更に事業実施主体が地方公共団体等に確認する仕組みを構築した。そして、5年度の実証支援事業については、5年3月に事業実施主体である全木連に対して通知を発出して、当該構築した仕組みを規程に反映させた。また、同様の要件を規定する事業については、地方公共団体の補助金等の財源として国庫補助金等が含まれていないことを確認するよう事業実施主体に対して適切な説明を行うこととするとともに、当該構築した仕組みを規程に反映させるよう指導することとし、5年3月に林野庁内の各課に周知した。

イ 今後木材製品の利用促進を支援する事業を実施する場合に備えて、対策事業における事業要件等について検証を行い、木材製品の利用促進のために対策事業助成金の交付が効率的に行われるためには、実施要領等において、建築確認申請、工事請負契約等の木材を利用するために必要な申請や契約が対策事業の公募要領の公表日以降に行われたことを事業要件とする必要があったとする検証結果を取りまとめた。そして、制度設計において当該検証結果を踏まえた事業要件を設定するよう、5年7月に林野庁内の各課に周知した。