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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第18 阪神高速道路株式会社|
  • 不当事項|
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耐震補強設計業務委託契約における鋼製橋脚に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計について、適用した基準が適切でなかったため、改めてやり直す結果となっていて、成果品が所期の目的を達していなかったもの[阪神高速道路株式会社大阪管理局](284)


科目
仕掛道路資産
部局等
阪神高速道路株式会社大阪管理局(令和元年7月1日以降は管理本部管理企画部)
契約名
下部構造等耐震改良概略検討業務(28―大管)
契約の概要
橋脚等の耐震補強設計等を行うもの
契約の相手方
阪神高速技研株式会社
契約
平成29年3月 随意契約
支払
平成29年6月、8月、12月
契約額
101,617,200円(平成28、29両年度)
適用した基準が適切でなく所期の目的を達していなかった成果品に係る契約額相当額
19,999,727円(平成28、29両年度)

1 契約等の概要

阪神高速道路株式会社大阪管理局(令和元年7月1日以降は管理本部管理企画部。以下「大阪管理局」という。)は、平成29年3月から12月までの間に、橋りょうの耐震補強工事を実施するために、これに係る設計業務(以下「耐震補強設計業務」という。)を、契約額101,617,200円で阪神高速技研株式会社(以下「委託業者」という。)に委託して実施している。

耐震補強設計業務は、既設橋りょうの鋼製橋脚134基、鉄筋コンクリート製橋脚8基等を対象として、耐震補強の要否を判定するとともに、耐震補強が必要と判定された橋脚について耐震補強設計を行うなどするものである。

阪神高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、橋りょうの設計に当たり、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)を適用することとしているが、既設橋りょうの鋼製橋脚に係る耐震補強設計等については、独自に定めた「鋼製橋脚の耐震設計・耐震補強設計手引き(案)」(平成15年7月阪神高速道路公団策定。以下「阪神基準」という。)を適用することとしている。

阪神基準は、示方書を基に、会社において鋼製橋脚が多く用いられていることや平成7年兵庫県南部地震の被害実績等を勘案して策定されたものであり、耐震補強設計業務の実施時点において、耐震設計等について国内で広く適用されている示方書と比較しても、設計上許容される上限値が低く設定されているほか、耐震補強の要否の判定方法が異なるなどしている。そして、会社は、阪神基準を策定して以降、鋼製橋脚に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計については全て阪神基準を適用して実施することとしている。

2 検査の結果

本院は、合規性、有効性等の観点から、耐震補強設計業務の内容は適切であったかなどに着眼して、大阪管理局において、契約書、設計業務の成果品等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

大阪管理局は、平成28年熊本地震を契機とした緊急輸送道路の耐震補強対策を推進するという国の方針を踏まえて、早期に事業完了が見込めるなどとして阪神基準ではなく示方書を適用することとし、耐震補強設計業務委託契約を締結した直後に実施した委託業者との打合せにおいて、鋼製橋脚に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計については、示方書を適用するよう委託業者に指示していた。そして、委託業者が示方書を適用して耐震補強の要否の判定をした結果、鋼製橋脚134基のうち116基において耐震補強が必要であると判定され、それに基づいて設計等された成果品について、完了確認を行った上で、29年12月に受領していた。

大阪管理局は、上記の成果品に基づき、鋼製橋脚116基について耐震補強工事を施工することとして、30年5月に施工業者に請け負わせて実施していた。しかし、令和元年5月、大阪管理局は、他の鋼製橋脚の耐震補強との整合、統一等を図る見直しを行うこととして、上記の鋼製橋脚134基に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計について阪神基準を適用して行うこととすることを施工業者に通知していた。そして、同年6月、委託業者に別途委託していた業務等において、改めて阪神基準を適用して鋼製橋脚134基に係る耐震補強の要否を判定し、それに基づく設計を実施するように指示していた。これにより、当該鋼製橋脚134基に係る耐震補強の要否の判定をやり直し、また、当該判定により耐震補強が必要となる鋼製橋脚の全てについて設計をやり直した結果、鋼製橋脚123基に係る耐震補強が必要であるとされた設計の成果品について、完了確認を行った上で、2年3月に受領していた。その後、大阪管理局は、上記の成果品に基づいて、耐震補強工事の施工業者と変更契約を締結していた。

このように、会社は、示方書とは別に阪神基準を独自に定め、鋼製橋脚に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計については全て阪神基準を適用することとしているのに、大阪管理局は、独自の判断により、示方書を適用するよう委託業者に指示していた。その結果、改めて阪神基準を適用してやり直す結果となり、示方書を適用して実施した鋼製橋脚134基に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく成果品は耐震補強工事に使用されていなかった。

したがって、鋼製橋脚134基に係る耐震補強の要否の判定及びそれに基づく設計について、適用した基準が適切でなかったため、改めてやり直す結果となっていて、示方書を適用して実施した成果品が所期の目的を達しておらず、これに係る契約額相当額19,999,727円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、大阪管理局において、耐震補強設計業務の実施に当たり、鋼製橋脚に係る耐震補強設計に適用すべき基準についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。