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  • 昭和23年度|
  • 第5章 不当事項|
  • 第2節 所管別事項|
  • 第5 大蔵省|
  • 一般会計 歳入

船舶の売渡価格が著しく低価に失したもの


(310)−(314) 国有財産の売渡価格が低価に失したもの

(第2部官業及官有財産収入 第3款官有財産収入 第2項官有財産売払代)

 大阪外2財務局で、昭和23年9月から24年3月までの間に、旧軍用地を左のとおり姫路市外2名に売り渡したものであるが、その坪当り価格は15円から30円までの低価である。

  財務局名 所在地

口座名

売渡先 売渡年月 数量 売渡価格
単価 金額
(310) 大阪
姫路市

元陸軍輜重兵第54連隊

姫路市
年 月
23、 9

9,001

30

270,030
元陸軍捜索第54連隊 〃 〃 12,002 25 300,050
元城北練兵場 24、 3 26,267 25 669,808
(311) 仙台 若松市 元若松練兵場 若松市 23、 9 50,477 15 757,158
(312) 熊本 都城市 元陸軍歩兵第23連隊 日本繊維工業株式会社 23、11 9,230 18 166,140
元都城陸軍病院 〃 〃 12,018 22 264,396

 全国に散在する旧軍用地の売渡に当つては、国は一般に財産税課税価格に日本勧業銀行調査の全国市街地価格平均指数を乗じた金額を基準とするものであるが、この指数により算出した価格は物納財産の売渡に当り算出した時価とほぼ同一程度のもので、いずれも一般市価にくらべ相当低いものと認められる。
 しかして、元練兵場又は連隊敷地のような広大な軍用地を一括し集団地としてしかも公共団体等に売り渡す場合には、他の場合にくらべ多少低価となるのはやむを得ないとしても、本件売渡価格は右基準価格に対し姫路市渡しの分は17%から32%、若松市渡しの分は19%に過ぎず、ことに日本繊維工業株式会社渡しの分は14%で、いずれも著しく低価に失するものと認められる。本件土地は、姫路市渡しの分は競馬場、若松市渡しの分は市営住宅地、又日本繊維工業渡しの分は紡績工場用地として利用するもので、いずれも市内にあり、すべて将来発展の見込があるものと認められ、特に一般の売渡よりも低価とする必要はなかつたものと認められる。

(313)  仙台財務局で、昭和23年1月から10月までの間に左のとおり東北配電株式会社秋田支店外5名に対し、秋田市長野町所在元陸軍歩兵第117連隊跡地のうち40,208坪を8,160,204円(うち22年度分1,222,965円)で売り渡したものがある。

売渡先 売渡年月 数量

売渡価格

隣接地賃貸等級 勧銀指数により計算した単価
単価 金額

東北配電株式会社秋田支店
年月
23、1

1,578

280

441,840

56

1,125
株式会社秋田魁新報社 〃〃 512 315 161,476 56 1,125
秋田県戦災者引揚者更生経済協会 〃 2 1,705 160 272,922 56 1,125
日本赤十字社秋田支部 〃 1 2,889 120 346,726 41 218
秋田市  〃 2
〃 3
11,639 220 2,560,742 42 250
秋田県 〃 10 21,882 200 4,376,496 41 585

  40,208   8,160,204    

 右のうち、秋田県、秋田市及び日本赤十字社秋田支部に学校敷地等として集団で売り渡したものも低価と認められるがしばらくこれをおき、東北配電株式会社秋田支店外2名に売り渡したものの価格の評定を見ると、本件土地の賃貸価格及び適当な売買実例がないとして、精通者の意見により坪当り280円から315円までと決定し、うち秋田県戦災者引揚者更生経済協会に売り渡した土地は、整地に坪当り155円を要するものとして、315円から整地費155円を控除し、坪当り160円と決定したものであるが、今この売渡単価を附近類地の賃貸等級56級を基礎とし、国が一般にこの種軍用地売渡の場合に適用する基準により計算した価格(財産税課税価格に日本勧業銀行調査全国市街地価格平均指数を乗じた金額)坪当り1,125円とくらべると、本件売渡価格はこれに対し28%以下に過ぎない。

 本件土地は、秋田駅前に位置する市街の中心地で、商業地として最も適当な土地であり、将来発展の見込があると認められ、現に一部は商店街としていん振を極めているもので、軍用地を一般に売り渡す場合より特に低価に処分する事由があつたものとは認められず、且つ附近類地には賃貸等級も設定されていたにもかかわらず、これらの事情を考慮することなく、単に精通者の意見を参しやくして坪当り280円又は315円と決定したのは処置当を得ない。
 なお、秋田司法事務局においても本件土地の所有権移転登記に際して、売渡価格がいずれも低価であるとして、坪当り540円と認定している状況である。

(314)  熊本財務局で、昭和23年9月宮崎県水産業会に対し、延岡市所在元土々呂陸軍演習場の土地7,377坪05(岸壁施設236米5を含む。)を坪当り36円総額265,573円で売り渡したものがある。右売渡価格は、精通者の意見に従い海上からの交通の便及び買受人の利用目的から見て坪当り40円程度を適当と認めたが、広大な団地である関係上道路用地を1割程度と見て、これを減額して決定したものである。
 しかし、本件土地は延岡市の西南部日豊線土々呂駅から約3粁の土々呂港に位置し、その上旧軍において施行した岸壁施設もあり、漁業施設用地としては適当な土地であつて、将来性があると認められるのに、本件土地の評価に当つては、岸壁施設を評価外としているのであるが、右岸壁施設は売渡当時における日本勧業銀行延岡出張所の評価によれば、現在同水産業会で使用している45米だけについても360,000円であるから、これらの事情を考慮せず単に土地だけの評価により本件売渡価格を坪当り36円と評定したのは低価に過ぎるものである。