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  • 昭和50年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第17 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路等のトンネル新設工事におけるアーチ部覆工コンクリート等の施工について処置を要求したもの


 高速道路等のトンネル新設工事におけるアーチ部覆工コンクリート等の施工について処置を要求したもの

(昭和51年11月29日付け51検第458号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団が施行している高速道路等のトンネル新設工事のうち、昭和50年度実施にかかわる東北自動車道平泉工事ほか29工事(工事費総額794億1878万余円)について検査したところ、中央高速道路笹子トンネル西工事ほか13工事(工事費総額403億3194万余円)において、次のとおり、監督及び検査が適切でなかったため、トンネルアーチ部の覆工コンクリート等の施工が設計と相違し、その一部の強度が設計に比べて低くなっていると認められる事例が見受けられた。

 すなわち、上記の14工事(トンネル総延長20,673m)は、設計図書によると、トンネルアーチ部の覆工コンクリートの設計巻き厚を55cmから90cmとし、コンクリート総量270,935m3 (工事費相当額計20億0918万余円)を施工することとしている。そして、覆工コンクリートの打設に当たっては、設計巻き厚を確保しながら施工することとし、余掘りのため背部に生じた空げきについてはコンクリート又は良質のずりでてん充し、また、特に岩質の悪い区間については覆工背部の空げきをてん充するためモルタル注入を実施することとしている(注入量42,546m3 、工事費相当額計2億9406万余円)。

 しかして、各トンネルのアーチ部の覆工コンクリートについて打設区間ごとに頂部及び頂部付近をせん孔するなどして施工状況を調査したところ、調査した箇所数3,208箇所(1,467打設区間、換算延長16,381m。以下同じ。)のうち、施工が設計と相違している箇所が次のとおりあった。

(ア) 覆工コンクリートについては、巻き厚不足が設計巻き厚の2分の1を超える箇所が15箇所(15区間、163m)あるほか、3分の1を超え2分の1以下の箇所が142箇所(138区間、1,463m)、4分の1を超え3分の1以下の箇所が182箇所(163区間、1,817m)あった。

(イ) 覆工の背部に1mを超える空げきを生じている箇所が17箇所(17区間、179m)、50cmを超え1m以下の空げきを生じている箇所が240箇所(210区間、2,351m)、30cmを超え50cm以下の空げきを生じている箇所が435箇所(303区間、3,443m)あった。

(ウ) モルタル注入区間において、モルタルがてん充されないで空げきを生じている箇所や、コンクリート巻き厚不足部分にコンクリートより強度の著しく低いモルタルがてん充されている箇所も見受けられた。

 上記のうち、覆工コンクリートの巻き厚が不足している区間の工事費相当額は3億3050万余円となっている。

 このような事態を生じたのは、同公団において、近年事業量の増大等に伴い、これに対応する監督要員の確保が困難であることもあって各種検測業務等監督の補助業務の一部を民間業者に委託して実施しているが、このような工事監督の実情等もあり、これら補助者及び同公団の監督員、検査員が準拠することとしている「請負工事監督要領」、「請負工事等検査要領」、「施工及び検査」等の諸規程について、コンクリート打設の際の打設状況の確認、空げきの処理状況等の確認及び施工巻き厚のせん孔等による検測に関する実施基準を設けるなど整備を図る要があったと認められるのに、これらに関する配慮が十分でなかったことなどによると認められる。

 ついては、同公団においては、今後も高速道路等の建設に伴い、この種トンネル工事を多数施行するのであり、また、トンネル覆工の良否は車両通行の安全確保のため極めて重要であり、しかも、供用開始後の補修が著しく困難となるものであるから、監督及び検査に関する諸規程を再検討して具体的基準を整備し、監督及び検査に従事する者にその内容を周知徹底するなどして、施工の適正が確保されるよう処置を講ずる要があると認められる。

高速道路等のトンネル新設工事におけるアーチ部覆工コンクリート等の施工について処置を要求したものの図1