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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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トンネル工事に伴う水田の減渇水対策費の支払が適切でなかったもの


(133) トンネル工事に伴う水田の減渇水対策費の支払が適切でなかったもの

科目 (工事勘定) (項)基幹施設増強費
部局等の名称 岐阜工事局長野工事事務所
補償件名 北小野上田地区水田減渇水対策費
補償の概要 中央本線塩嶺トンネル工事に伴う水田の減渇水に対して補償するもの
補償の覚書に基づく負担額 88,750,000円
補償の相手方 塩尻市長
協定 昭和52年6月
覚書 昭和52年9月
支払 昭和53年2月〜54年5月 3回
(53年度までの支払額14,220,000円)

 この補償は、トンネル工事に伴う水田の減渇水対策の目的を達することとはならない事業を補償の対象として88,750,000円を負担することとした覚書を取り交わし、14,390,000円の補償金を支払ったもので、その処置が適切を欠いていると認められる。

(説明)
 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、昭和48年10月に契約し49年2月から掘削を開始した中央本線塩嶺トンネル工事において、施行中の52年1月ごろから大量の出水が続いたことに伴って、その対策に要する費用を補償することとしていたが、塩尻市上田地区水田27haについてもかんがい用水に減渇水が生ずるものとして、たまたま上田土地改良区が施行することとしていた農林水産省所管の国庫補助事業である上田地区農村基盤総合整備事業(52年4月採択、以下「土地改良事業」という。)においてこの対策が講じられることを前提に、その事業費265,000,000円のうち地元負担金相当額88,750,000円を負担することとして、塩尻市との間に覚書を取り交わし53年2月から54年5月までの間に同市に対してこのうち14,390,000円を支払ったものである。
 すなわち、国鉄では、このトンネル工事の施行に伴い工事によって水源に減水等を生じた場合は従来の機能を損なわないよう補償を行う旨の覚書を塩尻市との間に取り交わしていたものであるが、本件上田地区についてはトンネルが完成してもなお恒常的に生ずると予想されるトンネル内の湧(ゆう)水を供給するなどしてもなお水に不足が生ずるとして、その不足量は、上記土地改良事業のほ場整備工事で水田を床締めすることなどにより地中への浸透水を現状より減少させることによって対処できるものとして、この事業を補償の対象としたものである。
 しかしながら、この土地改良事業について調査したところ、事業計画書によるとこの事業は農業の機械化により農業経営を長期的に安定させることを目的としていて、ほ場の区画、用排水路及び農道の整備を行うものであって、水田の地中に浸透する水量を減少させることについては特別の対策をたてておらず、従来の浸透量を全く変更することとしていないものであった。このことは、国鉄が意図した減渇水対策を充足するものではないことは明らかであるのに、補償の目的を達することとはならない前記事業について国鉄が88,750,000円を負担する旨の覚書を取り交わし、そのうち14,390,000円を支払ったことは適切とは認められない。