会計名及び科目 | 一般会計(組織)科学技術庁(項)科学技術庁試験研究所 |
部局等の名称 | 放射線医学総合研究所 |
契約名 | 実験施設廃棄物処理設備の運転保守管理 |
契約の概要 | 実験施設における廃棄物処理設備の運転、保守及び管理の作業を請負により行わせるもの |
契約の相手方 | 株式会社新潟鐵工所 |
契約 | 平成元年4月1日 随意契約 |
契約金額 | 109,077,000円 |
支払 | 平成元年12月〜2年4月 3回 |
過大積算額 | 2940万円 |
<検査の結果> |
上記の契約において、廃棄物処理設備の運転、保守及び管理の労務費の積算に当たり、所要人員の算定が実態に適合していなかったため、積算額が約2940万円過大となっていた。 このように積算額が過大となっているのは、技能と知識の蓄積等により所要人員の逓減が見込まれる作業について、所要人員の推移を調査することとしていないなど、作業の実態を把握していなかったことによるもので、作業の実態を把握する体制を整備して、実態に適合した労務費の積算をする要があると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、放射線医学総合研究所では、平成2年10月に、作業の実態に適合した労務費の積算を行うために、必要に応じ作業実績を調査することとした積算の基準を定め、同月から施行するなど、作業の実態を把握する体制を整備する処置を講じた。 |
1 契約の概要
科学技術庁の放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)では、放射線による人体の障害並びにその予防、診断及び治療に関する調査研究等を行っており、その一環として実験施設を設け、実験用動物に放射性物質を与え、その影響等を調査する研究を行っている。そして、この実験に伴い発生した放射性廃棄物を処理するため、排水処理設備及び焼却設備からなる廃棄物処理設備を設置している。このうち、排水処理設備は、放射性物質を含む汚水の処理作業を、焼却設備は、汚水から分離された固形物の脱水、乾燥、焼却等の作業を行うものである。この設備の設置及び運転等は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」)昭和32年法律第166号)等による規制を受けており、上記廃棄物の処理はこの規制のもとに行われているものである。
放医研では、廃棄物処理設備の運転、保守及び管理の作業を、同設備を製作した株式会社新潟鐵工所に随意契約により、昭和60年8月から請け負わせており、その平成元年度の契約額は109,077,000円となっている。
この請負契約の仕様書によると、設備の運転等の作業は、次のように大別される。
(ア) 平日の午前8時30分から午後5時30分まで行う設備全体の運転等の作業(以下「昼間本運転等作業」という。)
(イ) 平日の午後5時から翌日の午前9時まで行う焼却設備の夜間運転、及び日曜、祝日、年末年始の特定休日の全日行う焼却設備の休日運転に係る監視作業
放医研では、この請負契約の予定価格の積算に当たり、労務費算定の基となる所要人員については株式会社新潟鐵工所から徴した見積りをほぼそのまま採用し、労務単価については前年度の単価を基に国家公務員の給与改善率等を勘案して算定している。そして、元年度においては労務費を次のとおり計89,017,680円と積算している。
(ア) 昼間本運転等作業及び休日の昼間に行う焼却設備の監視作業(以下この監視作業を「昼間監視作業」という。)については、各作業者が1箇月当たり200時間作業するとして、両作業合わせて統括責任者、焼却処理責任者、排水処理責任者各1人、技術者(昼間)7人計10人を要するとし、これに職種ごとの月額単価及び年間月数(12箇月)を乗じて54,300,000円と積算している。
(イ) 昼間本運転等作業については、上記のほか、技術者等を補助する者を年間768人日(1人1日当たりの作業時間数は8時間)要するとし、これに日額単価を乗じて10,567,680円と積算している。
(ウ) 夜間に行う焼却設備の監視作業については、各作業者が1箇月当たり200時間作業するとして技術者(夜間)5人を要するとし、これに技術者(夜間)の月額単価及び年間月数(12箇月)を乗じて24,150,000円と積算している。
2 検査の結果
この契約は、設備の製作者にその運転等を設置当初から随意契約により請け負わせているもので、運転等に対する技能と知識の蓄積等により所要人員の逓減が予想されることから、実際に作業に従事している者の数を把握するために、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(昭和32年法律第167号)第20条の規定により作成されている記録の提示を受けた。この記録は一定の施設に立ち入る者の受けた放射線の量を測定した結果が記載されているもので、作業者が廃棄物処理設備を設置している施設に立ち人った事跡を示すものである。この記録によると、元年度に廃棄物処理設備の運転等に従事したとして記録されている作業者は12人で、前記労務費の積算の(ア)と(ウ)から想定される作業者数15人より少なくなっていた。
そこで、株式会社新潟鐵工所の協力を得て作業者の勤務状況を記録した資料を基に元年度における作業の実態を調査した。
上記の勤務記録によれば、次のように、運転等の作業に実際に要した人数が積算上の人数を相当下回るなどしており、労務費の積算が適切でないと認められた。
(ア) 昼間本運転等作業及び昼間監視作業については、責任者及び技術者は1箇月当たり200作業時間として計10人を要するとしていたが、これらの作業に見合う昼間の延べ作業時間数の実績から計算した人数は6.8人程度となっている状況であった。
(イ) 昼間本運転等作業については、補助者が768人日必要になるとしていたが、その実績は全くなく、同作業のすべてを責任者及び技術者が上記(ア)の6.8人で行っている状況であった。
いま、廃棄物処理設備の運転等の作業のうち昼間本運転等作業及び昼間監視作業の積算については、作業の実態に適合させて、補助者を見込まずに責任者各1人、技術者(昼間)4人計7人を当てることとして労務費の総額を積算すると、64,410,000円となる。そして、本件契約に係る総積算額は79,610,760円となり、放医研における積算額109,077,000円はこれに比べて約2940万円過大になっていると認められた。
このような事態が生じていたのは、廃棄物処理設備の運転等の作業を請け負わせた当初においては積算どおりの人数で作業が行われていたが、その後、次の事情等により作業の効率化が進んでいるのに、作業の実態を調査してこれを把握する体制が整備されていなかったことによると認められた。
(ア) 運転等に対する技能と知識の蓄積が行われたこと
(イ) 作業に関する安全作業基準(作業マニュアル)が昭和62年に整備され、作業の内容や手順が明確化されたこと
(ウ) 逐次、新たに機器が導入され、作業の負担が軽減されたこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、放医研では、次のとおり、作業の実態を把握する体制を整備する処置を講じた。
(ア) 平成2年10月に、役務契約の積算に当たっては必要に応じて既往の作業実績を調査することとした「役務契約の予定価格算定基準」(放射線医学総合研究所管理部長制定)を制定し、同月以降締結する契約について適用することとした。
(イ) 本件契約については、2年10月に仕様書を改定して、契約の相手方に作業者の出勤状況を報告させることとした。