会計名及び科目 | 一般会計(部)雑収入(款)諸収入(項)雑入 |
部局等の名称 | 東京法務局ほか5供託所 |
歳入徴収すべき現金 | 供託金 |
歳入徴収の根拠 | 会計法(昭和22年法律第35号)等 |
歳入徴収すべき供託金の概要 | 宅地建物取引業を営む者が建設大臣又は都道府県知事の営業免許を受けて営業を開始するに際し、現金で供託した営業保証金のうち時効完成により取戻請求権が消滅したもの |
歳入徴収すべき供託金の件数 | 754件 |
歳入徴収すべき金額 | 186,181,928円 |
<検査の結果> |
宅地建物取引業を営む者が供託所に現金で供託した営業保証金は、供託原因が消滅後、6箇月を経過した日から10年を経過すると時効が完成して取戻請求権が消滅する取扱いになっている。一方、宅地建物取引業を営む者はその存廃が著しいため、営業保証金の供託原因が消滅することも多く、時効完成により歳入となるべきものが多額に上っていると考えられたので、時効が完成した営業保証金に係る事務処理が適切に行われているか否かを調査した。 調査の結果、6供託所において、営業保証金のうち時効完成により歳入となるべきものについて、歳入として徴収するための処理が行われていないもの754件186,181,928円あった。 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められた。 (ア) 営業保証金の供託原因の消滅について、これを把握する事務処理手続や主務官庁である建設大臣又は都道府県知事に対する照会に関する指針を定めていなかったこと (イ) 主務官庁との間で、供託原因の消滅を連絡する体制が整っていなかったこと |
<是正改善の処置要求> |
法務省において、既に時効が完成した営業保証金のうち歳入徴収が済んでいないものについては歳入徴収の処理を行うとともに、供託原因の消滅について、これを把握する事務処理手続や主務官庁に対する照会に関して処理要領を定め、また、主務官庁との連絡を円滑に行う体制を整備する要があると認められた。 上記のように認められたので、会計検査院法第34条の規定により、平成2年12月5日に法務大臣に対して是正改善の処置を要求した。 |
(平成2年12月5日付け 法務大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
1 制度の概要
貴省では、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下「宅建業法」という。)の規定により営業保証金とし「供託された現金(以下「営業保証供託金」という。)を供託所(注1) において保管する事務を行っている。
宅地建物取引業を営む者(以下「宅建業者」という。)は建設大臣又は都道府県知事(以下「主務官庁」という。)の営業免許を受けて営業を開始するに際し、営業保証供託金を供託することになっている。そして、宅建業者と取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、宅建業者が供託した営業保証供託金について、その債権の弁済を受けることができることになっている。
また、営業保証供託金の額は、宅地建物取引業法施行令(昭和39年政令第383号)に定められており(昭和55年までは宅建業法に定められていた)、主たる事務所については、昭和32年には10万円であったものが、47年には50万円、55年には300万円、63年には1000万円にそれぞれ増額されており、その他の事務所についても、各々その2分の1の額に増額されている。
そして、法務局又は地方法務局の長が供託所に勤務する者の中から指定した者(以下「供託官」という。)が、この営業保証供託金を歳入歳出外現金として保管している。
宅建業者の営業免許の有効期間が満了したり、廃業等の届出があったため営業免許が失効したり、営業免許が取り消されたりなどして営業保証供託金の供託原因が消滅したときは、宅建業者であった者又はその承継人は、供託官に対し営業保証供託金の取戻請求を行うことができる。ただし、宅建業法の規定により、宅建業者との取引により債権を取得した者に対し、6箇月を下らない一定期間内に申し出るべき旨の公告をし、その期間内に債権者の申出がなかった場合でなければ、取戻請求権を行使することができない。
宅建業者であった者等が、供託原因が消滅しているのに、取戻請求権を行使しない場合には、貴省では、上記の公告の最低限の期間である6箇月を経過した日から取戻請求権の消滅時効が進行し、10年を経過すると時効が完成して取戻請求権が消滅するものと解して取り扱うこととしている。そして、この営業保証供託金は歳入となるべきものである。
この歳入となるべき営業保証供託金については、保管金取扱規程(大正11年大蔵省令第5号)の規定が準用され、供託官は供託金政府所得調書を作製し、歳入徴収官に送付することとされている。
歳入徴収官は、この供託金政府所得調書の送付を受けた場合、上記の営業保証供託金を法務省主管の歳入として調査決定し、徴収することとなる。
2 本院の検査結果
宅建業者の存廃は著しいため、営業保証供託金の供託原因が消滅することも多数に上ること、宅建業者が供託する1件当たりの営業保証供託金が比較的多額であることから、営業保証供託金のうち時効完成により歳入となるべきものが多額に上っていると考えられた。そこで、14供託所(注2) において、これを歳入として徴収するための処理が適切に行われているか否かを調査した。
調査したところ、6供託所(注3) において、営業保証供託金のうち時効完成により歳入となるべきものについて、歳入として徴収するための処理が行われていないものが754件186,181,928円あった。このうち352件44,196,128円は、歳入として徴収するための処理を行うべきであった時点から5年以上も経過したものである。この754件については、歳入として徴収するための処理を行う要があるのに、これが行われていないことは適切とは認められない。
このような事態が生じているのは、次の原因によると認められる。
(ア) 供託金政府所得調書を作製するには、営業保証供託金の金額に長期間異動がないことなどから、取戻請求権の時効が完成したと推定されるものについて、その確認をするために供託原因消滅の有無について主務官庁に照会する要がある。しかし、貴省では、営業保証供託金について宅建業者ごとに金額の異動の有無を把握できる事務処理手続を定めていなかったうえ、主務官庁に対する照会に関しても、具体的な指針を定めておらず、供託官に対し指導を十分に行っていなかったこと
(イ) 供託官と主務官庁との間で、供託原因の消滅を連絡する体制が整っていなかったこと
3 本院が要求する是正改善の処置
宅建業者の存廃が著しく、また、近年、営業保証供託金の額が大幅に引き上げられたことから、今後、多額の営業保証供託金が時効完成により歳入となるべきものになることが見込まれる。ついては、貴省において、営業保証供託金のうちすでに時効完成したものについて、歳入徴収が未済のものを歳入として徴収するための処理を行うとともに、次のような処置を講じる要があると認められる。
(ア) 営業保証供託金の異動状況を宅建業者ごとに把握できる事務処理手続を整備するとともに、主務官庁に対する照会に関して、具体的な処理要領を定め、その趣旨の周知徹底を図ること
(イ) 供託原因の消滅について、供託官と主務官庁との間で連絡を円滑に行うよう体制を整備すること
(注1) 供託所 供託法(明治32年法律第15号)の規定により、供託金を保管する法務局、地方法務局等をいう。
(注2) 14供託所 東京、大阪、広島、福岡、仙台、高松各法務局及び横浜、浦和、静岡、神戸、山口、秋田、函館、釧路各地方法務局
(注3) 6供託所 東京、大阪、広島各法務局及び横浜、浦和、神戸各地方法務局