会計名及び科目 | 国立学校特別会計(款)附属病院収入(項)附属病院収入 |
部局等の名称 | 大阪大学 |
医学部附属病院特殊救急部の概要 | 医療機関等から転送される重篤患者に対して救命救急医療を行う施設 |
医学部附属病院特殊救急部の診療報酬請求額 | 昭和63年度 | 390,056,010円 |
平成元年度 | 347,939,640円 | |
増収可能額 | 昭和63年度 | 3550万円 |
平成元年度 | 4050万円 | |
計 | 7600万円 |
<検査の結果> |
保険医療機関は、厚生省告示に定める施設基準に適合するものとして都道府県知事の承認を受けた場合、重篤患者に対して行った救命救急医療について高額な救命救急入院料を請求できることになっている。 しかし、大阪大学医学部附属病院は、施設基準を実質的に充足していると認められるのに、救命救急入院料を請求するために必要となる施設基準に係る大阪府知事の承認を受けていないため、一般の保険医療機関と同様の診療報酬しか請求できない。 したがって、同病院は、速やかに施設基準に係る承認申請を行う要があり、その承認を受けて救命救急入院料を請求したとすると、同病院の特殊救急部が行った医療に係る診療報酬は、昭和63年度約3550万円、平成元年度約4050万円計7600万円増加したと認められた。 このような事態が生じているのは、同病院で、施設基準を充足しているか否かについての検討が十分でなかったこと、施設基準に係る承認申請等について大阪府の関係部局との協議が十分でなかったことなどによると認められた。 |
<是正改善の処置要求> |
大阪大学において、施設基準に係る承認申請を同病院に速やかに行わせ、救命救急医療の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための措置を講ずる要があると認められた。 上記のように認められたので、会計検査院法第34条の規定により、平成2年11月1日に大阪大学長に対して是正改善の処置を要求した。 |
【是正改善の処置要求の全文】
(平成2年11月1日付け 大阪大学長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
1 特殊救急部及び救命救急入院料の概要
貴大学では、昭和41年12月に、医学部附属病院(以下「大学病院」という。)に特殊救急部を開設している。この特殊救急部は、大阪府内の医療機関等から転送される重篤患者(注)
に対して救命救急医療を行うことを目的としたものである。特殊救急部の運営に必要な建物及び設備は、大阪府との合意文書に基づき、同府が設置し、貴大学は無償でこれを借り受けている。
そして、大学病院は、特殊救急部が行った医療に係る診療報酬として社会保険診療報酬支払基金等に63年度に394件390,056,010円、平成元年度に386件347,939,640円を請求し、これに基づく病院収入を得ている。
救命救急医療に係る診療報酬は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(昭和33年厚生省告示第177号)により算定することとされている。これによれば、「運動療法等の施設基準」(昭和49年厚生省告示第16号)に定める施設基準に適合するものとして都道府県知事の承認を受けた保険医療機関は、重篤患者に対して救命救急医療を行った場合に、救命救急入院料を請求できることになっている。
この救命救急入院料は、昭和59年2月に新設されたものであり、入院の日から10日以内の期間に限り算定できるものである。その額は、〔1〕 入院の日から起算して5日以内の期間については49,000円/日、〔2〕 同じく5日を超え10日以内の期間については46,000円/日となっている。そして、この救命救急入院料は、一般の保険医療機関が請求する場合の入院時基本診療料(室料及び看護料)及び入院時医学管理料(以下「室料等」という。)並びに一定の範囲の検査料及び注射料(以下「検査料等」という。)を包括したものであるが、一般の保険医療機関が請求する場合に比べてかなり高額となっている。これは、救命救急医療に係る入院初期の医療を重点的に評価したものである。
救命救急入院料を請求するための施設基準は、次のとおりであり、この施設基準に係る承認を受けようとする保険医療機関は、都道府県知事に対し承認のための申請を行うこととなっている。
(ア) 病院であって、都道府県が定める救急医療に関する計画に基づいて運営される救命救急センターを有しているものであること
(イ) 重篤な救急患者に対する医療を行うにつき十分な専用施設を有していること
(ウ) 重篤な救急患者に対する医療を行うにつき必要な医師及び看護婦が常時配置されていること
2 本院の検査結果
本院は、大学病院特殊救急部における救命救急医療の実態並びに63年度及び平成元年度の診療報酬の請求について調査した。
調査の結果、大学病院は、次のことなどから、救命救急入院料を請求するための施設基準を実質的に充足していると認められた。
(ア) 前記のとおり、特殊救急部の施設は大阪府が提供していることからも明らかなように、特殊救急部は同府の意向に基づいて救命救急医療を行っているものであること
(イ) 重篤な救急患者に対する医療を行うにつき十分な救急蘇生装置等の医療機械及び器具、自家発電装置等を有していること
(ウ) 重篤な救急患者に対する医療を行うにつき必要な医師及び看護婦が24時間配置されていること
しかし、大学病院は、昭和59年に救命救急入院料が新設された後も、それを請求するために必要となる大阪府知事への施設基準に係る承認申請を行っておらず、同知事の承認を受けていなかった。その結果、一般の保険医療機関と同様の室料等及び検査料等しか請求できず、このため、救命救急入院料が請求できる入院の日から起算して10日以内の期間に係る室料等及び検査料等は、63年度に38,945,830円、平成元年度に38,391,770円にとどまっていた。
このように、大阪府知事への施設基準に係る承認申請を行わないまま、特殊救急部において重篤患者に対し救命救急医療を行った場合にも、一般の保険医療機関と同様の室料等及び検査料等しか請求できない事態になっていることは適切ではなく、是正改善を必要とすると認められる。
いま、大学病院が、大阪府知事に施設基準に係る承認申請を行い、承認を受けたものとして、救命救急入院料が請求できる入院の日から起算して10日以内の期間に係る救命救急入院料を計算すると、昭和63年度は74,472,000円、平成元年度は78,987,000円となる。この結果、大学病院の特殊救急部が行った医療に係る診療報酬は、昭和63年度約3550万円、平成元年度約4050万円増加したと認められる。
このような事態が生じたのは、次のことなどによると認められる。
(ア) 貴大学において、大学病院が施設基準を充足しているか否かの検討が十分でなかったこと
(イ) 貴大学において、施設基準に係る承認申請等について大阪府の関係部局との協議が十分でなかったこと
3 本院が要求する是正改善の処置
貴大学では、今後も引き続き大学病院の特殊救急部において重篤患者の救命救急医療を行っていくこととしているが、それには多額の経費を要し、しかも、大学病院の収支は毎年度大幅な支出超過となっている。したがって、速やかに施設基準に係る承認申請を行い、救命救急医療の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための措置を講ずる要があると認められる。
(注) 重篤患者 重症患者のうち、意識障害、急性呼吸不全等特に症状の重い者をいう。