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国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの


(28) 国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 国民年金特別会計(国民年金勘定)(項)国民年金給付費
部局等の名称 青森県ほか2県(5社会保険事務所)、社会保険庁
支給の相手方 6人
母子年金の支給額の合計 27,594,196円
不適正支給額 12,093,370円

 母子年金の支給に当たり、受給権者からの年金の裁定請求等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の6人に対して12,093,370円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(支給の要件、給付額)

 国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、障害又は死亡に関し年金等の給付を行う制度である。
 国民年金において行う給付のぅち、母子年金は、夫が死亡した場合に被保険者であった妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含む。)に支給するもので、妻についての支給要件は次のとおりとなっている。

(ア) 夫の死亡の当時夫によって生計を維持されていたこと

(イ) 夫又は妻の子であって、夫の死亡の当時、夫によって生計を維持されていた18歳未満の者又は20歳未満で一定の障害の状態にある者(以下「子」という。)と生計を同じくしていること

(ウ) 夫の死亡日の前日において、保険料を納付した被保険者期間が所定の期間以上あるなどの要件に該当していること

 その給付額は、〔1〕 所定の基本額、〔2〕 生計を同じくする子が2人以上の場合に2人目以降の子の数に応じて加算される額及び〔3〕 夫の死亡を支給事由とする一定の公的年金を受給できる者がないときに加算される額(以下「母子加算額」という。)の合計額となっている。

(支給の停止)

 母子年金の支給に当たっては、次のとおり、年金の一部について支給を停止することとなっている。

(ア) 夫の死亡を支給事由とする他の公的年金を受給できる者があるときは、母子年金の額の5分の2に相当する部分(当該公的年金の額がこの額に満たないときは、当該公的年金の額に相当する部分)

(イ) 母子加算額が加算される場合であって、受給権者が老齢、退職又は障害を支給事由とする一定の公的年金を受給できるときは、母子加算額に相当する部分

(支給停止の手続)

 年金の支給停止の手続は次のとおりである。

(ア) 受給権者は、母子年金を受けようとするときは、母子年金裁定請求書を住所地の市町村(特別区を含む。以下同じ。)を経由して都道府県の社会保険事務所へ提出することになっている。社会保険事務所は母子年金裁定請求書の内容を調査確認のうえ、裁定を行うとともに、支給停止の要件に該当する場合は支給停止の処理を行うこととなっている。

(イ) 受給権者は、裁定後、支給停止の事由が生じた場合には、速やかにその事由等を記載した届け書を住所地の市町村を経由して社会保険事務所へ提出することになっている。社会保険事務所はこれを社会保険庁へ提出し、社会保険庁は、その内容を調査確認のうえ、支給停止の要件に該当する場合は支給停止の処理を行うこととなっている(昭和63年9月以前は、支給停止の処理についても社会保険事務所が行うこととなっていた。)。

2 検査の結果

(検査の対象)

 青森県ほか8県の19社会保険事務所及び社会保険庁において、受給権者2,222人を対象として、母子年金の支給の適否について検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、青森県ほか2県で受給権者6人に対する支給(支給額27,594,196円)について12,093,370円が不適正に支給されていた。これは、青森県ほか2県の5社会保険事務所(注) 及び社会保険庁において、受給権者が制度を十分に理解しておらず、次のとおり届出を適正に行っていなかったのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、年金の一部の支給を停止していなかったことによるものである。

(ア) 夫の死亡を支給事由として厚生年金保険の遺族年金等の他の公的年金を受給できる者があることを母子年金裁定請求書に表示していなかった。

(イ) 支給停止の事由が生じているのにその届出を怠っていた。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

(注)  青森県ほか2県の5社会保険事務所 (青森県)弘前社会保険事務所、(群馬県)前橋、桐生、高崎各社会保険事務所、(山口県)徳山社会保険事務所