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国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(29)−(34) 国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
大阪府、和歌山、徳島、愛媛各県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 大阪市ほか5市(保険者)
交付金の概要 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、災害等特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
交付額の合計 昭和59年度 720,529,000円
昭和60年度 950,250,000円
昭和61年度 20,181,970,000円
昭和62年度 19,588,634,000円
昭和63年度 22,095,508,000円
平成元年度 23,636,808,000円
87,173,699,000円
不当と認める交付額 昭和59年度 31,311,000円
昭和60年度 20,094,000円
昭和61年度 1,744,748,000円
昭和62年度 1,297,999,000円
昭和63年度 1,501,616,000円
平成元年度 1,207,079,000円
5,802,847,000円
 上記の6市において、財政調整交付金の交付額の算定の基礎となる保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと及びこれに対する上記の4府県の審査が十分でなかったことなどのため、交付金5,802,847,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

1 交付金の概要

(国民健康保険)

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者以外の者で、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、助産費、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。

(財政調整交付金)

 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第72条の規定に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(普通調整交付金)

 普通調整交付金は、一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)(注1) が同じく一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)(注2) に満たない市町村に対し、その不足を公平に解消することを目途として交付するものである。
 普通調整交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。ただし、市町村における保険料又は保険税(以下単に「保険料」という。)の収納努力を交付額に反映させるため、徴収の決定をした保険料の額(以下、徴収の決定をした額を「調定額」、徴収の決定を「調定」という。)に対する収納した額の割合が所定の率を下回る市町村については、その下回る程度に応じて段階的に5%から20%の率で交付額を減額することとなっている(以下この率を「減額率」という。)。
 この減額の基準となる保険料の収納割合は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者。昭和58年度以前は全被保険者。以下同じ。)に係る保険料について計算した次の〔1〕 、〔2〕 の収納割合のうちいずれか高い方の割合(以下「保険料収納割合」という。)とされている。

〔1〕  当該年度分の保険料で1月31日までに納期が到来している分の調定額に対する同日までの収納額の割合(以下「当該年度収納割合」という。)

〔2〕  前年度分の保険料の調定額に対する前年度の収納額の割合(以下「前年度収納割合」という。)
 また、保険料収納割合による交付額の減額率は、次の減額率表のとおりとなっている。

(減額率表)

保険料収納割合 減額率

(%)

59年度

(%)

60年度以降(%)
一般被保険者数1万人未満である市町村

(%)

一般被保険者数1万人以上5万人未満である市町村
(%)
一般被保険者数5万人以上である市町村

(%)

90以上92未満 92以上94未満 91以上93未満 90以上92未満 5
80以上90未満 87以上92未満 86以上91未満 85以上90未満 10
70以上80未満 80以上87未満 80以上86未満 80以上85未満 15
70未満 80未満 80未満 80未満 20

(特別調整交付金)

 特別調整交付金は、市町村について災害その他特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものである。そして、国民健康保険事業に対する経営努力が顕著であるなど、事業の適正な運営に積極的に取り組んでいると認められる場合にも交付されている。この場合に交付する特別調整交付金の中には、保険料の収納割合の向上に努めている市町村に交付するもの(以下「収納割合向上特別交付金」という。)があり、その交付額は別に定める定額となっている。
 収納割合向上特別交付金の交付を受けることができる市町村として、次の〔1〕 又は〔2〕 に該当する市町村がある。

〔1〕  全被保険者に係る前年度収納割合が、前々年度の保険料の収納割合を上回っており、かつ、全被保険者数の区分に応じて別に定められた率以上であるなどの要件を満たす市町村

〔2〕  全被保険者に係る保険料の収納割合が、その基準となる年度(60年度から62年度までは58年度。63年度以降は前々年度)における収納割合に比べて、全被保険者数の区分に応じて別に定められた率以上に向上していることなどの要件を満たす市町村

(交付手続)

 財政調整交付金の交付手続は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕 交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い交付することとなっている。(注3)

(注1)  調整対象収入額 本来徴収すべきとされている保険料の額で、医療費を基に算定される応益保険料額と被保険者の所得を基に算定される応能保険料額の合計額

(注2)  調整対象需要額 本来保険料で賄うべきとされている額で、医療費、老人保健医療費拠出金及び保健施設費の合計額から患者の一部負担金及び療養給付費等負担金等の国庫補助金を控除した額

(注3)  普通調整交付金の交付については、国の予算措置の都合により、昭和57年度から特例として、当年度分の交付金の一部は翌年度に交付することとされている。したがって、交付額は、当年分として算定された交付金の額から翌年度に交付される額を控除した額に前年度分の交付金の額のうち当年度に交付される額を加えた額となる。また、60年度分の交付金に限り、減額率による減額は、翌61年度に交付する分において行うこととされている。

2 検査の結果

 財政調整交付金の交付について検査した結果、大阪市ほか5市において交付金5,802,847,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これは、大阪市ほか5市が保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、大阪府ほか3県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額の全部又は一部を免れて過大に交付されたり、交付すべきでない収納割合向上特別交付金が交付されたりしていたものである。
 これを府県別に示すと次のとおりである。

府県名 交付先
(保険者)
年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額

(29)

大阪府

大阪市

昭和61〜平成元
千円
63,171,600
千円
3,460,681

 大阪市では、昭和60年度から平成元年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、いずれの年度分についても、保険料収納割合は前年度収納割合で、92%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて交付申請を行い、61年度から元年度の間に計63,171,600,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額は、同市において、保険料収納割合を実際より高くすることにより交付金の減額を免れるなどのため、次のように実際に賦課した額を下回る額に操作したものであった。

(ア) 4月1日に、一般被保険者について賦課する1年分の保険料の額を集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を減額していた。

(イ) その後、一般被保険者の資格異動、所得更正等による賦課額の増減額分を集計のうえ一括して調定する際に、それまでの収納の実績に応じて、最終的に収納割合が交付金減額の対象とならない92%を少し上回る程度となるようその集計額を調整していた。
 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で90%又は91%となり、これに応じて交付金の減額率は、いずれの年度分とも5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

減額率

昭和60 (交付申請) 39,473 36,355 92 減額の対象外
(修正) 40,286 36,355 90 5
61 (交付申請) 40,372 37,154 92 減額の対象外
(修正) 41,060 37,154 90 5
62 (交付申請) 46,490 42,774 92 減額の対象外
(修正) 47,463 42,774 90 5
63 (交付申請) 48,301 44,534 92 減額の対象外
(修正) 48,856 44,534 91 5
平成元 (交付申請) 50,425 46,501 92 減額の対象外
(修正) 50,803 46,501 91 5

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、61年度から元年度で計59,710,919,000円となり、計3,460,681,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
14,826,742
千円
13,783,304
千円
1,043,438
62 14,213,399 13,502,729 710,670
63 16,115,792 15,310,003 805,789
平成元 18,015,667 17,114,883 900,784
63,171,600 59,710,919 3,460,681

(注) 昭和60年度分の算定額において391,863,000円の開差が生じるが、同年度分の交付金の減額率による減額は翌61年度に行うこととされたため、60年度の交付額には異動を生ぜず、開差額はすべて61年度における過大交付額となる。

(30) 大阪府 松原市 昭和61〜平成元 741,206 77,458

  松原市では、昭和61年度から平成元年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、92%又は93%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により61、62両年度分は5%の減額になるとし、また、63、元両年度分は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて61年度から元年度の交付申請を行い、計741,206,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額は、同市において、保険料収納割合を実際より高くすることにより交付金の減額の全部又は一部を免れるなどのため、次のように操作したものであった。

ア 調定額については、次のとおり実際に賦課した額を下回る額としていた。

(ア) 8月1日に、一般被保険者について賦課する8月以降の保険料の額を集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を減額していた。

(イ) その後、一般被保険者の資格異動、所得更正等による賦課額の増額分及び減額分をそれぞれ集計のうえ一括して調定する際に、減額分の集計額を水増しするなどしていた。

イ 収納額については、収納割合の計算上収納額に含めないことになっている前々年度以前分の滞納保険料に係る収納額や、翌年度の保険料の収納額を含めて過大にしていた。
 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で85%から87%となり、これに応じて交付金の減額率は、61年度、62年度及び元年度分は10%、63年度分は15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

減額率

昭和61 (交付申請) 1,974 1,824 92 5
(修正) 2,091 1,831 87 10
62 (交付申請) 1,991 1,832 92 5
(修正) 2,109 1,829 86 10
63 (交付申請) 2,529 2,357 93 減額の対象外
(修正) 2,734 2,346 85 15
平成元 (交付申請) 2,808 2,620 93 減額の対象外
(修正) 2,905 2,522 86 10

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計663,748,000円となり、計77,458,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
33,097
千円
31,355
千円
1,742
62 131,840 124,900 6,940
63 228,631 196,095 32,536
平成元 347,638 311,398 36,240
741,206 663,748 77,458

(31) 和歌山県 和歌山市 昭和59〜平成元 6,708,291 889,727

(普通調整交付金)

 和歌山市では、昭和59年度から63年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%から94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により59年度から62年度の各年度分は減額の対象にならないとし、また、63年度分は5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて59年度から平成元年度の交付申請を行い、計6,692,291,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額は、同市において、保険料収納割合を実際より高くすることにより交付金の減額の全部又は一部を免れるなどのため、次のように操作したものであった。

ア 調定額については、次のとおり実際に賦課した額を下回る額としていた。

(ア) 7月1日に、一般被保険者について賦課する1年分の保険料の額を集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を減額していた。

(イ) その後、一般被保険者の資格異動、所得更正等による賦課額の減額分を集計のうえ一括して減額調定する際に、その集計額を水増ししていた。

イ 収納額については、収納割合の計算上収納額に含めないことになっている前々年度以前分の滞納保険料に係る収納額や、保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて過大にしていた。
 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で76%から80%となり、これに応じて交付金の減額率は、59年度分は10%、60年度から63年度の各年度分は20%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

減額率

昭和59 (交付申請) 4,422 4,130 93 減額の対象外
(修正) 5,079 4,077 80 10
60 (交付申請) 4,716 4,415 93 減額の対象外
(修正) 5,430 4,278 78 20
61 (交付申請) 4,713 4,424 93 減額の対象外
(修正) 5,420 4,263 78 20
62 (交付申請) 4,856 4,585 94 減額の対象外
(修正) 5,448 4,268 78 20
63 (交付申請) 5,993 5,502 91 5
(修正) 6,812 5,225 76 20

(特別調整交付金)

 同市では、59年度から61年度の各年度において、全被保険者に係る前年度収納割合は93%又は94%であるなどとしていた。そして、その割合が全被保険者数が5万人以上の市町村の場合は92%又は93%以上であることなどとされている収納割合向上特別交付金の交付要件を満たすとして、交付金計16,000,000円の交付を受けていた。
 しかし、全被保険者に係る前年度収納割合は、一般被保険者に係る前年度収納割合を実際よりも高くしていたことに伴い、同じく実際より高くなっていた。そして、59年度から61年度の各年度における全被保険者に係る実際の前年度収納割合は79%又は80%であり、交付金の交付要件を満たさないものであった。

(過大交付額)

 したがって、両交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計5,818,564,000円となり、計889,727,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和59
千円
(3,000)
720,529

689,218
千円
(3,000)
31,311

60
(5,000)
945,250

930,156
(5,000)
15,094

61
(8,000)
1,255,855

911,943
(8,000)343,912
62 1,293,044 1,034,435 258,609
63 1,319,693 1,104,510 215,183
平成元 1,173,920 1,148,302 25,618
(16,000)
6,708,291

5,818,564
(16,000)
889,727

 (注) ( )書きは、収納割合向上特別交付金を内書きしたものである。

(32) 和歌山県 海南市 昭和61〜平成元 935,238 46,904

 海南市では、昭和61年度から平成元年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、保険料収納割合は当該年度収納割合(元年度は前年度収納割合)で、91%又は93%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により61、62両年度分は5%の減額になるとし、また、63、元両年度分は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて、61年度から元年度の交付申請を行い、計935,238,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった当該年度分又は前年度分の保険税の調定額及び収納額についてみると、次のように調定額が過小に、収納額が過大に算定されており、このため保険料収納割合が実際より高くなっていて、交付金の減額の全部又は一部を免れていた。

ア 61年度から63年度の各年度分については、当該年度分の保険税の1月31日現在における調定額が実際よりも過小に、収納額が実際よりも過大になっていた。

イ 元年度分については、滞納となっている保険税の一部について滞納処分(強制徴収手続)の執行を停止しても納付義務は消滅しないのに、消滅するとしてその保険税の調定額を減額していた。
 そして、事実に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は各年度分とも前年度収納割合で88%から92%となり、これに応じて交付金の減額率は、61、62両年度分は10%、63、元両年度分は5%となる。

表1

年度 保険税の調定額(A)

百万円

左に対する収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%

昭和61 (交付申請) 659 (809) 600 (719) 91 5
(修正) 746(810) 548(717) 88  10
62 (交付申請) 674 (928) 618 (839) 91 5
(修正) 736(928) 550(839) 90 10
63 (交付申請) 830 (915) 772 (843) 93 減額の対象外
(修正) 878(915) 681(843) 92 5
平成元 (交付申請) 861(1,080) 672(1,004) 93 減額の対象外
(修正) 861(1,084) 672(1,004) 92 5

(注) 調定額欄及び収納額欄の金額のうち、( )外は当該年度収納割合に係るもの、( )内は前年度収納割合に係るものであり、保険料収納割合算定の基礎になったものに下線を付している。
 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計888,334,000円となり、計46,904,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
229,893
千円
218,927
千円
10,966
62 226,760 214,825 11,935
63 243,198 230,964 12,234
平成元 235,387 223,618 11,769
935,238 888,334 46,904

(33) 徳島県  徳島市  昭和60〜平成元  7,503,586 495,667

(普通調整交付金)

 徳島市では、昭和60年度から平成元年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、89%から92%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により61年度及び63年度分は5%、62年度分は10%の減額になるとし、また、元年度分は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて60年度から平成元年度の交付申請を行い、計7,482,586,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市において、次のように、調定額を過小にしたり、収納額を過大にしたりして、保険料収納割合を事実と相違して高くしていたことにより、交付金の減額の全部又は一部を免れていた。

ア 調定額については、滞納となっている保険料の一部について、滞納処分(強制徴収手続)の執行停止の要件を満たしているか否かの調査を十分行わないまま執行を停止する取扱いをしたうえに、執行を停止しても本来納付義務は消滅しないのに消滅するとしてその保険料の調定額を減額していた。

イ 収納額については、収納割合の計算上収納額に含めないことになっている保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて過大にしていた。
 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で82%から88%となり、これに応じて交付金の減額率は、61年度、63年度及び元年度分は10%、62年度分は15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%

昭和61 (交付申請) 3,066 2,792 91 5
(修正) 3,284 2,792 85 10
62 (交付申請) 3,356 3,001 89 10
(修正) 3,614 2,996 82 15
63 (交付申請) 3,721 3,379 90 5
(修正) 3,914 3,370 86 10
平成元 (交付申請) 4,020 3,700 92 減額の対象外
(修正) 4,170 3,688 88 10

(特別調整交付金)

 同市では、昭和60年度から62年度の各年度において、全被保険者に係る前年度収納割合はそれぞれ89.5%、91.8%、90.5%で、また、58年度の収納割合は88.0%であるとしていた。このことから、前年度収納割合が全被保険者数が5万人以上の市町村の場合は58年度の収納割合に比べて60年度では0.8%、61年度では1.4%、62年度では2.4%以上向上していることなどとされている収納割合向上特別交付金の交付要件を満たすとして、交付金計21,000,000円の交付を受けていた。
 しかし、全被保険者に係る前年度収納割合は、一般被保険者に係る前年度収納割合を実際よりも高くしていたことに伴い、同じく実際より高くなっていた。そして、60年度から62年度の各年度における全被保険者に係る実際の前年度収納割合は85.9%、86.4%、84.6%で、また、58年度の実際の収納割合は85.2%である。これにより、58年度の収納割合と比べて60年度では0.7%、61年度では1.1%向上しているだけであり、また、62年度では0.6%低下していることから、いずれの年度とも交付金の交付要件を満たさないものであった。

(過大交付額)

 したがって、両交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計7,007,919,000円となり、計495,667,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和60
千円
(5,000)
5,000

0
千円
(5,000)
5,000

61
(8,000)
1,836,166

1,740,063
(8,000)
96,103

62
(8,000)
1,790,571

1,684,202
(8,000)
106,369
63 1,871,987 1,772,818 99,169
平成元 1,999,862 1,810,836 189,026

(21,000)
7,503,586

7,007,919
(21,000)
495,667

(注) ( )書きは、収納割合向上特別交付金を内書きしたものである。

(34) 愛媛県 松山市 昭和61〜平成元 8,113,778 832,410

 松山市では、昭和60年度から63年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度の上段(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%又は92%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により60年度から62年度の各年度分は5%の減額になるとし、また、63年度分は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて交付申請を行い、61年度から平成元年度の間に計8,113,778,000円の交付を受けていた。
 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額は、同市において、保険料収納割合を実際より高くすることにより交付金の減額を免れるなどのため、次のように実際に賦課した額を下回る額に操作したものであった。

(ア) 4月1日及び10月1日に、一般被保険者について賦課する半年分の保険料の額をそれぞれ集計のうえ一括して調定する際に、その集計額を減額していた。

(イ) その後、一般被保険者の資格異動、所得更正等による賦課額の減額分を集計のうえ一括して減額調定する際に、それまでの収納の実績に応じて、その集計額を水増ししていた。
そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度の下段(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で84%又は86%となり、これに応じて交付金の減額率は、60年度分は10%、61年度から63年度の各年度分け15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%

昭和60 (交付申請) 6,477 5,942 91 5
(修正) 6,837 5,938 86 10
61 (交付申請) 5,806 5,334 91 5
(修正) 6,298 5,334 84 15
62 (交付申請) 5,777 5,304 91 5
(修正) 6,300 5,304 84 15
63 (交付申請) 5,837 5,376 92 減額の対象外
(修正) 6,333 5,376 84 15

 したがって、交付金の適正な交付額は、表2のとおり、61年度から元年度で計7,281,368,000円となり、計832,410,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
2,000,217
千円
1,751,630
千円
248,587
62 1,933,020 1,729,544 203,476
63 2,316,207 1,979,502 336,705
平成元 1,864,334 1,820,692 43,642
8,113,778 7,281,368 832,410

(注) 昭和60年度分の算定額において61,054,000円の開差が生じるが、同年度分の交付金の減額率による減額は翌61年度に行うこととされたため、60年度の交付額には異動を生ぜず、開差額はすべて61年度における過大交付額となる。

(29)-(34) の計 87,173,699 5,802,847