ページトップ
  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 厚生省|
  • 不当事項|
  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(35)−(57) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 (1) 一般会計(組織)厚生本省 (項)生活保護費
(2) 一般会計(組織)厚生本省 (項)老人福祉費
(3) 一般会計(組織)厚生本省 (項)児童保護費
部局等の名称 (1) 厚生本省、秋田県ほか4県
(2) 厚生本省、北海道ほか7県
(3) 厚生本省、秋田県ほか4県
国庫負担の根拠 (1) 生活保護法(昭和25年法律第144号)
(2) 老人福祉法(昭和38年法律第133号)
(3) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)
事業主体 (1) 県1、市5、計6事業主体
(2) 県2、市8、計10事業主体
(3) 市7、計7事業主体
国庫負担の対象事業 (1) 秋田市生活保護事業等6事業
(2) 函館市老人福祉施設保護事業等10事業
(3) 秋田市保育所措置事業等7事業
23事業
上記に対する国庫負担金交付額の合計 (1) 41,566,056円
(2) 6,441,191,734円
(3) 1,082,615,680円
7,565,373,470円
不当と認める国庫負担金交付額 (1) 34,480,562円
(2) 12,667,304円
(3) 8,077,050円
55,224,916円
 上記の23事業において、次のとおり国庫負担対象事業の実施が適切でなかったり、事業費が過大に精算されたりしており、これに対する国庫負担金のうち55,224,916円について補助事業の実施及び経理が不当と認められる。
(1) 生活保護費の支給において、被保護世帯における就労収入等を過小に認定するなどして保護費の額を決定したため、保護費が不適正に支給されているもの
6事業 不当と認める国庫負担金 34,480,562円
(2) 老人福祉施設保護費負担金の算定において、特別養護老人ホーム等に入所した老人の扶養義務者等から徴収する徴収金の額を過小に算定したため、国庫負担対象事業費が過大に精算されているもの
10事業 不当と認める国庫負担金 12,667,304円
(3) 児童保護費等負担金(保育所分)の算定において、保育所に入所した児童の扶養義務者から徴収する徴収金の額を過小に算定したため、国庫負担対象事業費が過大に精算されているもの
7事業 不当と認める国庫負担金 8,077,050円

第1 生活保護費負担金

 1 負担金の概要

 生活保護費負担金(昭和61年度以前は「生活保護費補助金」)は、利用し得る資産や能力等あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用してもなお生活に困窮する者に、その困窮の程度に応じて必要な保護を行った都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「都道府県等」という。)に対して、その実施に要する費用の一部を負担するものである。
 この負担金の交付額は、次により算定することとなっている。

費用の額−返還金等の額=国庫負担対象事業費、国庫負担対象事業費×4分の3=交付額

(注) 国庫負担率であり、昭和59年度以前は10分の8、60年度から63年度までは10分の7及び平成元年度は4分の3となっている。

そして、費用の額及び返還金等の額は、それぞれ次により算定することとなっている。

(ア) 費用の額は、保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、その所在地域、構成員の数、年齢等の別に応じて算定される生活費の額から、その被保護世帯における就労収入、年金受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定された保護費の支給額の合計額に都道府県等の事務経費を加えて算定する。

(イ) 返還金等の額は、急迫の事情等により保護を受けた者が、その後資産を売却したり、年金を遡(そ)及して受給したりなどして収入を得たことにより既に支給を受けた保護費を返還した額等の合計額である。

2 検査の結果

 検査の結果、6事業主体では、被保護世帯において就労収入を相当額得ていたり、年金を受給していたりしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、保護費が不適正に支給されていて、国庫負担金34,480,562円が不当と認められる。
 これを県別に示すと次のとおりである。

県名 事業 事業主体 年度
昭和・平成
国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(35) 秋田県 生活保護事業 秋田市 59〜元 14,087
(1世帯分)
10,126 13,963 10,027 就労収入を過小に認定していたもの
(36) 神奈川県  同 川崎市 62〜元 4,586
(1世帯分)
3,289 4,586 3,289 年金収入を認定していなかったもの
(37)  同  同 相模原市 60〜元 12,883
(1世帯分)
9,132 7,708 5,510 就労収入を過小に認定していたもの
(38) 奈良県  同 奈良市 60〜元 6,588
(1世帯分)
4,652 6,575 4,642
(39) 高知県  同 高知市 56〜元 15,147
(1世帯分)
11,304 11,776 8,791 年金収入を認定していなかったもの
(40) 福岡県  同 福岡県 61〜元 4,289
(1世帯分)
3,060 3,111 2,218 就労収入を過小に認定していたもの
(35)-(40) の計 57,583
(6世帯分)
41,566 47,723 34,480

第2 老人福祉施設保護費負担金

1 負担金の概要

 老人福祉施設保護費負担金は、老人の健康の保持及び生活の安定のために養護を必要とする老人を、特別養護老人ホーム又は養護老人ホームに入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用の一部を負担するものである。そして、これらの施設の入所対象者は次のとおりとなっている。

〔1〕  特別養護老人ホームについては、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な老人

〔2〕  養護老人ホームについては、身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人

 この負担金の交付額は、次により算定することとなっている。

費用の額−徴収金の額=国庫負担対象事業費、国庫負担対象事業費×2分の1=交付額

そして、費用の額及び徴収金の額は、それぞれ次により算定することとなっている。

(ア) 費用の額は、施設運営のための事務費(施設の所在地域、入所定員等の別に応じて1人当たり月額で定められている。)と入所者の生活費(地域別に1人当たり月額で定められている。)とを加えた額に入所人員を乗じて年間の施設ごとの額を算出し、これに移送費等を加えて算定する。

(イ) 徴収金の額は、入所した老人の対象収入(前年の収入から租税、社会保険料、医療費等の必要経費を控除したもの)に応じて定められている額とその老人の入所に要する費用を負担する主たる扶養義務者の前年分の所得税額等に応じて定められている額とを加えて算定する。

2 検査の結果

 検査の結果、10事業主体では、老人の対象収入を過小に算定していたり、扶養義務者の所得税額等を誤認していたり、扶養義務者の認定を誤っていたりなどして 徴収金の額を過小に算定しており、このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金12,667,304円が不当と認められる。

 これを道県別に示すと次のとおりである。

道県名 事業

事業主体

年度
昭和・平成
国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金

摘要

千円 千円 千円 千円
(41) 北海道 老人福祉施設保護事業 函館市 63 1,418,070
709,035 1,491 745 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(42) 山形県 山形県 63 2,122,182 1,061,091 1,218 609 扶養義務者がいないとしていたものなど
(43) 千葉県 木更津市 330,368 165,184 2,947 1,473 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(44) 長野県 長野市 63 929,746 464,873 5,219 2,609
(45)  同 松本市 63 616,845 308,422 2,237 1,118
(46) 岐阜県 岐阜市 63 495,590 247,795 1,610 805
(47) 滋賀県 大津市 63 444,416 222,208 1,929 964
(48) 徳島県 徳島県 63 3,443,882 1,721,941 3,319 1,659
(49)  同 阿南市 63 335,168 167,584 2,578 1,289 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(50) 福岡県 福岡市 63 2,746,111 1,373,055 2,783 1,391 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(41)-(50) の計 12,882,383 6,441,191 25,334 12,667

第3 児童保護費等負担金

1 負担金の概要

 児童保護費等負担金(保育所分)は、保護者の就労や疾病等の理由により、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対して、その実施に要する費用の一部を負担するものである。
 この負担金の交付額は、次により算定することとなっている。

費用の額−徴収金の額=国庫負担対象事業費、国庫負担対象事業費×2分の1=交付額

 そして、費用の額及び徴収金の額は、それぞれ次により算定することとなっている。

(ア) 費用の額は、〔1〕 市町村が実際に児童の保育に要した額から寄付金を控除して得た額と、〔2〕 保育所の所在地域、入所定員、児童の年齢等の別に1人当たり月額で定められている保育単価に入所児童数を乗じて算出した年間の額とを比較して少ない方の額による。

(イ) 徴収金の額は、児童の扶養義務者等の前年分の所得税額等に対応して階層別に定められている額による。

2 検査の結果

 検査の結果、7事業主体では、扶養義務者の所得税額等を誤認していたり、扶養義 務者の所得税額等に対応する階層の適用を誤っていたりなどして徴収金の額を過小に算定しており、このため国庫負担対象事業費が過大に精算されていて、国庫負担金8,077,050円が不当と認められる。
 これを県別に示すと次のとおりである。

県名 事業 事業主体 年度
昭和・平成
国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金

摘要

千円 千円 千円 千円
(51) 秋田県 保育所措置事業 秋田市 63 792,511 396,255 1,713 856 扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(52) 千葉県 銚子市 274,959 137,479 1,794 897 扶養義務者の所得税額等を誤認していたものなど
(53)  同 流山市 149,404 74,702 1,781 890
(54) 千葉県 保育所措置事業 浦安市 103,659 51,829 4,948 2,474 扶養義務者の所得税額等に対応する階層の適用を誤っていたものなど
(55) 神奈川県 小田原市 63 423,758 211,879 1,299 649 扶養義務者の所得税額等を誤認していたもの
(56) 福岡県 行橋市 63 286,677 143,338 1,133 566
(57) 大分県 杵築市 63 134,261 67,130 3,482 1,741
(51)-(57) の計 2,165,231 1,082,615 16,154 8,077
第1〜第3の合計 15,105,198 7,565,373 89,212 55,224