会計名及び科目 | 一般会計(組織)厚生本省 | (項)老人福祉費 (項)国民健康保険助成費 (項)生活保護費 (項)精神保健費 (項)結核医療費 |
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金 (項)退職者給付拠出金 |
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船員保険特別会計 | (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金 (項)退職者給付拠出金 |
部局等の名称 | 社会保険庁、北海道ほか30都府県 |
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健法(昭和25年法律第123号)、結核予防法(昭和26年法律第96号) |
医療給付の種類 | 医療保険各法に基づく療養の給付、老人保健法に基づく医療、生活保護法に基づく医療扶助、精神保健法に基づく入院、結核予防法に基づく医療の給付 |
実施主体 | 国、都道府県、市、特別区、町、村、国民健康保険組合 |
医療機関 | 計224病院 |
上記の医療機関に不適正に支払われた診療報酬 | 2,065,459,230円 |
上記に対する国の負担額 | 1,228,050,838円 |
<検査の結果> |
診療報酬のうち入院時医学管理料、室料及び給食料については、医師及び看護婦が厚生省令で定める標準の人員に対し著しく不足している場合には、減額を行い、又は加算に係る承認を行わないことになっている。また、調剤技術基本料については、薬剤師が常時勤務している場合に算定することになっている。 しかし、医師等の配置状況とそれに関わる診療報酬の請求について調査したところ、次のとおりとなっていた。 (ア) 医師、看護婦が標準の人員に対して著しく不足しているのに、〔1〕 入院時医学管理料について所定の減額を行わないで請求していたものが31都道府県で181病院あり、〔2〕 また、このうち室料及び給食料について加算に係る承認を得ていた153病院では承認辞退の申請を行わないまま加算して請求していた。 (イ) 薬剤師が常時勤務していないのに調剤技術基本料を請求していたものが14都道府県で49病院あった。 上記(ア)、(イ)の結果、診療報酬が2,065,459,230円(これに対する国の負担額1,228,050,838円)不適正に支払われていた。 (ア) 病院において、診療報酬の請求に当たり算定の基準についての認識が十分でなかったこと (イ) 都道府県において、定期的に調査し把握している医師等の配置に関する資料の活用が十分でなかったこと (ウ) 厚生省において、都道府県が保有する上記の資料の活用等に対する指導が十分でなかったこと |
<是正改善の処置要求> |
厚生省において、都道府県に対し、その保有している医師等の配置に関する資料を活用して、医師及び看護婦が標準の人員に対し著しく不足している病院及び薬剤師が常時勤務していない病院を的確に把握させるよう指示するなどして、診療報酬の支払の適正化を図る要があると認められた。 上記のように認められたので、会計検査院法第34条の規定により、平成2年12月5日に厚生大臣に対して是正改善の処置を要求した。 |
【是正改善の処置要求の全文】
(平成2年12月5日付け 厚生大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
1 制度の概要
貴省では、健康保険法(大正11年法律第70号)等に基づいて国又は地方公共団体等が行っている以下の療養の給付等に関し、その適正な実施を図るため、各般の措置を講じるとともに保険者、市町村等に対する指導を行っている。
〔1〕 健康保険法、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)等の医療保険各法の規定に基づいて国、市町村等の各保険者が行う療養の給付
〔2〕 老人保健法(昭和57年法律第80号)の規定に基づいて市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長が行う医療の実施
〔3〕 生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健法(昭和25年法律第123号)、結核予防法(昭和26年法律第96号)の規定に基づいて都道府県等が行う医療の給付
また、上記〔1〕 から〔3〕 の療養の給付、医療の実施等に要する費用について、国は、政府管掌健康保険の保険者として負担するほか、他の保険者、都道府県及び市町村が負担する費用の一部を負担しており、これらの負担額の合計は平成元年度で8兆3345億3356万余円と多額に上っている。
健康保険法等に基づくこれらの療養の給付、医療の実施等における医療行為は、都道府県知事が指定する病院及び診療所(以下「保険医療機関」という。)が担当することになっている。そして、保険医療機関は、その費用を「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(昭和33年厚生省告示第177号)及び「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」(昭和58年厚生省告示第15号)(以下両告示を「算定基準」という。)に従い、その所定の点数に単価(10円)を乗じて算定し、診療報酬として患者及び保険者、都道府県又は市町村に請求することになっている。
その診療報酬のうち保険者等に請求する額は、所定の患者負担分を控除した額(以下「医療費」という。)となっており、この請求に対し保険者等及びこれらの委託を受けた社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会では、その内容を審査点検のうえ支払うことになっている。
保険医療機関が算定基準により診療報酬として請求できる項目の中には、入院に係るもの及び投薬に係るものがある。
(1) 入院に係る診療報酬について
保険医療機関に入院している患者については、算定基準により、室料、看護料、給食料、入院時医学管理料等を算定し請求できることになっている。
ア 入院時医学管理料
入院時医学管理料は、算定基準及びこれに基づく「厚生大臣の定める医師並びに看護婦及び准看護婦の員数の基準並びに入院時医学管理科の算定方法」(昭和63年厚生省告示第61号、同第75号)により算定することになっている。
これによると、各入院患者について入院1日につき定められた所定の点数により算定することになっている。 ただし、保険医療機関における医師及び看護婦(准看護婦を含む。以下同じ。)の1月平均の員数が、共に医療法(昭和23年法律第205号)に基づき医療法施行規則(昭和23年厚生省令第30号)で定める標準の員数(以下「標準人員」という。)に100分の70を乗じて得た数以下の状態(以下この状態を「標準人員不足」という。)になった場合には、その翌月から、全入院患者について所定の点数に100分の90を乗じて得た点数により算定することになっている。
この減額の取扱いは、昭和63年9月から導入されたもので、その趣旨は医師等の員数が標準人員を著しく下回っている保険医療機関においてはその提供する医療サービスの質が低下していることを考慮して、診療報酬の合理化とともに診療の適正化を図ることにある。
イ 室料及び給食料
室料及び給食料は、算定基準及びこれに基づく「基準看護、基準給食及び基準寝具設備の承認に関する取扱いについて」(昭和33年保険局長通知保発第53号)により、それぞれ次のように算定することになっている。
(ア) 室料は、あらかじめ都道府県知事の基準寝具の承認を得て、療養上必要な寝具類を具備し、その洗濯を所定の回数行うなどの基準に適合した寝具類の提供を行っている場合には、所定の点数に基準寝具の点数を加算して算定する。
(イ) 給食料は、あらかじめ都道府県知事の基準給食の承認を得て、給食部門が組織化され、かつ、給食を担当する職員が適正に配置されているなどの基準を満たす条件下で給食を行っている場合には、所定の点数に基準給食の点数を加算して算定する。
そして、前記の入院時医学管理料の減額制度を設けた際に、これと同様の趣旨から、「診療報酬点数表の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」(昭和63年保険局医療課長通知保険発第21号)により、標準人員不足の保険医療機関については、次のように取り扱うこととした。
〔1〕 標準人員不足の保険医療機関については、都道府県知事は、基準寝具及び基準給食(以下「基準寝具等」という。)の承認を行わない。
〔2〕 既に基準寝具等の承認を受けている保険医療機関が標準人員不足に該当することになった場合には速やかに承認辞退の申請をさせる。
〔3〕 貴省又は都道府県の保険医療機関に対する指導、監査等の結果そのことが明らかになった場合には承認を取り消す。
(2) 投薬に係る診療報酬について
保険医療機関が患者に対して投薬を行った場合には、算定基準により、調剤料、薬剤料、調剤技術基本料等を算定し請求できることになっている。
このうち調剤技術基本料は、薬剤師が常時勤務する保険医療機関において、薬剤師の管理の下に調剤が行われた場合、患者1人につき、月1回に限り算定できることになっている。これは、重複投薬の防止等調剤の管理の充実を図り、より適正な投薬を促すために設けられているものである。
2 本院の検査結果
都道府県では、医療を提供する体制を確保して診療の適正化に資するため、保険医療機関のうち病院について医師、看護婦、薬剤師等の配置状況を定期的に調査し、その実態を把握している。
そこで、都道府県における会計実地検査の際、都道府県が保有しているこの医師等の配置に関する資料を利用するなどの方法により、医師等の配置状況とそれに関わる診療報酬の算定が適正かどうかについて調査を行った。
(1) 入院に係る診療報酬について
平成元年及び本年において、北海道ほか40都府県(注1) 管内に所在する病院について調査した結果は次のとおりである。
(ア) 北海道ほか30都府県(注2)
の181病院では、標準人員不足であるのに、入院時医学管理料について、所定の点数に100分の90を乗じて得た点数によることなく、所定の点数により算定して請求していた。そして、この中には医師又は看護婦の員数が標準人員の50%にも満たない病院が83病院あった。
このため、入院時医学管理料に係る医療費が419,569,265円(請求件数122,336件)過大に支払われていた。
(イ) 上記の181の病院のうち基準寝具等の承認を得ている病院が153病院あり、これらは、標準人員不足に該当することとなった時点でその承認辞退の申請をすべきものであったのにその申請を行わず、室料及び給食料について、それぞれの所定の点数に基準寝具又は基準給食の点数を加算して請求しており、これにより支払われていた。
いま、各都道府県において、これらの病院が標準人員不足に該当することとなった時点で承認辞退の申請を受理し、又は承認を取り消していたとすれば、これらの病院に支払われた基準寝具等の加算に係る医療費1,626,863,079円(請求件数115,981件)は支払の要がなかったものである。
上記の事態について一例を挙げると、次のとおりである。
A県B市に所在する医療法人C病院(病床数133床)における昭和63年9月から平成2年2月までの間の医師等の配置状況は、次のとおりであった。
〔1〕 医師については、標準人員が9名であるのに対し、実員数は4.17名で、標準人員に対する充足率は46%となっていた。
〔2〕 看護婦については、標準人員が31名であるのに対し、多いときでも実員数は18名で、標準人員に対する充足率は58%となっていた
このように同病院は、標準人員不足に該当するのに、入院時医学管理料を、所定の点数に100分の90を乗じて得た点数によることなく、所定の点数により算定して請求していた。このため、入院時医学管理料に係る医療費が6,631,665円(請求件数1,976件)過大に支払われていた。
また、同病院は、昭和63年9月から標準人員不足にあったのであるから、同月に基準寝具等の承認辞退の申請をすべきであったのにその後も申請を行わず、室料及び給食料について基準寝具等の点数を加算して請求しており、これにより支払われていた。 いま、A県において同病院から63年9月に承認辞退の申請を受理し、又は承認を取り消していれば、基準寝具等の加算に係る医療費29,072,589円(請求件数1,976件)は支払の要がなかったものである。
(2) 投薬に係る診療報酬について
本年中に北海道ほか26都府県(注3)
管内に所在する病院について調査したところ、北海道ほか13都府県(注4)
の49病院においては、薬剤師が常時勤務してはいないのに調剤技術基本料を算定して請求していた。
このため、調剤技術基本料に係る医療費が19,026,886円(請求件数293,596件)過大に支払われていた。
上記のとおり、保険医療機関における診療報酬の算定及び請求が算定基準等に則って行われていない事態は、医療費の増大ひいては国の負担の増大を招くばかりでなく、診療報酬の合理化及び診療の適正化等を図る算定基準等の趣旨に沿わないもので適切とは認められず、是正改善を図る必要があると認められる。
前記の不適正に支払われていた医療費に係る国の負担額は計1,228,050,838円で、その内訳は次のとおりである。
(1) 入院に係る診療報酬について
(ア) | 入院時医学管理料に係るもの | 250,714,348円 | |
(イ) | 室料及び給食料に係るもの | 965,083,391円 |
(2) 投薬に係る診療報酬について
調剤技術基本料に係るもの | 12,253,099円 |
このような事態が生じたのは、次のことなどによると認められる。
(ア) 病院において、診療報酬の請求に当たり算定基準等についての認識が十分でなかったこと
(イ) 都道府県において、定期的に調査し把握している医師等の配置に関する資料の活用が十分でないこと及び病院に対する指導が十分でなかったこと
(ウ) 貴省において、都道府県が保有する上記の資料の活用等に対する指導が十分でなかったこと
3 本院が要求する是正改善の処置
近年、人口の高齢化等に伴い医療費は大幅な増加傾向にあることにかんがみ、診療報酬の支払の適正化を図るため、貴省において、次のような改善のための処置を執る要がある。
(ア) 都道府県に対し、病院に算定基準等を遵守させるための指導を徹底させること
(イ) 都道府県に対し、保険医療機関から不適正な医療費の請求があっても適切に対処できるように、その保有している医師等の配置に関する資料を活用して、標準人員不足の病院及び薬剤師が常時勤務していない病院を的確に把握するよう指示すること
(注1) 北海道ほか40都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、神奈川、新潟、富山、石川、山梨、長野、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各県
(注2) 北海道ほか30都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、青森、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、神奈川、富山、長野、岐阜、愛知、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、徳島、香川、高知、福岡、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島各県
(注3) 北海道ほか26都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、青森、岩手、群馬、埼玉、神奈川、新潟、富山、石川、長野、愛知、滋賀、兵庫、和歌山、鳥取、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、佐賀、熊本、鹿児島各県
(注4) 北海道ほか13都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、青森、埼玉、神奈川、富山、長野、愛知、広島、徳島、佐賀、熊本各県