会計名及び科目 | 食糧管理特別会計 | (輸入食糧管理勘定) (輸入飼料勘定) |
(項)輸入食糧買入費 (項)輸入飼料買入費 |
部局等の名称 | 食糧庁 | ||
契約名 | 外国産食糧(麦)売買契約 551契約 | ||
契約の概要 | 国民食糧の確保及び国民経済の安定を図ることなどを目的として、食糧管理法(昭和17年法律第40号)等の規定に基づき、食糧用及び飼料用の外国産麦を輸入業者から買い入れるもの | ||
買入総額 | 昭和63年度 1803億8323万余円(うち輸入ユーザンスの金利相当額約9億4900万円) | ||
契約の相手方 | 三井物産株式会社ほか27会社 | ||
契約 | 昭和63年4月〜平成元年3月 随意契約 | ||
支払 | 昭和63年6月〜平成元年12月 | ||
節減できたと認められた買入経費 | 2億6600万円 | ||
<検査の結果>
輸入麦の買入れに当たり、買入代金の概算払の割合を海上輸送途中における事故品の発生などの実態に応じた適切な水準に引き上げていたとすれば、買入経費を約2億6600万円節減できたと認められた。 <当局が講じた改善の処置>本院の指摘に基づき、食糧庁では、平成2年9月に外国産食糧買入要綱等を改正し、同月以降の売買契約締結分から買入代金の概算払の割合を70%から90%に引き上げることとする処置を講じた。 |
1 契約の概要
食糧庁では、国民食糧の確保及び国民経済の安定を図ることなどを目的として、食糧管理法(昭和17年法律第40号)等の規定に基づき、食糧用及び飼料用の輸入麦を輸入業者から随意契約により買い入れている。昭和63年度契約に係る買入件数及び買入数量は小麦480件5,050,579t 、大麦71件1,368,209t 、計551件6,418,788t 、買入総額は1803億8323万余円となっている。
輸入麦の買入れに当たっては、外国産食糧買入要綱(昭和49年食糧業第646号食糧庁長官通達。以下「要綱」という。)等に定められた手続に従って、輸入業者と外国産食糧(麦)売買契約(以下「売買契約」という。)を締結している。売買契約では、買い入れる麦の種類、品質、単価(以下「契約単価」という。)、数量、買入代金の支払方法、現品の品質が劣る場合の値引きなどが定められている。契約単価は、その大半を占める輸出港本船乗渡価格(注1)
、海上運賃のほかに、海上保険料、輸入ユーザンスの金利、手数料、輸入港受渡業務諸掛等(注2)
で構成されている。
このうち、輸入ユーザンスの金利は、次のように、輸入業者が、輸入代金についてその取引銀行から一定期間支払猶予を受けることにより、負担する金利のことである。
(ア) 輸入業者と契約を締結した輸出業者は、輸入業者を支払人とする一覧払又は期限付為替手形を作成し、これに船荷証券(以下「B/L」という。)(注3) を添付して、その買取りを輸出地の外国為替銀行に依頼し、代金を受け取る。
(イ) 輸入業者の取引銀行は、上記の外国為替銀行と輸入麦に係る手形代金の決済を行い、輸入業者に為替手形を呈示する。
(ウ) 輸入業者は、為替手形の呈示時点では食糧庁から買入代金を受領していないので、一覧払為替手形の場合には外貨建約束手形を差し入れ、また、期限付為替手形の場合には引受けの署名をして、B/Lを受領する。これにより、輸入業者は、外貨建約束手形又は期限付為替手形に表示されている期間、決済代金の支払を猶予される。
前記の63年度契約551件では、買入総額1803億8323万余円のうち、輸入ユーザンスの金利相当額は約9億4900万円となっている。
買入代金の支払方法は、要綱等及び売買契約によると、次のように行うこととしている。
(ア) 輸入業者が、B/L等を添付した概算金支払請求書を食糧庁に提出したときに、概算払を行う。その額は、輸入港本船乗渡価格(契約単価から輸入港受渡業務諸掛を控除したもの)の70%に相当する価格にB/Lに記載されている数量(以下「B/L数量」という。)を乗じた金額である。
なお、輸入港受渡業務諸掛については、別途概算払を行うこととしている。
(イ) 輸入業者が、食糧事務所へ現品引渡し後、食糧事務所からの現品領収証等を添付した代金支払請求書を食糧庁に提出したときに、精算払を行う。その額は、契約単価から品質が劣る場合の値引額を差し引くなどした単価に実際の納入数量を乗じ、これに輸入港受渡業務諸掛の加算額(注4) などを加え、この額から概算払額を差し引いた金額である。
精算払額=契約単価から値引額を差し引くなどした単価×実際の納入数量+輸入港受渡業務諸掛の加算額など−概算払額
このような概算払を行うこととしている理由は、次のとおりである。
(ア) 輸出港の船積みから政府の買入代金支払までには相当の日時を必要とするため、この間の資金繰り等のすべてを輸入業者に負担させることは著しく困難であり、ひいては輸入業務の円滑を欠くおそれがあること
(イ) 輸入ユーザンスの利率が食糧証券(注5) の利率を上回っている状況の下では、低利な食糧証券を発行して調達した資金により概算払として買入代金の一部を早期に支払うことによって、輸入ユーザンスの金利を軽減し、輸入麦の買入経費の節減を図ることができること。ちなみに、63年度の東京銀行の信用状付3箇月もの輸入ユーザンスの利率は年9.125%から12.750%であるのに対して、同年度の食糧証券の利率は年2.375%であり、輸入ユーザンスの利率は食糧証券の利率より著しく高い状況になっている。
買い入れる麦の数量及び品質は、海上運送途中及び荷さばき中に水濡れ等による事故品の発生や荷こぼれ等による目減りがあったり、品質の劣る値引品が混入されていたりして、契約で定められたものと相違することがある。このような際に概算払額の一部を返納させる事態が生じることがないように、31年以降、当時の事故品の発生などによる減額の割合の状況を勘案して、輸入港本船乗渡価格の70%に相当する価格にB/L数量を乗じた金額の概算払を行うこととしている。
2 検査の結果
食糧庁が61年度から63年度までの間に買入代金を支払った輸入麦(買入件数1,684件、買入数量19,242,249t 、買入総額4850億9784万余円)について、事故品の発生などの状況を調査したところ、次のとおりであった。
(ア) 事故品が含まれていたものは24件、買い入れなかった事故品の数量は4,586t であった。また、これら24件に係る目減りの数量は2,115t であった。これら24件について1件ごとに概算払額算定の基礎となる輸入港本船乗渡価格にB/L数量を乗じた額に対する事故品の発生及び目減りによる減額の割合をみると、18件は2%以下となっていて、最も高いものでも6.1%であった。
(イ) 値引品が含まれていたものは160件、値引額は7628万余円であった。また、これら160件に係る目減りの数量は10,390tであった。これら160件について1件ごとに輸入港本船乗渡価格にB/L数量を乗じた額に対する値引品の混入及び目減りによる減額の割合をみると、151件は2%以下となっていて、最も高いものでも5.4%であった。
この実態は、近年の輸入麦の海上運送における船舶の大型化、輸入港における荷さばき方法の近代化及び輸出地における検査精度の向上などによるものと認められた。したがって、このような事故品の発生などによる減額の割合が30%を大幅に下回っている実態などを勘案して、概算払の割合を70%から相当程度引き上げ、輸入ユーザンスの金利を軽減し、輸入麦の買入経費の節減を図る要があると認められた。
いま、63年度中に締結した輸入麦の売買契約551件(買入数量6,418,788t 、買入総額1803億8323万余円)について、概算払の割合を70%から90%に引き上げていたとすると、当該買入代金に含まれる輸入ユーザンスの金利相当額約9億4900万円は約6億1600万円となって約3億3300万円減少し、これに伴い海上保険料等も約500万円減少する。一方、概算払額が増加することに伴い食糧証券の金利負担が約7200万円増加するので、これを考慮すると買入経費を約2億6600万円節減できたこととなる。
このような事態が生じていたのは、食糧庁において、買入代金の概算払の割合を相当程度引き上げても支障がない状況となっているのに、概算払の割合を見直すことを十分行っていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、輸入麦の買入経費の節減を図るため、平成2年9月に外国産食糧買入要綱等の一部を改正し、同月以降の売買契約締結分から買入代金の概算払の割合を90%に引き上げることとする処置を講じた。
(注1) 輸出港本船乗渡価格 輸出港停泊の本船に積み込むまでの一切の費用を含んだ1t当たりの価格。いわゆるFOB価格のことである。
(注2) 輸入港受渡業務諸掛 輸入港における荷揚経費。契約単価には定額(小麦1,000円/t、大麦1,300円/t)で算入されており、最終的には実費で精算される。
(注3) 船荷証券 船会社が託送貨物に対して発行する貨物代表証券。船会社は、託送貨物を指定地まで運送し、この証券の正当所持人に対して、これと引換えに託送貨物を引き渡す。
(注4) 輸入港受渡業務諸掛の加算額 輸入港受渡業務諸掛の実績額−(注2)の定額×実際の納入数量
(注5) 食糧証券 米麦等の買入代金の支払に当たり、資金が不足する場合に発行される償還期間60日程度の政府短期証券