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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

素材生産請負事業における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


(2) 素材生産請負事業における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 国有林野事業特別会計(国有林野事業勘定) (項)国有林野事業費
部局等の名称 青森営林局
事業名 素材生産請負事業
事業の概要 素材(丸太)の生産を民間林業事業者に請け負わせて行う事業
事業費 1,608,887,555円
請負人 斗南産業株式会社ほか51会社等
契約 平成元年4月〜2年1月 随意契約
低減できた積算額 4300万円

<検査の結果>

 上記の事業において、労務費等の積算に当たり労務単価の適用が適切でなかったため、これにより算出した直接費及び間接費のうち労務関係費の積算額(12億6726万余円)が約4300万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、労務費等の積算に当たりチェーンソーを使用しない集村及び巻立ての作業についても、チェーンソーに係る経費を含めた労務単価により労務費の積算を行っていたことなどによるもので、作業の実態に即した積算をする要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、青森営林局では、平成2年10月に集村及び巻立ての作業の労務費の積算についてチェーンソーに係る経費を労務単価から控除することとし、同年11月以降積算する事業から適用することとする処置を講じた。

1 事業の概要

(素材生産請負事業の内容)

 青森営林局では、素材生産請負事業が毎年多数実施されており、平成元年度においては144事業(事業費総額16億6076万余円)となっている。この事業は、営林署が素材(丸太)を販売するために必要な作業を民間林業事業者に請け負わせて行うものである。そして、その作業内容は、〔1〕 チェーンソーで立木を伐採する伐倒作業、〔2〕 トラクタ等で伐倒材を集め、運搬する集材作業、〔3〕 チェーンソーで伐倒材を素材にする造材作業、〔4〕 現場の作業場に素材を積み上げて整理する巻立て作業等である。

(予定価格積算の根拠)

 素材生産請負事業の予定価格の積算は、林野庁が定めた「素材生産請負事務取扱い要領」(昭和52年林野庁長官通達52林野業第28号)に基づいて青森営林局が定めた「素材生産請負事務取扱い要領」(昭和52年青作第22号。以下「営林局要領」という。)により行っている。

(予定価格の構成)

 本件事業の予定価格は、作業費、仮設経費及び人員輸送費の直接費と諸経費、労務関係費及び官給材料取扱経費の間接費で構成されている。そして、直接費のうち作業費は前記作業内容の別に労務費、機械経費等を合計したものである。このうち労務費は、伐倒、集材、造材及び巻立ての各作業内容ごとの総作業量から作業延べ人員を算出し、これにこれらの各作業に従事する林業作業員の労務単価を乗じて得た額となっている。

2 検査の結果

(当局の積算方法)

 前記144事業のうち予定価格300万円以上の120事業(事業費総額16億0888万余円)の積算について検査したところ、伐倒、集材等の作業に必要な労務費、機械経費等の直接費を総額10億7150万余円とし、間接費のうち労務費に労災保険率等を乗じて算出した保険料事業主負担金である労務関係費を総額1億9570万余円と算定していた。そして、営林局要領により各営林署において行っている労務費等の具体的積算方法は、次のとおりとなっていた。

ア 伐倒、集材、造材及び巻立ての各作業の労務単価の適用については、トラクタ等の運転手を除く林業作業員全員が作業期間中上記の各作業に交替で従事しており、チェーンソーも自己所有のものを使用していることから、労務単価表のチェーンソーを自己所有している場合の伐出手(A)の労務単価を適用していた。

イ 直接費のうち労務費、チェーンソーの機械経費及び人員輸送費の算定は、次のとおり行っていた。

(ア) 伐倒及び造材の作業については、伐出手(A)の労務単価が上記アのようにチェーンソーを自己所有している場合のものであり、チェーンソー損料及び燃料油脂費(以下「チェーンソー損料等」という。)が含まれていることから、この労務単価を労務賃金とチェーンソー損料等に区分し、これに伐倒及び造材の各作業延べ人員を乗じて労務費とチェーンソー損料等を算出していた。

(イ) 集材及び巻立ての作業については、伐出手(A)の労務単価に各作業延べ人員を乗じて労務費を算出していた。

(ウ) 人員輸送費の算定に当たり、上記の(ア)及び(イ)で算出した労務費に機械経費等を加えた額に所定の率を乗じて人員輸送費を算出していた。

ウ 間接費のうち労務関係費の算定に当たり、上記の(ア)及び(イ)で算出した労務費に労災保険率等を乗じて労務関係費を算出していた。

(改善を要する事態)

 上記労務単価の適用についてみると、集材及び巻立ての作業にはチェーンソーを使用しないのであるから、チェーンソー損料等を含んだ伐出手(A)の労務単価に各作業延べ人員を乗じて集材及び巻立ての作業に要する労務費を算出しているのは適切でないと認められた。また、上記の(イ)で算出した労務費を基に人員輸送費及び労務関係費を算出しているのも適切でないと認められた。
 したがって、前記素材生産請負事業の直接費のうち労務費及び人員輸送費並びに間接費のうち労務関係費の積算については、集材及び巻立ての作業の労務費の積算に当たって適用している労務単価に含まれているチェーンソー損料等を控除して行うのが適切であると認められた。

(低減できた積算額)

 いま、これにより積算したとすれば直接費及び間接費のうち労務関係費の積算額12億6726万余円は12億2343万余円となり、積算額を約4300万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、営林局要領を定めるに当たって伐倒、集材、造材及び巻立ての各作業内容とチェーンソー損料等の取扱いについての理解が十分でなかったことなどによるものと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、青森営林局では、2年10月に集材及び巻立ての作業の労務費の積算についてチェーンソー損料等を労務単価から控除することとし、これを同年11月以降積算する事業から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

チェーンソー