会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 (項)受託工事費 |
〔国庫債務負担行為(港湾整備勘定) | (事項)直轄港湾改修事業〕 | |
部局等の名称 | 第三港湾建設局ほか2港湾建設局 | |
工事名 | 富田地区岸壁(-10m)築造工事ほか11工事 | |
工事の概要 | 岸壁の築造、浚渫等の工事 |
工事費 (契約額) |
昭和63年度国庫債務負担行為 | 49,440,000円 |
平成元年度歳出予算 | 2,876,254,400円 | |
平成元年度国庫債務負担行為 | 69,010,000円 | |
計 | 2,994,704,400円 |
請負人 | アイエン工業株式会社ほか5会社、池畑・若松港湾建設共同企業体ほか4建設共同企業体 |
契約 | 平成元年3月~2年3月指名競争契約、指名競争後の随意契約 |
過大積算額 | 3000万円 |
<検査の結果> 上記の各工事において、揚土費の積算(積算額4億2255万余円)が施工の実態に適合しないものとなっていたため、積算額が約3000万円過大になっていた。 このように積算額が過大になっているのは、浚渫した土砂をバージアンローダ船を使用して揚土する場合の揚土費の積算方法が積算の基準に定められていなかったため、施工の実態を反映した積算をしていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。 <当局が講じた改善の処置>本院の指摘に基づき、運輸省では、平成2年11月に施工の実態に即した積算となるよう積算の基準を整備して、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。 |
1 工事の概要
運輸省では、港湾施設の整備工事を毎年多数実施している。このうち、第三、第四及び第五各港湾建設局では、平成元年度に、浚渫した土砂をバージアンローダ船(以下「揚土船」という。参考図参照
)を使用して揚土する工法を用いて岸壁を築造する工事等を12工事(工事費総額29億9470万余円、昭和63年度及び平成元年度国庫債務負担行為を含む。)施行している。
これらの工事における、浚渫、運搬及び揚土作業は、港湾区域の海底をグラブ浚渫船によって浚渫し、その土砂を土運船によって土捨場の護岸近くに係留している揚土船まで運搬し、揚土船が土運船から土砂を吸引し土捨場に揚土するものである。この揚土船の揚土作業は、接舷された土運船に積載されている土砂に高圧水を注ぎ泥水状としたうえ吸入管で吸引し、吸入管と接続している排砂管によりこの土砂を護岸で仕切られた土捨場に排送するものである。
各港湾建設局では、揚土費の積算は、揚土船を使用して揚土する場合の揚土費の積算方法が運輸省港湾局制定の「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)」(以下「積算基準」という。)、「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)の運用指針」及び「船舶および機械器具等の損料算定基準」に定められていないことから、浚渫作業を行いつつ揚土作業も行う非航ポンプ浚渫船(参考図参照) の作業能力、損料等を参考にして次のように行っている。
(ア) 非航ポンプ浚渫船の運転時間当たり揚土量を基に揚土船の運転時間当たりの揚土量を算出し、これから揚土船の1日当たりの運転時間を算出する。
(イ) 非航ポンプ浚渫舶の基礎価格(注1) を揚土舶の基礎価格として用い、これに非航ポンプ浚渫舶の損料率(注2) を乗ずる方法等により揚土船の運転時問当たり損料を算出する。そして、この損料に(ア)の揚土船の1日当たりの運転時間を乗ずるなどして、揚土船の1日当たり損料を算出する。
(ウ) (イ)の揚土船の1日当たり損料に燃料費、船員の労務費等を加えて、揚土船の1日当たりの費用を算出し、これに1日当たりの排砂管等の費用を加えるなどして、揚土船による1日当たりの揚土費を算出する。そして、この揚土費から揚土船による揚土1m3 当たりの単価を299円から714円と算出し、これに各工事の揚土量18,806m3 から460,329m3 を乗じて、その揚土費を総額4億2255万余円と算定していた。
2 検査の結果
上記の揚土費の積算について調査した結果、次のとおり、揚土費を積算するに際し非航ポンプ浚渫船の作業能力、損料等を参考にして算出するのは施工の実態を反映していないものと認められた。
(1) 揚土船及び非航ポンプ浚渫船の作業能力
揚土船は、非航ポンプ浚渫船に比べ、次のような作業の実態から作業能力は高いものと認められた。
(ア) 非航ポンプ浚渫船は、船尾のスパッド(注3) を交互に打ち替えて、前進しながら浚渫及び揚土を行い、スパッドの打替中は作業が中断するのに対し、揚土船は係留して作業するものであるから揚土中はこのような中断をすることなく作業ができる。
(イ) 非航ポンプ浚渫船は、海底を浚渫し、その土砂を吸入管を通して吸い上げ土捨場までの遠距離を排砂管で排送することから、その作業が潮流等の影響を受けるのに対して、揚土船は泥水を護岸近くの土運船から土捨場に排送するもので潮流等の影響を受けることが少ない。
(ウ) 非航ポンプ浚渫船の運転操作は、海底地盤の状況等を計器のみで判断しながら行うのに対して、揚土船は作業状況を見ながら運転操作ができる。
(2) 揚土船及び非航ポンプ浚渫船等の損料
揚土船は揚土作業に使用する作業船であるのに対し、非航ポンプ浚渫船等は海底を浚渫するための作業船であるため、揚土船は、非航ポンプ浚渫船等とその装備及び作業形態を異にしている。このため、揚土船の基礎価格及び損料率は非航ポンプ浚渫船等の基礎価格及び損料率とは異なるものと認められた。
したがって、揚土船の作業能力については、実態に即した運転時間当たりの揚土量とすること、また、揚土船の損料については、各揚土船の製造価格から算出した基礎価格と揚土船の作業形態を基にした損料率とにより算出することなどの要があると認められた。
いま、上記により、揚土船による揚土1m3
当たりの単価を積算すれば、前記の1m3
当たりの単価は282円から561円となる。そして、木件各工事の揚土費についてこの単価により積算したとすれば、積算額4億2255万余円は3億9168万余円となり、その積算額を約3000万円低減できたと認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、2年11月に揚土費について施工の実態に即した積算となるよう積算基準等を整備して、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 基礎価格 標準仕様による船舶・機械の標準時価をいう。
(注2) 損料率 工事に使用する船舶等の使用料が損料であり、1時間当たり及び1日当たりの損料の基礎価格に対する割合を損料率という。
(注3) スパッド 船尾の左右にある上げ下げのできる2本の柱。浚渫のときはこのうちの1本を軸に旋回しながら掘り進む。