会計名及び科目 | 空港整備特別会計 (項)空港整備事業費 |
部局等の名称 | 運輸省航空局 |
補助の根拠 | 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号) |
事業主体 | 空港周辺整備機構、東京都、市6、計8事業主体 |
補助事業 | 住宅騒音防止対策事業 |
補助事業の概要 | 航空機騒音の著しい区域に所在する住宅の騒音防止工事に係る工事費等を補助するもの |
事業費 | 昭和63年度 | 2,455,599,651円 |
平成元年度 | 1,209,867,583円 | |
計 | 3,665,467,234円 | |
国庫補助金交付額の合計 | 昭和63年度 | 2,443,341,151円 |
平成元年度 | 1,202,326,818円 | |
計 | 3,645,667,969円 | |
低減できた積算額 | 4100万円 | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 4000万円 |
上記の補助事業において、航空機騒音による障害を防止するための工事に用いるアルミサッシの仕様が適切でなかったため、アルミサッシの製品費の積算額(9428万余円)が約4100万円(国庫補助金相当額約4000万円)過大になっていた。
このような事態が生じていたのは、近年、アルミサッシの需要の増大に伴い品種も多様化し、木造住宅用のアルミサッシにも所要の遮音性を有する廉価なものが市販されてきているのに、仕様の見直しを行っていなかったことによるもので、工事標準仕様書を適切なものに改め、補助事業実施の適正を期する要があると認められた。
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成2年11月に木造住宅については所要の遮音性を有する木造住宅用の防音アルミサッシを使用するよう工事標準仕様書を改め、同年12月から適用することとする処置を講じた。
1 住宅騒音防止工事の概要
運輸省では、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)に基づき、東京国際空港ほか6空港(注1)
の周辺地域において住宅騒音防止工事(以下「防音工事」という。)を実施する者に補助を行っている事業主体(注2)
に対し、住宅騒音防止対策事業費補助金を交付している。この補助金は、航空機騒音が著しい区域にある住宅について、その住宅の所有者等が航空機の騒音により生ずる障害を防止することなどを目的として防音工事を実施するときに、これらの者に当該防音工事に要する工事費、設計監理費を補助対象として補助金を交付する事業主体に対して交付するものである。そして、国が交付する補助金の額は、〔1〕 工事費が所定の額以下の場合は、当該工事費の全額に設計監理費、事務費を加えた額、〔2〕 工事費が所定の額を超える場合は、超える分について所定の方法により算出した額と所定の額との合計額に設計監理費、事務費を加えた額となっている。
昭和63年度及び平成元年度における防音工事の実施件数は1,501件(昭和63年度1,067件、平成元年度434件)で、これに係る住宅騒音防止対策事業費補助金は36億4566万余円(昭和63年度24億4334万余円、平成元年度12億0232万余円)となっている。
同省航空局では、防音工事を統一的、効率的に行うための基本事項として「住宅騒音防止工事設計基準」(以下「設計基準」という。)及び「住宅騒音防止工事標準仕様書」(以下「仕様書」という。)を定めている。各事業主体では、これに準拠して防音工事の標準仕様を定めており、住宅の所有者等は、特別な事情のない限りこれに基づいて、防音工事を実施することとなっている。
そして、設計基準によると、当該住宅の所在する地域の航空機騒音の程度に応じて、防音工事による騒音軽減の目標量が定められており、その目標量が〔1〕 30デシベル(注3)
以上の場合はA工法、〔2〕 25デシベル以上の場合はB工法、〔3〕 20デシベル以上の場合はC工法によることとなっている。
このうち騒音軽減の目標量が最小のC工法は、昭和54年に設計基準に新たに設けられたもので、既設のアルミサツシ等を取り外し、新たに防音用アルミサッシを取り付ける工事、冷暖房設備の新設工事等からなっている。
54年当時、市販されていたアルミサッシで、C工法の騒音軽減の目標量を満足して最もこれに近い遮音性(音に対する遮断能力)を備えているものは5階建て程度の鉄筋コンクリート造り共同住宅等用のものしかなかった。このため、仕様書においては、新たに取り付けるアルミサッシの耐風圧性(風圧に対する強さ)及び水密性(雨水に対する遮断能力)についても、この市販品の性能をそのまま用いて次のように規定していた。
(ア) 耐風圧性については、アルミサッシ1m2 当たり200kgの風圧力に対して破壊されず、変位やたわみが一定の範囲内におさまること
(イ) 水密性については、アルミサッシ前面に水を噴霧し同時に1m2 当たり35kgの平均風圧力を加えたとき10分間漏水しないこと
2 検査の結果
63年度及び平成元年度にC工法によりアルミサッシの取付工事等の防音工事を実施したもののうち木造住宅を対象とした267件、工事費総額4億1403万余円(これに係る国庫補助金4億0853万余円)について調査した。これらの工事に用いたアルミサッシの製品費の積算額は9428万余円となっていた。
アルミサッシの受ける風圧力及び水密圧力(注4)
は建物の構造及び高さなどの状況に応じて変化するものである。そして、これらの工事の対象となった住宅はいずれも木造の1階又は2階建てであった。そこで、これら住宅の構造及び高さ等に基づいて、取り付けられたアルミサッシが受ける風圧力及び水密圧力を建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)等に定める方法により算出したところ、2階の窓の部分で、風圧力は最大で約120kg/m2
、水密圧力は最大で約23kg/m2
であった。
一方、近年、木造住宅用のアルミサッシに引寄せ機構(アルミサッシの外障子と内障子を引き寄せ、枠に密着させるもの)を付加することによって遮音性を改良していてC工法の騒音軽減の目標量を満足するもの(以下「木造住宅用防音アルミサッシ」という。)が多数市販されている。これらは、1m2
当たり120kgの風圧力に耐え得る耐風圧性、1m2
当たり25kgの水密圧力に耐え得る水密性を保持している。しかも、これらの木造住宅用防音アルミサッシは、本件防音工事に用いられていたアルミサッシに比べ、30%から50%程度廉価なものとなっている。このようなことから、仕様書でこれらの住宅の受ける風圧力及び水密圧力を必要以上に大きく上回った性能のアルミサッシを使用することとしているのは適切でない。
したがって、仕様書で示している耐風圧性及び水密性については、それぞれ工事を施す建物の構造、高さ等に応じた適切なものとするよう見直しを行い、アルミサッシ製品費に係る積算額の低減を図り、ひいて国庫補助金の節減を図る要があると認められた。
C工法により木造住宅を対象として実施したアルミサッシ取付工事等の防音工事において、木造住宅用防音アルミサッシを使用することとして、前記の防音工事267件におけるアルミサッシの製品費の積算額9428万余円を修正計算すると5285万余円となり、積算額を約4100万円(国庫補助金相当額約4000万円)低減できると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、2年11月、耐風圧性及び水密性については、それぞれ工事を施す建物の構造、高さ、地域その他の条件に応じたものとすることとし、所要の遮音性を有する木造住宅用防音アルミサッシを使用することができるよう仕様書を改正し、同年12月から適用することとする処置を講じた。
(注1) 東京国際空港ほか6空港 東京国際、新潟、名古屋、大阪国際、松山、福岡、宮崎各空港
(注2) 事業主体 空港周辺整備機構、東京都、新潟市、名古屋市、小牧市、春日井市、松山市、宮崎市
(注3) デシベル 騒音量を示す国際的な単位
(注4) 水密圧力 風を伴った豪雨が一定時間窓に当たるときに窓面積1m2 当たりに作用する圧力