ページトップ
  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 労働省|
  • 不当事項|
  • 保険給付

雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(164) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか23都府県(支給庁)
函館公共職業安定所ほか161公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 451人
失業給付金の支給額の合計 232,232,916円
不適正支給額 112,255,230円

 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の451人に対して112,255,230円(基本手当59,837,030円、再就職手当52,418,200円)が不適正に支給されていた。
 これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が基本手当の所定給付日数の2分の1以上を残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

 (注)  受給資格者 離職した被保険者で、公共職業安定所において、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることなどの認定を受けた者

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか25都府県(支給決定庁札幌公共職業安定所ほか226公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者17,482人を対象として、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否について検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか23都府県で、本院が調査した12,944人に対する基本手当の支給のうち450人に対する支給(支給額179,814,716円)について、59,837,030円が不適正に支給されていた。これは、函館公共職業安定所ほか161公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか23都府県で、本院が調査した4,632人に対する再就職手当の支給のうち165人に対する支給について、52,418,200円が不適正に支給されていた。これは、函館公共職業安定所ほか92公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇用年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業給付金 左のうち不適正失業給付金

北海道

函館ほか13

1,105

32
千円
10,498
千円
3,916
函館ほか5 385 10 3,081 3,081
小計 13,580 6,997
青森県 青森ほか3 360 7 1,996 458
青森ほか2 243 5 1,659 1,659
小計 3,656 2,117
岩手県 盛岡ほか5 346 11 4,853 1,061
盛岡 81 1 327 327
小計 5,181 1,388
秋田県 秋田ほか8 835 40 12,708 7,354
湯沢ほか1 28 2 523 523
小計 13,231 7,878
福島県 会津若松ほか2 221 5 1,756 583
須賀川ほか1 48 2 240 240
小計 1,997 823
茨城県 水戸ほか4 351 7 3,868 1,465
水戸ほか2 108 3 1,328 1,328
小計 5,196 2,793
埼玉県 川口ほか9 852 47 20,138 6,591
川口ほか8 469 24 8,605 8,605
小計 28,743 15,196
千葉県 市川ほか2 269 7 2,489 611
館山ほか1 87 3 852 852
小計 3,342 1,463
東京都 飯田橋ほか16 1,429 47 18,263 6,778
飯田橋ほか11 704 26 8,800 8,800
小計 27,063 15,578
神奈川県 横浜ほか9 863 26 11,093 4,878
横浜ほか6 395 11 5,026 5,026
小計 16,120 9,904
新潟県 新津ほか1 120 8 2,018 706
新津ほか1 40 2 422 422
小計 2,440 1,129
福井県 福井ほか5 486 10 4,432 995
福井ほか1 102 3 1,214 1,214
小計 5,647 2,210
静岡県 静岡ほか6 556 25 13,962 3,049
静岡ほか3 226 7 2,238 2,238
小計 16,201 5,287
愛知県 名古屋東ほか11 945 39 17,276 5,526
名古屋東ほか7 351 16 4,344 4,344
小計 21,621 9,870
京都府 京都西陣ほか4 330 14 4,542 2,356
京都西陣ほか1 118 4 1,307 1,307
小計 5,849 3,663
大阪府 大阪東ほか12 1,180 28 13,170 3,036
梅田ほか7 529 14 4,001 4,001
小計 17,171 7,037
兵庫県 神戸ほか3 309 5 1,543 453
神戸ほか2 126 4 1,664 1,664
小計 3,208 2,118
岡山県 岡山ほか6 449 11 4,077 1,439
岡山ほか2 152 5 1,103 1,103
小計 5,180 2,542
広島県 広島ほか5 437 22 6,581 1,709
広島ほか3 184 10 2,746 2,746
小計 9,328 4,456
愛媛県 八幡浜ほか2 215 8 2,053 470
八幡浜ほか2 64 3 811 811
小計 2,865 1,282
高知県 高知ほか2 202 10 7,764 1,992
高知 18 1 330 330
小計 8,094 2,322
佐賀県 佐賀ほか5 456 24 10,026 2,475
佐賀ほか2 68 4 486 486
小計 10,513 2,962
熊本県 菊池ほか2 240 9 3,138 971
阿蘇 22 2 396 396
小計 3,535 1,368
大分県 大分ほか3 388 8 1,558 956
大分ほか1 84 3 905 905
小計 2,463 1,861

162箇所 12,944 450 179,814 59,837
93箇所 4,632 165 52,418 52,418
合計 232,232 112,255

(注1) 上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

(注2) 不適正受給者のうち基本手当と再就職手当の双方に係る者が164人、基本手当のみの者が286人、再就職手当のみの者が1人おり、したがって、不適正受給の実人員は451人である。