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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 自治省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

衛星通信用無線通信設備の電力増幅管の交換方法を改めることにより調達費用を節減するよう改善させたもの


衛星通信用無線通信設備の電力増幅管の交換方法を改めることにより調達費用を節減するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計(組織)消防庁 (項)消防庁
部局等の名称 消防庁
調達物品 30GHz帯300W電力増幅管
調達物品の概要 消防防災無線通信網の衛星通信用無線通信設備に使用し、通信衛星へ向けて送信する高周波信号を増幅する出力300Wの電力増幅管
契約金額 23,484,000円
契約の相手方 株式会社東芝
契約 平成元年12月 指名競争契約
節減できた調達費用 1170万円

<検査の結果>

 上記の契約において、衛星通信用無線通信設備に使用している電力増幅管を2本調達しているが、使用中のものの寿命を十分に生かして使用することとしていれば、その調達費用を約1170万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、取付け後1年経過したものを一律に取り外すこととしていたことによるもので、電力増幅管の管理データで性能の劣化を把握して、調達費用を節減する要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、消防庁では、平成2年10月から電力増幅管の性能の劣化を把握する管理データの点検リストを作成し、電力増幅管の寿命を十分に生かして交換することとする措置を講じた。

1 調達の概要

 消防庁では、大規模地震等の災害に備え、情報の収集・伝達の手段を確保するため、同庁と都道府県とを結ぶ消防防災無線通信網を整備運用している。この無線通信網は、地上マイクロ回線を利用する地上通信系と、通信衛星を中継器として利用する衛星通信系との2系統の通信網で構成されている。
 このうち、衛星通信系は、災害時に地上の無線中継所が被災し地上通信系が途絶えた場合でも通信回線を確保できることなどから、同庁ほか6県(注) に、地球局設備としての衛星通信用無線通信設備を設置して、昭和59年度から、その運用を開始している。
 同庁では、この衛星通信系の地球局設備として、庁舎内に送信出力300Wの無線通信設備を設置し、常時通信可能な状態で運用している。このうち送信設備には2つの高周波電力増幅回路(通信衛星へ向けて送信する高周波信号を増幅する電気回路。以下「増幅回路」という。)が設けられている。この2つの増幅回路は同一のものであり、設備の信頼性を確保するために、両回路とも常時送信可能な状態で運用され、一方の回路により送信している間は、他の回路が不慮の故障発生に備えている。
 増幅回路に各1本使用されている出力300Wの電力増幅管(Travelling Wave Tube。以下「TWT」という。)は、増幅回路が上記のように常時送信可能な状態で運用されるため、性能の劣化の程度は2本ともほぼ同程度となることから、同庁は、毎年度2本同時に新品と交換することとしていた。その際に取り外した2本のTWTは、予備品として1年間保管した後、翌年度の交換取付け時に廃棄することとしていた。そして、この交換のために、毎年度2本のTWTを調達しており、平成元年度においては、2本のTWTを調達し交換するために、その製造及び交換取付け等を、契約金額23,484,000円で請け負わせていた。

2 検査の結果

 (調査の背景)

 同庁で上記のような方法でTWTを交換しているのは、衛星通信系の導入に当たって設置した「通信衛星利用調査委員会」の調査報告書において、「推定寿命を8,800時間 (1年)とみなし、1年ごとに交換し、古いTWTを予備品としてストックする方法がある。」とされていることを受けたものであった。
 そこで、このTWTのように高価な機器について、取り付けてから1年間使用しただけで新品と交換し、その後予備品として1年間保管した後に廃棄することの妥当性について調査した。

 (調査の結果)

 一般に、高価な機器で、使用例が少なく、その寿命が明確にされていないものについては、その運用管理データの解析結果が、機器の更新等に当たっての重要な資料となることが多いことから、これらのデータを点検、記録しながら運用することが必要なこととされている。本件の無線通信設備のメーカー作成の取扱説明書でも、TWTの取扱いは、次のとおりとなっている。

(ア) TWTの性能の劣化は、指標となる電流値を測定して把握することができる。

(イ) 電流値が、異常を示した場合には、調整することにより正常に作動させることができるが、調整の間隔が短くなり、調整によって対処できなくなった場合はTWTは寿命であるので、予備品と交換する。

 建設省では、同庁と同型のTWTを使用し、2つの増幅回路を設けた衛星通信系の無線通信設備を同様に運用している。そして、建設省での交換方法をみたところ、TWTの電流値を測定し、上記の取扱説明書に従い交換している状況であった。これらのTWTを取り付けてから予備品と交換して取り外すまでの使用した時間は、同庁で寿命とみなしている8,800時間(1年)を大幅に上回る平均で約19,300時間(2年2ケ月)となっており、毎年度のTWTの調達数は1本となっていた。
 したがって、同庁においても、TWTの寿命を十分に生かして使用して、その後に予備品と交換することができるよう、取扱説明書に従い、その電流値を点検、記録し、その性能の劣化状況を把握する要があると認められた。

 (節減額)

 いま、TWTを、その性能劣化の状況を把握し、寿命を十分に生かして使用した後に交換することとすれば、建設省の使用実績からみて、毎年度のTWTの調達費用を相当程度節減できるものと認められた。このような方法を採った結果、TWTの平均使用時間が建設省と同程度の2年間となり、各年度の調達数が1本で足りていたとすると、元年度における調達費用が約1170万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、衛星通信系の無線通信設備の運用に当たって、TWTの寿命についての認識が十分でなく、性能劣化の指標となる電流値の管理データを点検、記録し、これを寿命の目安とすることについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、同庁では、2年10月からTWTの性能劣化の指標となる電流値の点検リストを作成し、電流値を点検、記録することとし、これをTWTの寿命の目安とすることにより寿命を十分に生かして交換することとする措置を講じた。

 (注)  6県 千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、愛知各県