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  • 貸付金

農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの


(178)−(184) 農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 東京、新潟、高松、熊本各支店
受託金融機関 千葉県信用農業協同組合連合会ほか4金融機関
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)
貸付金の種類 農地等取得資金、総合施設資金、農林漁業構造改善事業推進資金、農林漁業施設資金
貸付けの内容 農林漁業者に対する農地等取得資金等の貸付け
貸付件数 25件
貸付金の合計額 570,970,000円
不当貸付金額 255,443,413円
 上記の4支店で行った25件570,970,000円の貸付けにおいて、255,443,413円の貸付けがその目的に沿わない結果になっていて、不当と認められる。

1 貸付金の概要

 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)は、農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
 このうち、公庫が直接貸付けを行う場合は、公庫が借入申込書類を審査して、所定の条件を満たしていると認めたものに対して貸し付け、事業の完成状況、事業費の支払状況等によって貸付金の使途などを確認することとしている。また、公庫が金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類の審査を行い、一部の資金については公庫が貸付決定を行うこととしているが、そのほかの資金については受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて貸付け等の事務を行うこととしている。

2 検査の結果

 公庫の貸付けについて調査したところ、25件570,970,000円の貸付けにおいて、255,443,413円の貸付けが不当と認められる。これらの資金の借入者からは、事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告等がなされていた。しかし、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付対象とならない事業に対して貸し付けていたり、貸付金額を過大に算定していたりなどしていた。
 これを貸付先別に示すと次のとおりである。

支店名
(受託金融機関名)
貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付昭和・平成年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認める額 摘要
千円 千円 千円
(農地等取得資金)
(178) 高松支店
(高知県信用農業協同組合連合会)
農業者17名
(高知県高岡郡窪川町)
農地の取得19件

60.3〜62.5
(年3.5%、5.0%)

219,647 174,770 174,770 貸付対象外

 この貸付けは、高知県高岡郡窪川町の農業者17名が農地合計69,626m2 を取得するのに必要な資金合計219,647,996円の一部として、合計19件174,770,000円を貸し付けたものである。
 この貸付けについては、次のことなどが要件とされている。

(ア) 借入者が主として農業に従事していること

(イ) 借入者の農地取得後の経営面積が市町村の農業委員会の定める基準面積を超えること

(ウ) 住居及び生計を一にする親子間の売買により農地を取得するものでないこと

 貸付けに当たっては、借入申込者が提出した貸付適格認定申請書について、農業委員会及び都道府県の貸付適格認定審査委員会が審査した後、貸付けを受けることが適当であると都道府県知事が認定したものを公庫に通知する。そして、公庫は貸付適格認定通知書の内容を点検するとともに、借入申込書の内容を審査して貸付けを行うこととなっている。
 そして、借入者は、いずれも、本件農地の取得が貸付けの要件を満たしているとして知事の貸付適格認定を受け、公庫の貸付けを受けていた。
 しかし、実際は、貸付適格認定申請書及び借入申込書の内容は事実と相違したものであり、本件農地の取得はいずれも次のとおり貸付けの要件を満たしていなかった。

(ア) 借入者は会社に勤務していたり商店を経営していたりしていて主として農業に従事してはいないものであった。

(イ) 借入者の農地取得後の経営面積が基準面積以下であった。

(ウ) 住居及び生計を一にする親子間の売買により農地を取得するものであった。

 したがって、本件事業は貸付けの対象にならない。
 なお、本件の不当貸付金残高19件167,383,151円については、平成2年4月及び9月に繰上償還の措置が執られ、うち2件16,620,336円については同年10月末までに繰上償還された。

(総合施設資金)
(179) 東京支店
(千葉県信用農業協同組合連合会)
農業者
(千葉県香取郡大栄町)
畜舎の新築等

元.3
(年4.2%)

206,700 184,600 33,570 低額実施
 この貸付けは、育成豚舎2棟(777.6m2 )、分娩豚舎2棟(993.6m2 )等の新築及び繁殖豚620頭の購入に必要な資金206,700,000円の一部として、184,600,000円を貸し付けたものである。借入者は、豚舎等の新築工事の内容を一部変更して、この事業を207,054,000円で実施したとしていたが、この額は契約額を水増しするなどしたもので、実際は167,810,645円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると151,029,580円となるので、本件貸付金額との差額33,570,420円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成2年9月までに繰上償還された。
(180) 新潟支店
(新潟県信用農業協同組合連合会)
農業者
(新潟県南魚沼郡塩沢町)
野菜栽培施設の新築 63.3
(年4.05%)
32,690 28,600 5,005 低額実施

 この貸付けは、カイワレ大根栽培用発芽棟1棟(658m2 )の新築に必要な資金32,690,880円の一部として、28,600,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、この額は本体工事等の契約額を水増しするなどしたもので、実際は26,216,364円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると23,594,727円となるので、本件貸付金額との差額5,005,273円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成2年6月に繰上償還された。

(181) 高松支店
(高知県信用農業協同組合連合会)
農業者
(中村市)
鶏舎等の新築及び雛(ひな)の購入

62.10
(年4.05%)

69,949 62,000 6,189 低額実施

 この貸付けは、鶏舎3棟(1,496m2 )及び洗卵選別倉庫1棟(198m2 )の新築並びに雛の購入に必要な資金69,949,000円の一部として、62,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を69,942,000円で実施したとしていたが、この額は鶏舎及び洗卵選別倉庫の新築工事の契約額を水増ししたもので、実際は62,012,000円で実施していた。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると55,810,800円となるので、本件貸付金額との差額6,189,200円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成2年3月に繰上償還された。

(農林漁業構造改善事業推進資金)

(182) 熊本支店
(農林中央金庫)
漁業協同組合
(転貸先漁業者転貸先所在地熊本県芦北郡芦北町)
海面養殖用漁船の建造

元.1
(年3.5%)

20,115 15,000 8,368 低額実施及び事業の一部不実施
 この貸付けは、海面養殖用漁船1隻の建造に必要な資金20,115,000円の一部として、15,000,000円を貸し付けたものである。転借者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、このうち船体工事及びエンジン等の設置(貸付対象事業費16,515,000円)についてはその額を水増しするなどしたもので、実際は8,290,000円で実施しており、また、漁船に設置することとしていた造粒機(注) (貸付対象事業費3,600,000円)は設置していなかった。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると6,632,000円となるので、本件貸付金額との差額8,368,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高6,945,441円については、平成2年10月に繰上償還された。
 (注)  造粒機 餌(えさ)を粉砕し粒状にする機械
(農林漁業施設資金)
(183) 東京支店 農業者
(千葉県山武郡大網白里町)
鶏舎の新築等

63.11
(年4.05%)

130,270 92,000 24,167 貸付対象外

 この貸付けは、鶏舎3棟(2,438.1m2 )、鶏糞乾燥場1棟(360m2 )及び堆肥舎1棟(233m2 )の新築並びに育雛(すう)装置2棟分及び鶏糞発酵装置の購入に必要な資金130,270,000円の一部として、92,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、育雛装置(貸付対象事業費50,000,000円)及び鶏糞発酵装置(同4,900,000円)をリース契約により借り受けていた。これらリース契約により借り受けている施設は貸付対象にならないので、貸付対象となる事業費は75,370,000円となる。
 したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると67,833,000円となるので、本件貸付金額との差額24,167,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成2年2月に繰上償還された。

(184) 新潟支店
(株式会社北越銀行)
農業者
(新潟県南魚沼郡六日町)
畜舎の新築等

63.8
(年4.05%)

17,500 14,000 3,373 低額実施
 この貸付けは、猪豚舎1棟(2階建延べ325.56m2 )の新築及び冷凍庫の購入に必要な資金17,500,000円の一部として、14,000,000円を貸し付けたものである。借入者は、この事業を貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、猪豚舎の新築工事を細分して多数の業者に請け負わせ自らその施工管理を行うなどして、これより低額な13,283,100円で実施していた。
  したがって、この事業についての適正な貸付金額を計算すると10,626,480円となるので、本件貸付金額との差額3,373,520円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、平成2年7月に繰上償還された。
(178)-(184) の計 696,872 570,970 255,443