科目 | (款)回収金(項)回収金 (款)雑収入(項)雑収入 |
部局等の名称 | 中小企業信用保険公庫 |
回収金の公庫納付の根拠 | 機械類信用保険法(昭和36年法律第156号) |
回収金に係る公庫納付金 | リース契約等による取引から生じた損害額について、公庫から保険金の支払を受けた被保険者が損害額を回収したときに、公庫に納付することとなっている納付金 |
保険金の支払を受けたリース業等を営む会社 | 12会社 |
支払保険金額の合計 | 218,342千円 |
報告漏れとなっていた回収金額の合計 | 36,765千円 |
上記の回収金額に係る公庫への納付金額 | 16,941千円 |
中小企業信用保険公庫が保険者となって実施している機械類信用保険では、被保険者であるリース業等を営む会社が、保険金の支払を受けた後に損害額を回収したときには、それを公庫に報告したうえ、そのうちの所定額を公庫に納付することとなっている。この公庫に納付された回収金(公庫納付金)は、保険料とともに、保険金の支払資金に充てられており、公庫納付金の回収は保険事業の運営にとって不可欠なものとなっている。
本院が、保険金の支払を受けた会社における回収金の回収状況等について調査したところ、12会社において、支払保険金に係る回収金36,765千円が回収報告漏れとなっており、これに係る公庫納付金16,941千円が公庫に納付されていない事態が見受けられた。
一方、公庫においても、毎年、会社に対する実地調査を行って回収報告漏れが多数生じている事実を把握しながら、その発生原因を分析し、これに対する抜本的な対策を講じていなかった。
そこで、本院で回収報告漏れが生じている原因を調査したところ、主として次のことによると認められた。
(ア) 会社において回収金に係る一連の処理状況を適切に把握するために必要な事故債権管理台帳等が整備されていないのに、これを整備させるための措置を執っていないこと
(イ) 公庫の実地調査を補完するため、会社に対し回収金の回収状況を調査させ、その結果を報告させる措置を講ずる要があるのに、これを行っていないこと
(ウ) 保険金の支払後、回収の見込みのあるものを重点的に管理できるような体制が執られていないこと
中小企業信用保険公庫において、事故債権管理台帳等を整備するよう会社を指導したり、回収金の回収状況を会社から定期的に書面で報告させたり、回収の見込みのあるものを重点的に管理できる方法を検討したりなどして、回収金に係る公庫納付金の確保に努め、本保険事業の適正な運営を図る要があると認められた。
上記のように認められたので、会計検査院法第34条の規定により、平成2年12月5日に中小企業信用保険公庫総裁に対して是正改善の処置を要求した。
機械類信用保険の回収金の公庫納付について
(平成2年12月5日付け 中小企業信用保険公庫総裁あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
1 機械類信用保険の概要
(事業の目的及び概要)
貴公庫では、機械類信用保険法(昭和36年法律第156号)に基づき、中小企業の設備の近代化及び経営管理の合理化並びに機械工業、ソフトウェア業の振興に資することを目的として、機械類信用保険事業を、昭和59年10月、国から承継し運営している。
この保険事業は、保険者である貴公庫が、機械類(プログラムを含む。)に係るリース契約、割賦販売契約及び購入資金借入保証契約(ローン保証販売契約)による取引につき、機械類のリース業者、製造業者又は販売業者(以下「会社」という。)を被保険者として、信用保険を行うものである。そして、貴公庫は、当該取引における不払等を原因として被保険者が受けた損害を、一定の限度において、てん補することとなっている。
59年度下期から平成元年度までの事業実績の概要は、次表のとおりとなっている。
契約種別
\
事項
|
リース | 割賦・ローン | 計 |
被保険者数 | 1,429 | 2,626 | 4,055 |
保険関係成立件数 | 1,493,322 | 75,411 | 1,568,733 |
保険料 | 29,086,117 | 4,530,611 | 33,616,728 |
支払保険金 | 14,253件 25,913,219 |
1,878件 4,789,518 |
16,131件 30,702,738 |
公庫納付金 | 4,237,915 | 1,761,693 | 5,999,608 |
(保険関係と保険金の支払)
この保険の保険契約について、リース契約を例にとると、その保険関係及び保険金の支払は、次のとおりとなっている。
(ア) 保険契約者となるリース業者は、通常、自己を被保険者として、保険対象となる機械類の区分ごとに、あらかじめ事業年度ごとに機械類信用保険の包括保険契約を、保険者である貴公庫と締結する。
(イ) 被保険者が、保険対象となる機械類について所定の要件を満たした個別のリース契約を締結すると、貴公庫との間に自動的に保険関係が成立し、保険契約者は、その旨を貴公庫に書面で通知し、貴公庫が算定した保険料を納付する。
(ウ) 機械類の使用者が、リース料を支払わない事態(以下「保険事故」という。)が生じたときは、貴公庫は被保険者からの請求に基づいて、その不払額から、保険事故発生から請求までの間に回収した金額等を控除した金額に100分の50を乗じて得た金額を、損害をてん補する保険金として支払う。
(損害額の回収と公庫への納付)
この保険においては、貴公庫から保険金の支払を受けた被保険者は、その後、不払等の損害額の回収に努めることとなっている。保険金の請求後に、機械類を売却するなどして回収した金額(以下「回収金」という。)があるときは、被保険者は、所定の期日(回収した日の翌日から30日以内)までにその旨を貴公庫に書面で報告し、回収金からこの回収に要した費用等を控除した額の2分の1の金額(てん補率100分の50の場合)を公庫に納付しなければならないこととなっている。
(保険事業の運営と公庫納付金)
公庫に納付された回収金(以下「公庫納付金」という。)は、保険料とともに本保険事業の保険金の支払資金に充てられており、公庫納付金の回収は、本保険事業の運営にとって不可欠なものである。そして、59年度下期から元年度までの業務実績でみると、支払保険金に対する公庫納付金の割合は約20%となっている。
この公庫納付金については、回収金があったにもかかわらずこれを報告しないまま公庫納付金を納付しない事態があったときは、公庫納付金について、被保険者が回収した日の翌日から報告書を提出した日までの期間(以下「過怠日数」という。)につき年6%(180日を超える期間については年10.95%)の率を乗じて算出した金額を、過怠金として課せられることとなっている。
2 本院の検査結果
(調査の対象)
本院は、本年中に、貴公庫が、会社との保険契約に基づき、60年度から元年度までの間に保険金を支払った293会社中25会社に対する保険金5,775件、9,470,560千円のうち、1,008件、5,596,705千円を対象にして、会社における回収状況等について調査を行った。
(調査の結果)
調査の結果、次表のとおり、保険金の支払を受けた25会社のうち12会社において、回収報告漏れとなっているものが148件あり、これらに係る公庫納付金の合計額は16,941千円となっていた。
支払保険金 (A) |
本院の調査前に会社が報告した回収金等 | 未回収残高 (A)−(B) |
本院の調査結果 | ||
回収金 | 左のうち公庫納付金(B) | 回収報告漏れの回収金 | 左のうち公庫納付金 | ||
218,342 | 342件 77,246 |
32,817 | 185,524 | 148件 36,765 |
16,941 |
そして、上記の148件の回収金に係る過怠日数についてみると、過怠日数が180日を超えていて著しく報告が遅延していると認められる事態が、10会社において、81件(回収金計17,410千円、公庫納付金計7,895千円)あった。このうち、過怠日数が1年を超えているものは、9会社において、43件(同9,026千円、同4,151千円)である。
また、貴公庫では、毎年、会社に対して回収金の回収状況等について実地調査を行っている。本院において、貴公庫が63年度及び元年度に実施した実地調査の結果についてみると、回収報告漏れとなっている総数は、449件(これらに係る支払保険金計1,133,680千円、回収金計153,165千円、公庫納付金計62,123千円)と多数に上っていた。このような事態に対して、貴公庫では、回収報告漏れへの対応は個別の納付処理をさせている状況に留まっていて、原因を分析し、回収報告漏れに対する抜本的な対策を講じていなかった。
(是正改善を要する事態)
上記のとおり、回収報告漏れが多数生じ、多額の公庫納付金が納付されていないのに、貴公庫において、これに対する対策を講じていないことは適正な事業運営とは認められない。また、本保険の保険金が保険料と公庫納付金とで構成されていて、公庫納付金を適切に納付させることが事業の運営に不可欠であることにかんがみ、早急に是正改善を図る必要があると認められる。
(発生原因)
このように回収報告漏れが多数発生している原因についてみると、それぞれの会社において、〔1〕 回収金の納付についての重要性の認識が十分でないこと、〔2〕 回収金の取扱いについての内部の事務処理体制が十分でないことなどにもよるが、貴公庫において、次のように適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 会社において、回収金に係る一連の処理状況を適切に把握するために必要な事故債権管理台帳等が整備されていないのに、これを整備させるための措置を執っていない。
(イ) 実地調査を補完するため、会社に対し回収金の回収状況を調査させ、その結果を報告させる措置を講ずる要があるのに、これを行っていない。
(ウ) 保険金の支払後、回収の見込みがあるものを重点的に管理できるような債権管理の体制が執られていない。
(エ) 過怠金制度が、回収報告漏れの防止策として十分機能していないと認められるのに、これに対する改善策を講じていない。
(オ) 公庫納付金の適切な納付が本保険事業の運営にとって重要であることを、会社に対して周知徹底していない。
3 本院が要求する是正改善の処置
本保険事業は、リース取引等の現状からみて、今後もその規模が拡大していくことが 予想されることにかんがみ、貴公庫において次の処置を執ることによって、回収金に係る公庫納付金の確保に努め、本保険事業の適正な運営を図る要があると認められる。
(ア) 会社に対し、事故債権管理が適切に行えるように事故債権管理台帳等を整備することを指導する。
(イ) 従来の回収の都度の報告のほかに、定期的に会社に対し回収状況について見直しをさせ、その結果を書面で報告させるシステムを導入する。
(ウ) 回収の見込みのあるものを重点的に管理できる方法を検討し、管理、回収事務をより効果的に行う。
(エ) 過怠金に関する率を見直し、現行の過怠金制度を強化する。
(オ) 制度説明会や実地調査の機会を捉え、会社に対し、本保険事業における公庫納付金の重要性をより一層認識させるとともに、事務処理体制の整備を指導する。