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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

橋りょうを工事用道路として使用する場合の橋りょう床版上の舗装の設計を仮舗装でなく、当初から本舗装で行うよう改善させたもの


橋りょうを工事用道路として使用する場合の橋りょう床版上の舗装の設計を仮舗装でなく、当初から本舗装で行うよう改善させたもの

科目 (款)高速道路建設費 (項)建設工事費
(款)一般有料道路建設費 (項)建設工事費
部局等の名称 札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡各建設局
工事名 道央自動車道深川中舗装工事ほか32工事
工事の概要 高速道路等建設工事の一環として、舗装等を施工する工事
工事費 60,181,302,044円
請負人 熊谷道路株式会社・地崎道路株式会社道央自動車道深川中舗装工事共同企業体ほか32共同企業体
契約 昭和63年3月〜平成元年12月 指名競争契約
設計過大による不経済額 7500万円

<検査の結果>

 上記の各工事において、舗装工事区間にある橋りょうを工事用道路として使用する場合、橋りょう床版上に仮舗装し、その後本舗装を施工する設計により舗装に係る工事費(総額4億0987万余円)を積算したため、その工事費が約7500万円不経済となっていた。
 このような事態が生じていたのは、工事用道路として使用する場合の橋りょう床版上の舗装の取扱いについて明確な基準がなかったことなどによるもので、橋りょう床版上の舗装は仮舗装でなく、当初から本舗装を施工する設計によることとして工事費の節減を図る要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本道路公団では、平成2年10月、舗装工事区間にある橋りょうを工事用道路として使用する場合の橋りょう床版上の舗装については、原則として当初から本舗装を施工する設計により積算することとし、その旨を工事用道路の費用を算出するための取扱方針を定めている積算の基準に明記した。そして、同年11月以降契約を締結する工事からこれを適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施している。このうち舗装工事を、平成元事業年度に、札幌建設局ほか5建設局(注) で33工事(工事費総額601億8130万余円)施行している。この舗装工事は、別途契約した土木工事で築造した路床上及び橋りょうのコンクリート床版上(以下「橋面」という。)に、アスファルト混合物を敷設するなどするものである。
 各建設局では、これらの工事において舗装工事区間にある橋りょうを工事用道路として使用する場合の橋面の舗装の設計を次のとおりとしていた。

(ア) 工事用車両の通過に伴う荷重や衝撃により、コンクリート床版等に損傷が生じるおそれがあることなどから、仮舗装として、橋面に舗装厚3cmから5cm、舗装幅員4m又は6mでアスファルト混合物を敷設すること

(イ) 橋りょうを工事用道路として使用した後には仮舗装を取り壊し、改めて本舗装として、舗装厚7.5cm、舗装幅員6.7mから15.6mでアスファルト混合物を敷設すること

 そして、各建設局では、上記橋面の舗装に係る工事費を、公団が定めた「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)等に基づき、次のとおり算定し、33工事で総額4億0987万余円と算定していた。

(ア) 仮舗装は、市中のアスファルトプラント(以下「定置プラント」という。)で生産されたアスファルト混合物を購入して施工することとし、舗装費のほか取壊し運搬処分費を含め工事費を1億2361万余円と算定した。

(イ) 本舗装は、現場条件などから、3工事について定置プラントで生産されたアスファルト混合物を購入して施工することとし、残りの30工事についてはこれより割安となる舗装工事現場に仮設するアスファルトプラント(以下「仮設プラント」という。)で生産されたアスファルト混合物を用いて施工することとし、工事費を2億8625万余円と算定した。

2 検査の結果

 (仮舗装を設計した理由)

 公団では、橋面に仮舗装を施工する設計としていた理由を次のとおりとしていた。

(ア) 仮舗装の場合は本舗装に比較して施工面積、施工数量が少ないことなどから、橋面を工事用道路として早期に使用でき効率的な施工ができる。しかし、当初から本舗装を施工すると、仮舗装より施工日数が増加するため工事用道路として使用できる時期が遅れ、全体工期に影響を及ぼすことも考えられる。

(イ) 当初から本舗装した場合は、工事用車両の通過に伴う舗装面の損耗などのおそれがある。

 (本院が仮舗装の設計を不要とした理由)

 しかし、公団が施行していた33工事における橋面の舗装の実態について調査したところ、上記の理由は次のことから適切でなく、当初から本舗装を施工する設計とすれば足りると認められた。

(ア) 当初から橋面を本舗装とする場合でも、大部分の橋りょうにおいては、工事用道路として使用開始する時期に合わせた施工が可能であり、また、使用開始の時期に遅れる場合でもその期間は極めて短く、その間は、代わりに既存の工事用進入路等を利用することが可能であり、全体工期に影響はない。

(イ) 橋面を工事用道路として使用する期間は、1箇月から13箇月程度で、その間における工事用車両の通過交通量の最も多い橋りょうでも、当該橋りょうが設置される高速道路における供用初年度の1日当たり計画交通量(大型車)の10日分程度であることなどから、供用後に支障となるような舗装面の損耗のおそれはない。

 (不経済になっていた工事費)

 いま、橋面の舗装について、仮舗装でなく、当初から本舗装を施工する設計とすれば、前記の仮舗装に係る工事費は不要となる。そして、本舗装において、施工工程上、割安な仮設プラントを利用できないために、定置プラントで生産されたアスファルト混合物を購入して施工することにより工事費が増加することを考慮しても、前記の工事費4億0987万余円は約7500万円節減できたと認められた。

3 当局が購じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、2年10月、舗装工事において舗装工事区間にある橋りょうを工事用道路として使用する場合における橋面の舗装については、原則として本舗装を施工する設計により積算することとし、その旨を工事用道路の費用を算出するための取扱方針を定めている積算要領に明記した。そして、同年11月以降契約を締結する工事からこれを適用することとする処置を講じた。

 (注)  札幌建設局ほか5建設局 札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡各建設局