科目 | (建設仮勘定) | (款)磯子火力発電所 | (項)機械装置 |
(汽力発電費) | (款)磯子火力発電所 | (項)修繕費 | |
(項)固定資産除却費 | |||
(款)高砂火力発電所 | (項)修繕費 | ||
(款)竹原火力発電所 | (項)修繕費 | ||
(款)松島火力発電所 | (項)修繕費 | ||
(款)石川石炭火力発電所 | (項)修繕費 | ||
(款)磯子1号排煙脱硫口 | (項)修繕費 | ||
(項)固定資産除却費 | |||
(款)高砂1号排煙脱硫口 | (項)修繕費 | ||
(款)竹原1号排煙脱硫口 | (項)修繕費 |
部局等の名称 | 本店、関東、関西、中国、九州各支社、磯子、高砂、松島、石川石炭各火力発電所 |
工事名 | 磯子火力発電所2号機平成元年度定期点検工事ほか22工事 |
工事の概要 | 火力発電所の発電設備の定期点検、改良、更新又は補修を行う工事 |
工事費 | 3,078,283,530円 |
請負人 | 開発電気株式会社 |
契約 | 平成元年1月〜2年6月 特命見積合せ契約 |
過大積算額 | 4080万円 |
上記の各工事において、現場従業員に係る人件費等の積算(積算額1億7997万余円)が適切でなかったため、積算額が約4080万円過大になっていた。
このように積算額が過大となっているのは、同一の請負人が同一の工事現場でそれぞれの工事を並行して施工していることなどから、定期点検工事における現場代理人が改良等工事の現場代理人を兼ねるなどしているのに、積算の基準がその実態を反映させたものとなっていなかったことなどによると認められた。したがって、積算の基準を整備し、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。
本院の指摘に基づき、電源開発株式会社では、平成2年11月に施工の実態に即した積算となるよう積算の基準を整備して、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
1 工事の概要
(発電設備の定期点検等の工事)
電源開発株式会社では、磯子火力発電所ほか4火力発電所(注1) に設置しているタービン、ボイラー等の発電設備の機能を維持するために、次の3種類の工事を毎年多数実施している。
〔1〕 火力発電所のタービン、ボイラー等の発電設備の点検を行う定期点検工事
〔2〕 定期点検工事と併せて、発電設備の機器を改良したり、更新したりする工事(以下「改良等工事」という。)
〔3〕 定期点検工事等で発見された不良箇所を、定期点検工事と併せて、補修する工事(以下「補修工事」という。)
そして、改良等工事及び補修工事については、同一の請負人が同一の工事現場でそれぞれの工事を定期点検工事と並行して施工している。
(現場従業員に係る経費の積算方法)
電源開発株式会社では、これらの工事に係る予定価格の積算を、本店が制定した「火力部請負工事費積算要領」及び「火力部請負工事費積算資料」(以下「積算要領等」という。)に基づいて行うこととしている。これによると、請負工事費は直接工事費に仮設備費を加える純工事費と、現場経費に一般管理費を加える間接費から構成されており、請負工事費の額が2000万円を超える場合は、現場経費及び一般管理費の算定は、それぞれ内訳となる項目の費用を積み上げる方法で行うこととしている。
このうち現場経費は工事現場を管理するために共通的に必要とされる諸費用であり、現場従業員の人件費、福利厚生費、法定厚生費(以下「人件費等」という。)のほか、租税公課、損害保険料、現場事務所の光熱水料等から構成されている。この現場経費の人件費等は、工事を施工するために間接的に必要とされる現場従業員、すなわち現場代理人(注2)
、主任技術者(注3)
、統括安全衛生責任者(注4)
、元方安全衛生管理者(注5)
、安全衛生責任者(注6)
及びこれらの補助者に係る費用であって、次のように算定することになっている。
(ア) 現場従業員の職種等の編成を定期点検工事、改良等工事、補修工事ごとに「間接人員標準適用職級表」で定めており、これに基づき、各工事の現場従業員の職種等の編成を求める。
(イ) 現場従業員の各職種ごとに所要人員を算定し、これに所定の労務単価を乗ずるなどして現場従業員の人件費を算出する。
(ウ) (イ)で算出した人件費に所定の率を乗じて福利厚生費、法定厚生費を算出する。
2 検査の結果
(調査の対象)
積算要領等では、請負工事費が2000万円を超える工事の場合、各工事ごとに現場従業員の職種の編成を定めているが、同一の請負人により同一の工事現場で並行して実施されている複数の工事においては、現場従業員の人件費等の経費を節約する余地があり得ることから、施工の実態を把握するために、定期点検工事等を調査の対象とした。平成元年度中に実施されている工事でこれに該当するものは、本店ほか8支社等(注7) が発注している23工事(工事費総額30億7828万余円)であり、その内訳は定期点検工事9工事、改良等工事4工事及び補修工事10工事となっていた。
(当局の積算)
上記の23工事の現場従業員の人件費等の積算に当たっては、積算要領等に基づき、現場従業員の職種の編成を次のとおりとしていた。
〔1〕 定期点検工事においては、それぞれ、現場代理人1名(統括安全衛生責任者を兼ねる。)、主任技術者1名、元方安全衛生管理者1名、安全衛生責任者1名及びこれらの補助者7名から10名計11名から14名
〔2〕 改良等工事においては、それぞれ、現場代理人1名、主任技術者1名、安全衛生責任者1名又はこれらに補助者1名を含め計3名から4名
〔3〕 補修工事においては、それぞれ、主任技術者1名から3名、安全衛生責任者1名又はこれらに補助者1名を含め計2名から5名
そして、この職種の編成に基づき、上記23工事の現場従業員の人件費等を合計1億7997万余円と積算していた。
(定期点検等の工事の施工の実態)
上記の各工事における現場従業員の職種の編成の実態について調査したところ、積算要領等に基づく上記の積算と、次のように、かい離していた。
(ア) いずれの定期点検工事においても、安全衛生責任者は現場代理人又は元方安全衛生管理者が兼ねていた。
(イ) いずれの改良等工事及び補修工事においても、現場従業員は、次のとおり、同時期に施工されていた定期点検工事における現場従業員が兼ねていた。
〔1〕 改良等工事の現場代理人は、定期点検工事の現場代理人
〔2〕 改良等工事及び補修工事の主任技術者は、定期点検工事における主任技術者又は主任技術者の補助者
〔3〕 改良等工事及び補修工事の安全衛生責任者は、定期点検工事における現場代理人又は元方安全衛生管理者
これらの工事は、同一の工事現場で並行して施工されていることなどから、このように兼務しても業務の遂行上支障がない状況であった。
また、法令も次のとおり兼務を妨げないものとなっている。
(ア) 上記の(ア)については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)では、現場代理人及び元方安全衛生管理者と安全衛生責任者との兼務を禁止していない。
(イ) 上記の(イ)については、建設業法(昭和24年法律第100号)又は労働安全衛生法では、主任技術者等を「工事現場ごと」又は「事業場ごと」に選任することとしていて、契約ごととしていない。
(適切な積算方法)
したがって、次のとおり積算するのが適切であると認められた。
(ア) 定期点検工事の積算に当たっては、安全衛生責任者としては、現場代理人又は元方安全衛生管理者が兼ねることとする。
(イ) 定期点検工事と請負人及び工事現場が同一で並行して施工する改良等工事又は補修工事の積算に当たっては、現場代理人等としては、定期点検工事の現場代理人等が兼ねることとする。
いま、定期点検工事については、安全衛生責任者の所要人員相当分を控除し、改良等工事又は補修工事については、定期点検工事で計上している現場代理人等の所要人員相当分を控除して、前記の23工事に係る現場従業員の人件費等を積算すると、総額1億3914万余円となる。これによれば、前記の積算額と比べ約4080万円低減できると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、電源開発株式会社では、2年11月に、定期点検工事等に係る現場従業員の人件費等について施工の実態に即して積算することができるよう積算要領等を改正して、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) | 磯子火力発電所ほか4火力発電所 磯子、高砂、竹原、松島、石川石炭各火力発電所 |
(注2) | 現場代理人 工事現場に常駐し、工事に関するすべての事項を自己の責任において処理し、請負人の職務を代行する者 |
(注3) | 主任技術者 工事現場における工事施工の技術上の管理をつかさどる者 |
(注4) | 統括安全衛生責任者 一の工事現場において、複数の請負人が混在して作業を行うことから生ずる労働災害を防止するために、発注者が指名する元請負人が選任する安全衛生管理をつかさどる者 |
(注5) | 元方安全衛生管理者 統括安全衛生責任者を補佐する者 |
(注6) | 安全衛生責任者 労働安全衛生法上の安全衛生推進者に該当し、請負人が使用する労働者に係る労働災害を防止するために、請負人が選任する安全衛生管理をつかさどる者 |
(注7) | 本店ほか8支社等 本店、関東、関西、中国、九州各支社、磯子、高砂、松島、石川石炭各火力発電所 |