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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

交換機遠隔保守システムの機器構成を経済的、効率的なものとするよう改善させたもの


(1) 交換機遠隔保守システムの機器構成を経済的、効率的なものとするよう改善させたもの

科目 設備投資勘定
部局等の名称 中央ネットワーク支社ほか8ネットワーク支社等、九州地域事業本部及び関西地域事業本部京都支社
購入機器 ディジタル交換機及び電子交換機の遠隔監視制御等を行う交換機遠隔保守システムを構成するD70号A監視試験情報転送装置40台、D70号C監視試験情報転送装置39台、D70号B監視試験情報転送装置6台、D70号E監視試験情報転送装置3台等の機器
契約の相手方 日本電気株式会社ほか3会社
契約 昭和60年3月 基本契約
昭和61年5月〜平成元年8月 個別契約
購入費 871,596,912円
平成元年度において節減できた購入費 9240万円 上記の部局の購入において節減できた分
1660万円
他の部局への転用により節減できた分
7580万円
9240万円

<検査の結果>

 上記の部局において、ディジタル交換機及び電子交換機の遠隔監視制御等を行うために設置した交換機遠隔保守システムの設計等を適切に行ったとすれば、交換機遠隔保守システムを構成する機器の購入に係る経費を約9240万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、交換機遠隔保守システムのプログラムの機能を活用した機器構成とする設計を行ったり、転用可能な機器の情報の周知徹底を図ったりする要があるのに、本社が各ネットワーク支社等及び各地域事業本部に対して、具体的な設計方法等を示していなかったことなどによると認められた。したがって、この具体的な方法を示すなどして経済的、効率的な設計等を行う要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、次のとおり、交換機遠隔保守システムの機器構成を経済的、効率的なものとする処置を講じた。

(ア) 平成2年11月に、各ネットワーク支社等及び各地域事業本部に対して、交換機遠隔保守システムのプログラムの機能を活用した機器構成とする設計を行うこと、転用可能な機器の情報の周知徹底を図ることなどを指示する文書を発した。

(イ) 上記の購入機器のうち転用可能な機器について3年10月までに他のネットワークセンタ、支店等にすべて転用を図ることとした。

1 交換機遠隔保守システムの概要

 (交換機のディジタル化計画)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、電話などの多数の通信回線を相互に接続するために、交換機をネットワークセンタ(注1) 、支店(注2) 等(以下両者を併せて「センタ等」という。)に設置している。この交換機には、アナログ信号で交換するクロスバ交換機や電子交換機と、ディジタル信号で交換するディジタル交換機がある。そして、NTTでは、ISDNサービス(注3) を始めとする各種サービスの高度化等を図るため、中長期ディジタル化計画を推進している。この計画によれば平成7年度末までにクロスバ交換機(元年度末現在6,782ユニット)を、また、11年度末までに電子交換機(同936ユニット)を、すべてディジタル交換機(同1,330ユニット)に更改することとしている。

 (保守システムの導入状況)

 NTTでは、これらのうち、ディジタル交換機及び電子交換機の保守運用業務を無人化して一元的に統合して行うために、その運用状態を遠隔から常時監視し、必要に応じて制御等を行う交換機遠隔保守システム(以下「保守システム」という。)を昭和59年度から導入している。そして、平成元年度において保守システムを構成する機器を5,257,463,110円で購入しており、同年度末においては、保守システムによって監視制御されている交換機は、ユニット単位でディジタル交換機及び電子交換機の約6割となっている。今後、NTTでは、クロスバ交換機のディジタル化及びISDNサービスの進展等に伴い、機能をより高度化した保守システムを順次導入することとしている。

 (保守システムの構成機器)

 この保守システムは、親局用監視試験情報転送装置(注4) (以下「親局用装置」という。)、子局用監視試験情報転送装置(注5) (以下「子局用装置」という。)、ワークステーション、監視警報盤等から構成されている。そして、これらの機器の設置箇所と機能は次のとおりである。

(ア) 親局用装置は、保守担当局(センタ等のうち交換機の保守運用を担当する社員が常駐している局所)に設置され、子局用装置からの監視情報を受信したり、子局用装置へ制御情報を送信したりするためのものである。

(イ) 子局用装置は、保守担当局及び無人局(センタ等のうち保守担当者が常駐していない局所)に設置され、交換機から監視情報を受信したり、交換機へ制御情報を送信したりするためのものである。

(ウ) ワークステーションは、主として保守担当局に設置され、保守担当者が子局用装置又は親局用装置からの監視情報を出力したり、制御情報を入力したりするためのものである。

(エ) 監視警報盤は、保守担当局に設置され、親局用装置から出力される各種故障警報を表示するためのものである。

2 検査の結果

 (調査の観点)

 保守システムは、子局用装置及び親局用装置に記憶されたプログラムにより交換機の監視制御を行っている。このプログラムの機能についてみると、当初は1台の子局用装置で1ユニットの交換機を監視制御するだけであったが、昭和63年3月にプログラムの機能向上が図られた。この結果、機能向上が図られたプログラム(以下「新プログラム」という。)を使用し、子局用装置に必要な部品の増設を行うことにより、1台の子局用装置で最大3ユニットの同機種交換機(ディジタル交換機又は電子交換機のどちらか1機種)の監視制御が可能となった。
 そして、ネットワーク事業本部では、63年11月までに新プログラムを使用して実際に複数の交換機の監視制御が可能かどうかの機能確認を中央ネットワーク支社新宿ネットワークセンタ等で実施し完了している。したがって、機能確認の周知徹底に1箇月程度の期間を要するとしても、平成元年1月以降は、新プログラムの機能を活用した設計及び機器の購入要求を行うことができる状況になっていた。
 そこで、保守システムの機器構成が新プログラムの機能を活用した経済的、効率的なものとなっているか、また、機器構成の見直しを行うことなどにより生じた不要な機器の転用が図られているかについて調査することとした。

 (調査の対象)

 このような観点から、中央ネットワーク支社ほか10ネットワーク支社等(注6) が本社に購入要求し、本社が昭和61年5月から平成元年8月までに契約し、東京中央ネットワークセンタほか15センタ等に設置した子局用装置79台及び親局用装置9台等(購入費871,596,912円)を対象として、交換機と子局用装置及び親局用装置との接続状況等について調査した。

 (不適切な事態)

 調査の結果、次のとおり、適切でないと認められる事態が見受けられた。

〔1〕 元年1月以降に子局用装置を購入要求(実際の購入は元年度)し設置しているが、新プログラムの機能を活用し、既設の子局用装置に複数ユニットのディジタル交換機を接続する設計を行えば、新たに子局用装置を購入する要がなかったと認められるもの

大手町ネットワークセンタほか3センタ(注7) で7台

〔2〕 元年1月以降に既存の保守システムの機器構成を見直し、新プログラムの機能を活用して1台の子局用装置に複数ユニットのディジタル交換機を接続する機器構成とすれば、不要となる子局用装置を、元年度に別途子局用装置を購入している他のセンタ等に転用できたと認められるもの

群馬ネットワークセンタほか12センタ(注8) で15台

〔3〕 保守業務の統合により保守担当局から無人局に変更されたことに伴い、それまで遠隔監視制御していた交換機は隣接した保守担当局が遠隔監視制御することとなったので、設置しておく必要がなくなった親局用装置等を、元年度に別途親局用装置等を購入している他のセンタ等に転用できたと認められるもの

博多支店福岡東営業所ほか1営業所(注9) で2台

 (節減できた購入費)

 いま、新プログラムの機能を活用した機器構成とする設計により購入要求を行ったり、既存の保守システムの機器構成を見直すなどして不要となる機器の他のセンタ等への転用を図ったりすれば、子局用装置22台(1台当たり約840万円)及び親局用装置2台(1台当たり約1250万円)等の購入の要はなくなる。したがって、元年度におけるこれらに係る購入費229,849,010円から別途必要となる子局用装置の増設部品等に係る経費137,352,688円を控除しても機器の購入に係る経費を約9240万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(ア) 新プログラムの機能を活用した経済的、効率的な設計方法を各ネットワーク支社等に具体的に示していなかったこと

(イ) 既存の保守システムについても新プログラムの機能を活用した経済的、効率的な機器構成となっているかを見直すよう各ネットワーク支社等に対して的確な指示を行っていなかったこと

(ウ) 各ネットワーク支社等及び各地域事業本部で不要となる子局用装置及び親局用装置の転用に関する情報を全社的に周知させる指示が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、次のとおり、保守システムの機器構成を経済的、効率的なものとする処置を講じた。

(ア) 2年11月に、各ネットワーク支社等及び各地域事業本部に対して保守システムのプログラムの機能を活用した機器構成とする設計を行うこと、転用可能な機器の情報の周知徹底を図ることなどを指示する文書を発した。

(イ) 2年11月までに子局用装置11台及び親局用装置1台等について他のセンタ等に転用を実施し、3年10月までに残りの子局用装置11台及び親局用装置1台等についても他のセンタ等に転用を図ることとした。

(注1) ネットワークセンタ ネットワーク事業本部の事業所で、市外回線に係る通信関係の業務を取り扱う局所
(注2) 支店 地域事業本部の事業所で、市内回線に係る通信関係の業務を取り扱う局所
(注3) ISDNサービス 1本の契約者回線により、複数の相手と同時に電話、ファクシミリ等の通信が可能なサービス
(注4) 親局用監視試験情報転送装置 D70号B監視試験情報転送装置及びD70号E監視試験情報転送装置。両者は機器の高さが異なるが、機能は同じである。
(注5) 子局用監視試験情報転送装置 D70号A監視試験情報転送装置及びD70号C監視試験情報転送装置。両者は機器の高さが異なるが、機能は同じである。
(注6) 中央ネットワーク支社ほか10ネットワーク支社等 中央、関西両ネットワーク支社及び大手町、唐ケ崎、横浜、埼玉、北陸、浪速、京都各ネットワークセンタ並びに九州地域事業本部及び関西地域事業本部京都支社
(注7) 大手町ネットワークセンタほか3センタ 大手町、唐ケ崎、横浜、埼玉各ネットワークセンタ
(注8) 群馬ネットワークセンタほか12センタ 群馬、東京中央、新宿、唐ケ崎、蔵前、横浜、千葉、埼玉、東海、富山、大阪、浪速、京都各ネットワークセンタ
(注9) 博多支店福岡東営業所ほか1営業所 博多支店福岡東営業所、京都南支店伏見営業所

(参考図)

交換機遠隔保守システムの機器構成図

 (注) 無人局では、従前は1台の子局用装置で1ユニットのディジタル交換機を監視制御していたので、2台の子局用装置が必要であったが、新プログラムの機能を活用することにより、1台の子局用装置で2ユニットのディジタル交換機を監視制御できることとなった。