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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

パーソナルコンピュータ等のプリンタで使用するリボンカセットのリサイクルを行うことにより、リボンカセットの購入経費の節減を図るよう改善させたもの


(2) パーソナルコンピュータ等のプリンタで使用するリボンカセットのリサイクルを行うことにより、リボンカセットの購入経費の節減を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
購入物品 パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等のプリンタで使用するもので、カセットケースに印字用のリボンを装てんしたリボンカセット等
契約の相手方 アンリツ株式会社ほか608会社等
契約 平成元年4月〜2年3月
購入数量 190,776個(平成元年度)
購入額 353,885,722円(平成元年度)
節減できた経費 9040万円

<検査の結果>

 上記の部局において、リボンカセットを1回の使用で廃棄していたが、これについて、使用済みの印字用のリボンを新品のリボンと詰め替えることによりカセットケースを再利用するリサイクルを行うこととしていたとすれば、リボンカセットに係る経費を約9040万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、使用済みのリボンカセットは専門業者に委託してリサイクルを行うことができるのに、これについての指導が十分でなかったことなどによるもので、リサイクルを推進しリボンカセットの購入経費の節減を図る要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、次のとおり、リボンカセットの購入経費の節減を図ることとする処置を講じた。

(ア) 平成2年11月に、各地域事業本部等に対して専門業者への委託によるリボンカセットのリサイクルを推進するよう指導を行った。

(イ) 各地域事業本部等は、各事業所等に対して専門業者への委託によるリサイクルの実施について指導を行うとともに、基本契約の締結などを行った。

1 契約の概要

 (購入物品の概要)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、各事業所等にパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等を多数設置しており、これら機器に接続するプリンタでリボンカセット等のインクリボンを使用している。インクリボンは、使用を重ねることにより印字用のリボンに摩耗等が生じるので交換が必要となることから、その交換が容易にできるよう合成樹脂製のカセットケースにリボンを装てんしたリボンカセットが一般に使用されている。そして、NTTの各事業所等においては、リボンカセット等を平成元年度にアンリツ株式会社ほか608会社等から、190,776個購入しており、その購入額は353,885,722円となっている。

 (リボンカセットのリサイクル)

 リボンカセットのうちカセットケースは耐久性を有しており、価格的にもその相当部分を占めていて、これを1回の使用で使い捨てにするのは不経済であることから、近年、使用済みの印字用のリボンを新品のリボンと詰め替えることによりカセットケースを再利用するリボンカセットのリサイクルが行われている。
 このリサイクルの方法には、詰め替え用リボンを別途購入して社員が自ら詰め替える方法(以下「自社リサイクル」という。)と専門業者に委託してリボンを詰め替える方法(以下「業者リサイクル」という。)とがある。そして、自社リサイクルの場合は、詰め替え技術の習得や詰め替え作業が必要で、市販されている詰め替え用リボンの品目も限られているため、リサイクルの実施に制約がある。一方、業者リサイクルの場合は、専用の詰め替え機械を使用して容易に中身のリボンを詰め替えることができ、ほとんどのリボンの詰め替えが可能で、品質的にも問題がなく、費用も、新品のリボンカセットの購入単価に比べて相当程度割安(新品単価の平均4割程度)となっており、自社リサイクルに比べても安価となっている。

2 検査の結果

 (調査の対象)

 本件リボンカセットのうち、実際に業者リサイクルが行われており、かつ、NTTの購入数量が多量に上っている18品目のリボンカセットの元年度におけるリサイクルの実施状況について調査した。

 (調査の結果)

 上記18品目のリボンカセットの購入数量は105,662個、購入額は220,738,800円となっており、これらは、既に一部で実施している業者リサイクル又は自社リサイクルで使用するものを除き、1回の使用で廃棄していた。
 業者リサイクルの実施状況は、延べ21,334個(自社リサイクル分を合わせると延べ80,224個)となっていた。そして、本院の調査等によれば、新品のリボンカセット1個につき通常5回のリサイクルが行われていた。したがって、これは4,267個(自社リサイクル分を合わせると16,045個)の購入に係る分を再生して使用していたこととなる。そして、これを購入数量105,662個に占める割合でみると、4.0%(自社リサイクル分を合わせると15.2%)にすぎない。
 自社リサイクルは、すべての地域事業本部等で実施されており、その実施数も業者リサイクルに比べ多数に上っているものの、社員が自らリボンの詰め替え作業を行っていたり、詰め替え用リボンの品目も限られていたりなどしていることから、近年、広く実施されている業者リサイクルの方がより合理的であると認められる。そこで、上記のように業者リサイクルの実施割合が低い要因について、各地域事業本部等別に調査したところ、次のとおり、業者リサイクルが十分推進されておらず適切でないと認められた。

〔1〕 業者リサイクルの実施について指導を行っていないこともあって、管内の事業所等では全く実施していなかったり、管内の一部の事業所等においてだけ実施していたりしていたもの

東京地域事業本部ほか9地域事業本部等(注1)

〔2〕 業者リサイクルについての情報を提供していたり、業者リサイクルを実施する場合に適用する単価等について地域事業本部等が基本契約を締結したりしているものの、指導が十分でなかったため、管内の事業所等の中には全く実施していなかったり、実施していても低調となっていたりしているもの

本社資材調達部ほか4地域事業本部等(注2)

 (節減できた金額)

 いま、NTTが購入した前記18品目のリボンカセット105,662個について、リボンカセット1個につき業者リサイクルを5回実施したとすると、必要な購入数量は28,785個で足り、上記購入数量のうち76,877個の購入の要はなくなる。したがって、これにより別途必要となる業者リサイクルのための経費を控除してもリボンカセットに係る経費を約9040万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(ア) NTTの各事業所等において、リボンカセットを毎年多数購入し、相当の経費を要しているのに、その購入単価が少額であることから、経費節減について配慮が十分でなかったこと

(イ) 本社及び地域事業本部等において、業者リサイクルの実施についての各事業所等に対する指導が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、次のとおり、リボンカセットの購入経費の節減を図ることとする処置を講じた。

(ア) 2年11月に、各地域事業本部等に対して業者リサイクルを推進することを指示する文書を発した。

(イ) 各地域事業本部等は、各事業所等に対して業者リサイクルの実施について文書を発して指導を行うとともに、基本契約の締結をしていなかった地域事業本部等では基本契約の締結などを行った。

(注1) 東京地域事業本部ほか9地域事業本部等 東京、信越、東海、北陸、中国、四国、九州、東北各地域事業本部、ネットワーク事業本部、高度通信サービス事業本部
(注2) 本社資材調達部ほか4地域事業本部等 本社資材調達部、関東、関西、北海道各地域事業本部、企業通信システム事業本部