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  • 平成元年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公衆電話委託手数料を毎月回収する通話料と相殺して支払うことにより、経費の節減等を図るよう改善させたもの


(3) 公衆電話委託手数料を毎月回収する通話料と相殺して支払うことにより、経費の節減等を図るよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 関東地域事業本部
公衆電話委託手数料の支払に要する振込費用の概要 街頭用卓上形公衆電話及び店頭用公衆電話の管理を受託する者に対する公衆電話委託手数料の支払に当たり、金融機関に支払う振込費用
振込費用の合計 24,158,287円(平成元年度)
不経済になっていた振込費用 2400万円(平成元年度)

<検査の結果>

 公衆電話委託手数料の支払に当たり、定額で支払う手数料について、コンピュータを用いて毎月回収する通話料と容易に相殺して支払うことが可能であるのに、金融機関を通じて四半期ごとに口座振込により支払っていたため、平成元年度における振込費用が約2400万円不経済になっていた。
 このような事態が生じていたのは、公衆電話委託手数料の支払について経済的、効率的な配慮が十分でなかったことなどによるもので、手数料を毎月の通話料と相殺して支払うことにより、経費の節減等を図る要があると認められた。

<当局が講じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、関東地域事業本部では、2年7月に、定額で支払う手数料を同年10月分の支払から毎月の通話料と相殺して支払うこととする処置を講じた。

1 公衆電話委託手数料の支払方法の概要

 (公衆電話の管理の委託)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)の各事業所では、街頭用卓上形公衆電話及び店頭用公衆電話について、電話機の設置場所等の提供と料金の回収等の管理業務を内容とする公衆電話委託契約を、その管理を受託する者(以下「受託者」という。)と締結している。
 関東地域事業本部(以下「NTT関東」という。)管内の各事業所がこの契約を締結している電話機(硬貨を使用しないテレホンカード専用機等を除く。)は平成元年度末で10万8百余台となっており、その公衆電話委託手数料(以下「手数料」という。)の支払額は、元年度分で計35億0876万余円となっている。

 (手数料の種類と支払方法)

 NTTは、受託者に、手数料として、〔1〕 公衆電話の種類に応じて定額で支払う額(以下「定額手数料」という。)と、〔2〕 毎月の利用実績に応じて算定した額(以下「変動手数料」という。)とを支払っている。
 一方、受託者からは、公衆電話の利用者が支払った通話料(硬貨分)を、毎月1回、受託者の金融機関の口座からNTTの口座に振り替えることにより回収している。
 そして、定額手数料の支払は、毎月の通話料と相殺して支払う方法又は四半期ごとに口座振込により支払う方法のいずれかの方法で、また、変動手数料の支払は、変動手数料が毎月の通話料を常に下回ることから、毎月の通話料と相殺して行っている。

 (料金業務総合システム)

 NTTでは、昭和61、62両年度に、料金業務のオンライン化、データベース化及び他システムとの連携を図ることとして、料金業務総合システムを全国各地の料金センタ等に導入した。
 この料金業務総合システムが導入された結果、手数料と毎月の通話料とを相殺する処理は、同システムのコンピュータを用いて容易にできることとなった。これに関連して、NTTでは、59年12月に定めた「料金業務総合システム取扱局事務処理要領」等で、定額手数料も原則として毎月の通話料と相殺して支払うこととし、経費の節減及び事務の効率化を図ることとしている。

2 検査の結果

 (NTT関東の手数料の支払方法)

 NTT関東が平成元年度に支払った手数料の支払方法について本院が調査したところ、変動手数料は毎月の通話料と相殺して支払っていたが、定額手数料はすべて四半期ごとに口座振込により支払っており、これらの振込費用24,158,287円が各金融機関に支払われていた。

 (口座振込を行っていた経緯)

 NTT関東が定額手数料をすべて口座振込により支払うこととしていたのは、次のような経緯からである。

(ア) 受託者は相互の親睦等を図るため、NTTの事業所を単位として親睦団体を結成し、その会費に、NTTが受託者に支払う手数料のうち定額手数料の一部を充てることとしていた。この会費徴収を確実にするため、NTTの事業所が受託者の指定した金融機関の口座に定額手数料を振り込み、金融機関がそこから親睦団体の口座に振り替えるなどの方法が採られていた。

(イ) 昭和47年8月に、公衆電話の利用者の便益増進等を図ることを目的として、受託者を会員とする財団法人日本公衆電話会(以下「日公会」という。)が設立され、従来、親睦団体の果たしてきたNTTとの協力関係維持等の役割は日公会に引き継がれ、親睦団体は日公会に一本化されることになった。しかし、NTT関東管内においては、日公会との活動内容等に相違があるとして、日公会設立以後もなおこれら親睦団体の多くが解散することなく存在していた。

(ウ) NTT関東では、受託者の親睦団体ひいては受託者との協力関係に支障を来さないよう、引き続きこれら親睦団体の会費徴収に便宜を図る必要があると考え、その後も定額手数料の支払を口座振込によることとし、現在に至っている。

 (支払方法の改善)

 しかし、次の理由により、定額手数料は変動手数料と併せて毎月の通話料と相殺して支払うこととして、経費の節減及び事務の効率化に努めることが適切と認められる。

ア 料金業務総合システムがNTT関東の管内全域を所掌する横浜、浦和両料金事務センタに62年11月までに導入され、定額手数料についても毎月の通話料と相殺して支払うことが容易に行えるようになり、これによれば、定額手数料の振込費用は不要となる。

イ 次のような状況から親睦団体の会費徴収に便宜を図る必要はなくなってきていると認められる。

(ア) NTT本社では、各地域事業本部に対し、47年の日公会設立の経緯を踏まえ、親睦団体に係る会費徴収を含め親睦団体の運営に関与しないよう指導してきている。

(イ) 日公会の設立以後、多数存在していた親睦団体も次第に減少し現在では親睦団体の存在しない事業所も相当数見受けられるようになっている。

(ウ) 東京、関西両地域事業本部管内には、NTT関東と同じく親睦団体が存在している。しかし、それらの親睦団体は、会費徴収の便宜を受けることなく自ら会費を徴収しているが、特に支障なく運営されている。

 いま、料金業務総合システムの導入以降、定額手数料の支払を毎月の通話料との相殺により実施していたとすれば、定額手数料の支払に要する金融機関に対する振込費用は不要となり、平成元年度においては約2400万円節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、定額手数料の支払について経済的、効率的な配慮が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTT関東では、2年7月に、管内の各地域事業部及び各事業所に対して指示を行い、受託者の理解を得るなどして、同年10月分の支払から定額手数料の支払方法を毎月の通話料と相殺して支払うこととする処置を講じた。