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  • (西日本旅客鉄道株式会社)

法律の規定により日本国有鉄道清算事業団に譲渡すべき土地を他に売却して利益を得たもの


(192) 法律の規定により日本国有鉄道清算事業団に譲渡すべき土地を他に売却して利益を得たもの

科目 (款)特別利益
(款)営業外収益
(項)固定資産売却益(昭和63年度)
(項)雑収(平成元年度)
部局等の名称 西日本旅客鉄道株式会社本社
売却物件 滋賀県大津市石山寺3丁目所在の土地268.56m2
売却物件の概要 日本国有鉄道から承継した石山社員宿泊所用地の一部を国道予定地として地方公共団体に売却したもの
帳簿価額相当額 22,025,114円
売却価額 43,506,720円
売却の相手方 滋賀県
契約 昭和63年4月30日 随意契約
収納 昭和63年6月15日
不当利得額 21,171,606円

 西日本旅客鉄道株式会社は、法律の規定により、日本国有鉄道から承継した上記の土地を承継時の帳簿価額相当額で日本国有鉄道清算事業団に譲り渡すべきであったのに、地方公共団体に時価で売却していた。この結果、21,171,606円の利益を不当に得ていた。

1 土地売却の概要

 (本件土地の売却)

 本件土地は、西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)が、民営化により、昭和62年4月1日に日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)から事業の用に供するために承継した土地の一部であって、63年4月、JR西日本が滋賀県に公共事業の用に供することとして売却したものである。

 (承継した土地の売却手続)

 日本国有鉄道改革法等施行法(昭和61年法律第93号。以下「施行法」という。)第32条の規定によると、上記のように、JR西日本等の承継法人(注) が国鉄から承継した土地を承継後5年以内に事業の用に供しないこととなったときには、その旨を、日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)に通知することとされている。この通知を受けた事業団は、承継時において当該承継法人の会計帳簿に記載された価額で当該土地を譲り渡すべきことを、当該承継法人に対し請求できることになっている。
 そして、事業団の内規によると、当該土地の売却見込価額が上記会計帳簿の価額と承継法人からの買取等に要する経費との合計額(以下「買取価額」という。)を下回る場合を除き、当該承継法人に対し、当該土地の譲渡請求を行うこととされている。このため、上記の通知に当たっては、承継時の会計帳簿の価額を記した書類等を添付させることになっている。これらは、当該土地を事業団自らが売却することにより、その売却益を国鉄長期債務等の償還等の財源とし得るよう措置されているものである。

 (本件土地の売却の経緯)

 JR西日本及び事業団における本件土地の売却の経緯は次のとおりである。

(ア) 63年2月、滋賀県より、同県が施行する国道422号改良工事に伴い買収したい旨の申入れがあり、JR西日本では、検討の結果、事業の運営に特に支障がないと判断し、同年4月30日、滋賀県に本件土地268.56m2 を43,506,720円で売却した。

(イ) 上記の売却に先立つ同年4月28日、JR西日本は、施行法の規定に基づき、事業団近畿支社に、本件土地が事業の用に供しなくなった旨通知し、この際、本件土地の固定資産原簿価額(以下「帳簿価額」という。)は42,674,184円であるとしていた。

(ウ) 上記の通知を受けた事業団近畿支社は、本件土地を譲渡請求するかどうかについて検討した結果、売却見込価額が買取価額を下回ったため、JR西日本に対して、本件土地の譲渡請求を行わないこととし、63年7月、この旨回答した。

2 検査の結果

 本件土地に係るJR西日本の用地台帳及び承継時の固定資産原簿並びに本件に係る経理処理等を調査したところ、次のようになっていた。

(ア) 本件土地268.56m2 は、昭和14年度に7筆の土地が一括取得され宿泊所が建設された土地4,505.50m2 の一部であり、4,505.50m2 の承継時現在の帳簿価額は369,504,586円(m2 当たり82,011円)であった。このことから、本件土地268.56m2 の帳簿価額相当額は22,025,114円となるものと認められた。

(イ) JR西日本は、本件土地の正当な帳簿価額は22,025,114円であると事業団に通知すべきであったのに、これを大幅に上回る価額42,674,184円(m2 当たり158,900円)であると通知していた。

(ウ) JR西日本は、事業団から譲渡請求を行わない旨の回答を受けなければ売却できないのに、早期売却について強い要請があったとして、事業団へ通知した2日後その回答を待たずに滋賀県に売却した。そして、売却価額43,506,720円と上記の帳簿価額相当額22,025,114円との開差額21,481,606円の売却益を得ていた。

(エ) 事業団は、JR西日本から本件土地の帳簿価額は22,025,114円であると通知されていれば、これを滋賀県へ売却することにより相当の売却益を生ずる計算となることから、前記の内規からみて、JR西日本に対して譲渡請求を行ったと認められる。

 以上のことから、JR西日本が、施行法第32条の規定により事業団に本件土地の正当な帳簿価額を通知し、譲渡すべきであったのにこれを行わず、地方公共団体に売却したのは当を得ないと認められる。この結果、JR西日本は、上記の売却益21,481,606円から売却に要した鑑定費用310,000円を差し引いた21,171,606円の利益を不当に得ていたものと認められる。

承継法人 昭和62年4月、国鉄改革により、日本国有鉄道が行っていた事業又は業務を承継した法人。北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州各旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、新幹線鉄道保有機構、鉄道通信株式会社(平成元年5月から日本テレコム株式会社)、鉄道情報システム株式会社及び財団法人鉄道総合技術研究所