ページトップ
  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部省|
  • 不当事項|
  • 補助金

義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(11)−(20) 義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金
(項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 北海道ほか7県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 北海道ほか7県(昭和62年度2県、63年度8道県、平成元年度4県)
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 昭和62年度 88,979,605,294円
昭和63年度 480,713,659,241円
平成元年度 210,615,754,774円
780,309,019,309円
不当と認める国庫負担金交付額
253,975,532円


 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、教職員給与費等について、教職員の実数及び学級数などを基にして算定された教職員の標準定数を基礎とし、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定することとなっている。しかし、上記の8事業主体では、教職員の標準定数を過大に算定したり、国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりなどしていたため、国庫負担金253,975,532円が不当と認められる。

1 国庫負担金の概要

(義務教育費国庫負担金等の交付)

 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)等の規定に基づき、公立の義務教育諸学校(注1) に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、その実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1(昭和62年度及び63年度においては、一部の経費については3分の1、平成元年度においては、一部の経費については8分の3又は3分の1)を国が負担するため都道府県に交付されるものである。ただし、国庫負担対象額については、「義務教育費国庫負担法第2条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号。以下「限度政令」という。)等により、都道府県の財政力に応じて、その最高限度が定められている。
 この国庫負担対象額の最高限度は、次によることとなっている。

(1) 地方交付税の交付団体である都道府県について

 教職員の職種区分及び休職者等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除するなどして算定した額の合計額

〔1〕 教職員の実数と標準定数(注2) とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した額

〔2〕 住居手当、通勤手当、退職手当、期末手当、勤勉手当等については、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定した額を超過した額

〔3〕 教育委員会事務局、図書館、博物館、公民館等の学校以外の教育機関等に勤務する教職員に係る給与費等

(2) 地方交付税の不交付団体である都道府県について

 教職員給与費等の種類ごとに、限度政令で定めるところにより算定された教職員定数に毎年度別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

(注1)  義務教育諸学校 小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部

(注2)  標準定数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に定める方法により、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)、職種区分(校長教諭等、事務職員など)ごとに算定された教職員の数。この数は、校長教諭等にあっては、学級数等を基として算定されることになっている。

2 検査の結果

 検査の結果、地方交付税の交付団体である北海道ほか7県において国庫負担金253,975,532円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

〔1〕 校長教諭等に標準定数等の算定を誤っていたもの

兵庫、島根両県

〔2〕 諸手当等について、国家公務員の例に準ずるべき額の算定を誤っていたもの

北海道、福島、三重、兵庫、広島、高知各県

〔3〕 学校以外の教育機関等に勤務する教職員の給与費等を含めて算定していたもの

山梨県

 これを道県別に示すと次のとおりである。

道県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
(義務教育費国庫負担金)
(11) 北海道

63

328,758,872 157,344,590 6,495 3,247

 北海道では、勧奨を受けて退職した在職期間が24年11月の教員1人について、その在職期間の端数を切り上げて勤続期間(注) を25年として算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、国家公務員の例に準じて文部大臣が定めたところ(以下「文部大臣の定め」という。)によれば、在職期間に1年未満の端数があるときはこれを切り捨てて勤続期間を計算することとなっている。このため、上記の教員の場合勤続期間は24年となるので、勤続期間を25年として算定した退職手当により国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が6,495,994円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、157,341,342,374円となり、3,247,997円が過大に交付されていた。

(注)  勤続期間 退職手当の算定の基礎となる期間で、在職期間に基づき年単位で計算することになっている。

(12) 福島県 62 106,787,888 51,003,421 73,286 36,643
63 110,923,426 53,024,088 75,486 37,743

小計

217,711,314 104,027,509 148,773 74,386

 福島県では、自動車等を使用して片道10km以上の距離を通勤する教職員は、利用しうる交通機関の有無等にかかわらず、すべて通常より高額な通勤手当が支給される通勤不便者(注) であるとして、国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、通勤不便者とされる者は、利用しうる交通機関がないなどの要件に該当する者に限られているのに、この要件に該当しない者(昭和62年度2,355人、63年度2,436人)を通勤不便者であるとして、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。
 この結果、国庫負担対象額が62年度73,286,943円、63年度75,486,630円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、62年度50,966,778,046円、63年度52,986,345,010円となり、62年度36,643,472円、63年度37,743,315円がそれぞれ過大に交付されていた。

(注)  通勤不便者 自動車等を使用して片道10km以上の距離を通勤する者のうち、国において調整手当が支給されない地域に所在する官署に勤務し、かつ、通勤のため利用しうる交通機関がないなどの要件に該当する者をいう。

(13) 山梨県

63

39,498,636 18,836,805 81,693 40,846

37,981,666 18,234,883 28,135 14,067

小計

77,480,303 37,071,689 109,828 54,914
 山梨県では、同県教育委員会事務局に勤務する教員(昭和63年度3人、平成元年度1人)に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、上記の教員は、学校以外の教育機関等に勤務している者であるから国庫負担の対象にならないものであるのに、これらの者に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が63年度81,693,175円、元年度28,135,588円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、63年度18,795,958,888円、元年度18,220,816,175円となり、63年度40,846,587円、元年度14,067,794円がそれぞれ過大に交付されていた。

(14) 三重県 62 75,710,233 36,133,797 3,126 1,563
63 79,744,120 38,096,694 3,192 1,596

小計

155,454,354 74,230,491 6,318 3,159
 三重県では、市町村の教職員住宅に居住する教職員にも住居手当を支給しており、これらの者(昭和62年度60人、63年度62人)に係る住居手当を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、市町村の教職員住宅に居住する教職員に対して支給された住居手当は国庫負担の対象とはならないものであるのに、これらの者に係る住居手当を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が62年度3,126,170円、63年度3,192,461円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、62年度36,132,234,272円、63年度38,095,098,059円となり、62年度1,563,085円、63年度1,596,231円がそれぞれ過大に交付されていた。

(15) 兵庫県

63

219,098,896 104,740,246 51,159 25,579

222,619,894 106,937,436 112,387 55,016

小計

441,718,791 211,677,683 163,546 80,596
(1) 兵庫県では、平成元年度において、校長教諭等の標準定数を算定するに当たり、小学校3校において、第2学年から第6学年までの間で引き続く2の学年の児童数の合計が18人以下である場合にも、標準学級数(注1) を各学年それぞれ1学級としていた。

 しかし、このような場合には、引き続く2の学年を併せて標準学級数を1学級とすることとなっているのに、このような取扱いをしないで各学年それぞれ1学級として標準学級数を算定したのは誤りである。このため、校長教諭等の標準定数が6人過大になっていた。

(2) 同県では、昭和63年度及び元年度において、期末手当の算定の基礎となる期間から休職期間等を控除することなく、期末手当に係る国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、上記の期間から休職期間の2分の1の期間等を控除して国庫負担対象額を算定しなければならないこととなっているのに、63年度延べ146人、元年度延べ95人について、休職期間の2分の1の期間等を控除しないで国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

(3) 同県では、63年度及び元年度において、勤勉手当の算定の基礎となる期間率(注2) について、同県の定めた期間率を用いて勤勉手当に係る国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、上記の期間率よりも低率な国家公務員の場合の期間率を用いて国庫負担対象額を算定しなければならないこととなっているのに、63年度延べ2,505人、元年度延べ2,731人について、同県の定めた高率な期間率を用いて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 上記(1)、(2)及び(3)などの結果、国庫負担対象額が63年度51,159,824円、元年度112,387,029円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、63年度104,714,666,917円、元年度106,882,420,235円となり、63年度25,579,912円、元年度55,016,524円がそれぞれ過大に交付されていた。

(注1)  標準学級数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」等に規定する学級編制の標準により算定した学級数で、標準定数を算定する際の基礎となる。

(注2)  期間率 勤勉手当の基準日(6月1日及び12月1日)以前6箇月以内の期間において職員が勤務した期間の区分に応じて定められた支給割合

(16) 島根県

63

48,211,678 23,028,630 37,051 17,727
 島根県では、校長教諭等の標準定数を算定するに当たり、小学校5校において、第2学年から第6学年までの間で引き続く2の学年の児童数の合計が18人以下である場合にも、標準学級数を各学年それぞれ1学級としていた。

 しかし、このような場合には、引き続く2の学年を併せて標準学級数を1学級とすることとなっているのに、このような取扱いをしないで各学年それぞれ1学級として標準学級数を算定したのは誤りである。このため、校長教諭等の標準定数が7人過大になっていた。

 この結果、国庫負担対象額が37,051,565円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、23,010,903,217円となり、17,727,285円が過大に交付されていた。

(17) 広島県

63

122,194,146 58,241,333 9,682 4,841
124,837,995 59,894,950 4,883 2,441
小計 247,032,141 118,136,283 14,566 7,283
(1) 広島県では、昭和63年度及び平成元年度に勧奨を受けて退職した教職員のうち、63年度1人(勤続期間24年)、元年度2人(同20年及び21年)について、同県の定めたそれぞれの勤続期間に応じた支給率を適用して算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、退職手当の算定に当たっては、上記の支給率よりも低率な国家公務員の場合の支給率を適用することとなっているのに、上記の教職員について、同県の定めた高率な支給率を適用して算定した退職手当により、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が63年度2,526,530円、元年度4,883,583円それぞれ過大に算定されていた。

(2) 同県では、63年度に心身の故障(公務上の傷病及び結核性疾患を除く。)により休職している教職員のうち3人の教員について、休職期間1年を超え満2年に達するまでの期間に係る休職者給与を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、休職期間が1年を超える場合には、その超過した期間に係る休職者給与は国庫負担の対象としないこととなっているのに、上記の教員に係る休職者給与を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が63年度7,156,207円過大に算定されていた。

 したがって、上記の(1)及び(2)により適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、63年度58,236,491,958円、元年度59,892,508,529円となり、63年度4,841,369円、元年度2,441,791円がそれぞれ過大に交付されていた。

(18) 高知県

63

45,452,953 21,707,959 4,489 2,244
45,106,684 21,676,258 2,872 1,436
小計 90,559,637 43,384,218 7,361 3,680
 高知県では、教職員が20年以上勤続して退職する際、退職事由等に応じて特別昇給を行っている。そして、この特別昇給を行った教員のうち、昭和63年度21人、平成元年度12人について、特別昇給の2号分に係る額を含めた給料を基礎に算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、退職手当の算定の基礎となる給料には、20年以上勤続して退職する場合に行う特別昇給の1号分に係る額しか含めることができないこととなっているのに、これを超える特別昇給に係る額を含めた給料を基礎に算定した退職手当により、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が63年度4,489,378円、元年度2,872,240円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、63年度21,705,714,803円、元年度21,674,822,847円となり、63年度2,244,689円、元年度1,436,120円がそれぞれ過大に交付されていた。

(養護学校教育費国庫負担金)
(19) 福島県 62 3,834,324 1,842,386 5,111 2,555
63 3,932,122 1,883,454 4,689 2,344

小計

7,766,447 3,725,840 9,801 4,900

 福島県では、自動車等を使用して片道10km以上の距離を通勤する教職員は、利用しうる交通機関の有無等にかかわらず、すべて通常より高額な通勤手当が支給される通勤不便者であるとして、国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、通勤不便者とされる者は、利用しうる交通機関がないなどの要件に該当する者に限られているのに、この要件に該当しない者(昭和62年度132人、63年度133人)を通勤不便者であるとして、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が62年度5,111,483円、63年度4,689,976円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、62年度1,839,830,678円、63年度1,881,109,060円となり、62年度2,555,741円、63年度2,344,988円がそれぞれ過大に交付されていた。

(20) 兵庫県

63

7,946,097 3,809,856 2,984 1,492
8,048,880 3,872,224 5,172 2,586
小計 15,994,977 7,682,081 8,157 4,078
(1) 兵庫県では、昭和63年度及び平成元年度において、期末手当の算定の基礎となる期間から休職期間を控除することなく、期末手当に係る国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、上記の期間から休職期間の2分の1の期間を控除して国庫負担対象額を算定しなければならないこととなっているのに、63年度延べ11人、元年度延べ19人について、休職期間の2分の1の期間を控除しないで国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

(2) 同県では、63年度及び元年度において、勤勉手当の算定の基礎となる期間率について、同県の定めた期同率を用いて勤勉手当に係る国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、上記の期間率よりも低率な国家公務員の場合の期間率を用いて国庫負担対象額を算定しなければならないこととなっているのに、63年度延べ236人、元年度延べ258人について、同県の定めた高率な期間率を用いて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 上記(1)及び(2)の結果、国庫負担対象額が63年度2,984,409円、元年度5,172,854円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、63年度3,808,364,377円、元年度3,869,638,332円となり、63年度1,492,205円、元年度2,586,427円がそれぞれ過大に交付されていた。

(11)-(20) の計 62 186,332,447 88,979,605 81,524 40,762
63 1,005,760,950 480,713,659 276,926 137,664
438,595,120 210,615,754 153,451 75,548
合計 1,630,688,518 780,309,019 511,902 253,975