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  • 平成2年度|
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厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもの


(40) 厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定)(項)保険給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 29人
老齢厚生年金等の支給額の合計 29,628,999円
不適正支給額 14,804,286円

 老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金の支給に当たり、審査に当たる都府県の保険課及び社会保険事務所において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する指導及び調査確認が十分でなかったため、上記の29人に対して14,804,286円(老齢厚生年金20人分10,745,532円、老齢年金6人分3,283,700円、通算老齢年金3人分775,054円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(支給の要件、給付額)

 厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 参照 )において行う給付には、次の老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金(注1) などがある。

(ア) 老齢厚生年金及び老齢年金は、所定の被保険者期間を満たしている者が一定の年齢に達したときに受給権者となるものである。その給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっている。

(イ) 通算老齢年金は、老齢年金を受けるのに必要な被保険者期間を満たしてはいないが、他の公的年金制度の被保険者期間又は組合員期間と通算することにより所定の被保険者期間を満たすことになる者等が、一定の年齢に達したときに受給権者となるものである。その給付額は、上記(ア)の老齢年金の基本年金額に相当する額となっている。

(支給の停止)

 これらの年金の受給権者が厚生年金保険の適用事業所に雇用され、被保険者となっている間は、次のとおり、年金の額の一部又は全部について支給を停止することとなっている。

〔1〕 受給権者が60歳未満である場合は年金の額の全部(加給年金額を含む。)の支給停止

〔2〕 受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注2) の区分に応じ、基本年金額の100分の20、100分の30、100分の40、100分の50、100分の60、100分の70若しくは100分の80(平成元年11月以前は100分の20、100分の50若しくは100分の80)に相当する部分又は全部(加給年金額を含む。)の支給停止

(支給停止の手続)

 この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

(ア) 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに雇用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額等のほか、受給権を有することを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて都道府県の保険課又は社会保険事務所に提出する。

(イ) 都道府県の保険課及び社会保険事務所は、これを調査確認のうえ、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定する。

(注1)  老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金 老齢年金及び通算老齢年金は大正15年4月1日以前に生まれた者を主な対象とし、老齢厚生年金は同年4月2日以降に生まれた者を対象としている。

(注2)  標準報酬等級 第1級80,000円から第30級530,000円(平成元年11月までは第1級68,000円から第31級470,000円)までの等級に区分されているもので、被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか26都府県の1保険課及び65社会保険事務所において、厚生年金保険の年金受給権者で被保険者となっている者等2,753人について老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、宮城県ほか11都府県で、受給権者29人(老齢厚生年金の受給権者20人、老齢年金の受給権者6人、通算老齢年金の受給権者3人)に対する支給(支給額29,628,999円)について、14,804,286円(老齢厚生年金10,745,532円、老齢年金3,283,700円、通算老齢年金775,054円)が不適正に支給されていた。これは、宮城県ほか11都府県の1保険課及び15社会保険事務所(注3) において、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、これに対する指導及び調査確認が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

(注3)  宮城県ほか11都府県の1保険課及び15社会保険事務所 (宮城県)仙台南社会保険事務所、(茨城県)水戸南社会保険事務所、(埼玉県)熊谷社会保険事務所、(東京都)新宿、墨田、北各社会保険事務所、(岐阜県)岐阜北社会保険事務所、(静岡県)保険課、(愛知県)中村、瀬戸両社会保険事務所、(京都府)上京社会保険事務所、(大阪府)堺東社会保険事務所、(奈良県)桜井社会保険事務所、(広島県)広島東、広島南両社会保険事務所、(福岡県)久留米社会保険事務所