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国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの


(152)−(160) 国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生本省(交付決定庁)
北海道、大阪府、高知、福岡、沖縄各県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 札幌市ほか8市町(保険者)
財政調整交付金の概要 市町村等の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、災害等特別の事情を考慮して交付する特別調整交付金がある。
上記に対する交付金交付額の合計 37,781,302,000円 (昭和60〜平成2年度)
不当と認める交付金交付額 3,045,884,000円 (昭和60〜平成2年度)
 上記の9市町において、財政調整交付金の交付額の算定の基礎となる保険料(又は保険税)の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、及びこれに対する上記の5道府県の審査が十分でなかったことなどのため、交付金3,045,884,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

1 交付金の概要

(国民健康保険の財政調整交付金)

 国民健康保険は、市町村等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、助産費、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。

 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民康健保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)の規定に基づいて交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

(普通調整交付金)

 普通調整交付金は、一定の基準により算定される収入額(調整対象収入額)(注1) が同じく一定の基準により算定される支出額(調整対象需要額)(注2) に満たない市町村に対し、その不足を公平に補うことを目途として交付するものである。

 普通調整交付金の交付額は、調整対象需要額が調整対象収入額を超える額に別に定める率を乗じて得た額となっている。ただし、市町村における保険料又は保険税(以下「保険料」という。)の収納努力を交付額に反映させるため、徴収の決定を行って納付義務者たる世帯主に賦課した保険料の額(以下、徴収の決定を「調定」、その額を「調定額」という。)に対する収納した額の割合が所定の率を下回る市町村については、その下回る程度に応じて段階的に5%から20%の率で交付額を減額することとなっている(以下この率を「減額率」という。)。

 この減額の基準となる保険料の収納割合は、全被保険者から退職被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)を除いた一般被保険者に係る保険料について計算した次の〔1〕 、〔2〕 の収納割合のうちいずれか高い方の割合(以下「保険料収納割合」という。)とされている。

〔1〕 当該年度分の保険料で1月31日までに納期が到来している分の調定額に対する同日までの収納額の割合

〔2〕 前年度分の保険料の調定額に対する前年度の収納額の割合(以下「前年度収納割合」という。)

 また、保険料収納割合による交付額の減額率は、次の減額率表のとおりとなっている。

<減額率表>

保険料収納割合 減額率

(%)

一般被保険者数1万人未満である市町村

(%)

一般被保険者数1万人以上5万人未満である市町村

(%)

一般被保険者数5万人以上である市町村

(%)

92以上94未満 91以上93未満 90以上92未満 5
87以上92未満 86以上91未満 85以上90未満 10
80以上87未満 80以上86未満 80以上85未満 15
80未満 80未満 80未満 20

(特別調整交付金)

 特別調整交付金は、市町村について災害その他特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付するものである。そして、国民健康保険事業に対する経営努力が顕著であるなど、事業の適正な運営に積極的に取り組んでいると認められる場合にも交付されている。この場合に交付する特別調整交付金の中には、保険料の収納割合の向上に努めている市町村に交付するもの(以下「収納割合向上特別交付金」という。)があり、その交付額は別に定める定額となっている。

 収納割合向上特別交付金の交付を受けることができる市町村として、次の〔1〕 又は〔2〕 に該当する市町村がある。

〔1〕 全被保険者に係る前年度収納割合が、前々年度の保険料の収納割合を上回っており、かつ、全被保険者数の区分に応じて別に定められた率以上であるなどの要件を満たす市町村

〔2〕 全被保険者に係る保険料の収納割合が、その基準となる年度(昭和60年度から62年度までは58年度。 63年度以降は前々年度)における収納割合に比べて、全被保険者数の区分に応じて別に定められた率以上に向上していることなどの要件を満たす市町村

(交付手続)

 財政調整交付金の交付手続は、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕 交付申請書を受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査のうえ、これを厚生省に提出し、〔3〕 厚生省はこれに基づき交付決定を行い交付することとなっている(注3)

(注1)  調整対象収入額 本来徴収すべきとされている保険料の額で、医療費を基に算定される応益保険料額と被保険者の所得を基に算定される応能保険料額の合計額

(注2)  調整対象需要額 本来保険料で賄うべきとされている額で、医療費、老人保健医療費拠出金及び保健施設費の合計額から患者の一部負担金及び療養給付費等負担金等の国庫補助金等を控除した額

(注3)  普通調整交付金の交付については、国の予算措置の都合により、昭和57年度から特例として、当年度分の交付金の一部は翌年度に交付するとされている。したがって、交付額は、当年分として算定された交付金の額から翌年度に交付される額を控除した額に前年度分の交付金の額のうち当年度に交付される額を加えた額となる。

2 検査の結果

 財政調整交付金の交付について検査した結果、札幌市ほか8市町において、交付金3,045,884,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

 これは、札幌市ほか8市町が保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、北海道ほか4府県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されたり、交付すべきでない収納割合向上特別交付金が交付されたりしていたものである。

 これを、道府県別に示すと次のとおりである。

道府県名 交付先
(保険者)
年度 交付金交付額
千円
左のうち不当と認める額
千円
(152) 北海道 札幌市 昭和60〜平成元 27,995,201 2,491,081
(普通調整交付金)
 札幌市では、昭和60年度から平成元年度までの各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、88%又は90%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により昭和60、61両年度分は10%、62年度から平成元年度までの各年度分は5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和60年度から平成元年度までの交付申請を行い、計27,974,201,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、保険料を滞納している被保険者の一部について、次のようにその調定額を不当に減額するなどして保険料収納割合を事実と相違して高くしていて、交付金の減額を一部免れていた。

(ア) 同市からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額していた。

(イ) 所得状況等を十分調査しないまま、生活が著しく困難であることなどによる保険料の減免の対象にならないのに減免したことにして、調定額を減額していた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で80%から82%となり、交付金の減額率は、いずれの年度分とも15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和60 16,088 15,949 14,162 13,099 88 82 10 15
昭和61 14,521 15,792 12,887 12,887 88 81 10 15
昭和62 15,134 16,697 13,727 13,727 90 82 5 15
昭和63 16,326 18,197 14,832 14,832 90 81 5 15
平成元 17,447 19,640 15,845 15,845 90 80 5 15
(注)
 60年度の交付申請では、前年度分の保険料の調定額及び収納額は、全被保険者の分を計上していた。このため、収納額も過大になっていた。

(特別調整交付金)

 同市で、昭和60年度から62年度までの各年度において、全被保険者に係る58年度の保険料の収納割合は84.3%であり、これに対し各年度における前年度収納割合はそれぞれ87.8%、90.0%、91.9%であるとしていた。

 そして、前年度収納割合が58年度の収納割合に比べて60年度では1.0%、61年度では2.0%、62年度では3.0%以上向上していること(全被保険者数が5万人以上の市町村の場合)などとされている収納割合向上特別交付金の交付要件を満たすとして、交付金計21,000,000円の交付を受けていた。

 しかし、60年度から62年度までの各年度における全被保険者に係る前年度収納割合は、実際はそれぞれ83.0%、83.7%、84.5%であるのに、前記のとおり一般被保険者に係る前年度収納割合を事実と相違して高くしていたことなどに伴い、同じく事実と相違して高いものとなっていた。そして、これらを58年度の収納割合と比べてみると、60年度では1.2%、61年度では0.5%低下しており、また、62年度では0.2%向上しているだけであることから、いずれの年度とも交付金の交付要件を満たさないものであった。

(過大交付額)

 したがって、普通調整交付金及び収納割合向上特別交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計25,504,120,000円となり、計2,491,081,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和60
千円
(5,000)
3,193,097
千円
3,179,923
千円
(5,000)
13,174

昭和61
(8,000)
4,345,633

4,000,944
(8,000)
344,689

昭和62
(8,000)
5,932,896

5,328,476
(8,000)
604,420
昭和63 7,058,908 6,315,865 743,043
平成元 7,464,667 6,678,912 785,755

(21,000)
27,995,201

25,504,120
(21,000)
2,491,081
(注)
 ( )書きは、収納割合向上特別交付金を内書きしたものである。

(153) 北海道 岩見沢市 平成元、2 1,088,257 29,920
 岩見沢市では、平成元年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて交付申請を行い、元年度及び2年度に計1,088,257,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、保険料を滞納している被保険者の一部について、その調定額を不当に減額していた。すなわち、同市からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額して保険料収納割合を事実と相違して高くしていて、交付金の減額を一部免れていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で86%となり、交付金の減額率は10%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
平成元 1,222 1,288 1,113 1,113 91 86 5 10

  したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、元年度及び2年度で計1,058,337,000円となり、計29,920,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

平成元
千円
558,499
千円
532,224
千円
26,275
平成2 529,758 526,113 3,645
1,088,257 1,058,337 29,920

(154) 大阪府 高槻市 昭和61〜平成2 1,508,598 62,732
(普通調整交付金)
 高槻市では、昭和61年度から平成元年度までの各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、いずれの年度分についても保険料収納割合は前年度収納割合で、92%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が5万人以上であることから、減額率表により減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和61年度から平成2年度までの交付申請を行い、計1,500,598,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、次のように調定額を不当に減額するなどして保険料収納割合を事実と相違して高くしていて、交付金の減額を免れていた。

(ア) 保険料を滞納している被保険者の一部について、同市からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額していた。

(イ) 一般被保険者と退職被保険者の両方がいる世帯に係る保険料の調定額を、一般被保険者分と退職被保険者分に振り分ける際に、一般被保険者分を過小にしていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で90%又は91%となり、交付金の減額率は、いずれの年度分とも5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和61 3,343 3,401 3,105 3,105 92 91 減額の対象外 5
昭和62 3,713 3,817 3,439 3,439 92 90 減額の対象外 5
昭和63 4,006 4,087 3,691 3,691 92 90 減額の対象外 5
平成元 4,063 4,132 3,739 3,739 92 90 減額の対象外 5

 (特別調整交付金)

 同市では、昭和61年度において、全被保険者に係る前々年度の収納割合は93.51%、前年度収納割合は93.54%であるとしていた。

 そして、前年度収納割合が前々年度の収納割合を上回っており、かつ、93%以上であること(全被保険者数が5万人以上の市町村の場合)などとされている収納割合向上特別交付金の交付要件を満たすとして、交付金8,000,000円の交付を受けていた。

 しかし、61年度における全被保険者に係る前年度収納割合は、実際は92.15%であるのに、前記のとおり一般被保険者に係る前年度収納割合を事実と相違して高くしていたことに伴い、同じく事実と相違して高くなっていて、交付金の交付要件を満たさないものであった。

(過大交付額)

 したがって、普通調整交付金及び収納割合向上特別交付金の適正な交付額は表2のとおり、計1,445,866,000円となり、計62,732,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
(8,000)
216,752
千円
199,343
千円
(8,000)
17,409
昭和62 261,564 248,486 13,078
昭和63 334,894 318,149 16,745
平成元 277,374 263,505 13,869
平成2 418,014 416,383 1,631

(8,000)
1,508,598

1,445,866
(8,000)
62,732
(注)
 ( )書きは、収納割合向上特別交付金を内書きしたものである。

(155) 大阪府 柏原市 昭和63〜平成2 530,696 22,297
 柏原市では、昭和63年度分及び平成元年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、93%、94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により両年度分とも減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和63年度から平成2年度までの交付申請を行い、計530,696,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、保険料を滞納している被保険者の一部について、その調定額を不当に減額していた。すなわち、同市からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額して保険料収納割合を事実と相違して高くしていて、交付金の減額を免れていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で91%、92%となり、交付金の減額率は、両年度分とも5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和63 1,165 1,193 1,090 1,090 93 91 減額の対象外 5
平成元 1,190 1,218 1,124 1,124 94 92 減額の対象外 5

 したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、昭和63年度から平成2年度までで計508,399,000円となり、計22,297,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和63
千円
201,252
千円
191,257
千円
9,995
平成元 219,484 208,511 10,973
平成2 109,960 108,631 1,329
530,696 508,399 22,297

(156) 高知県 室戸市 平成2 389,186 17,228
 室戸市では、平成2年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて交付申請を行い、389,186,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市では、次のように調定額を過小にしたり、収納額を過大にしたりしていた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を免れていた。

(ア) 過年度分の保険料として賦課して集計のうえ一括して調定する際に、その一部を算入しないなどして調定額を過小にしていた。

(イ) 収納割合の計算上収納額に含めないことになっている、保険料の過大納付に係る還付未済額を含めて収納額を過大にしていた。そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で93%となり、これに応じて交付金の減額率は、5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
平成2 469 469 441 440 94 93 減額の対象外 5

 したがって、平成2年度の普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、371,958,000円となり、17,228,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

平成2
千円
389,186
千円
371,958
千円
17,228

(157) 福岡県 中間市 昭和63、平成元 423,14 10,724
 中間市では、昭和63年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1(交付申請)のとおり保険料収納割合は前年度収納割合で、91%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により5%の減額になるとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて63年度及び平成元年度の交付申請を行い、計423,149,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同市では、退職被保険者の過年度分の保険料に係る調定額及び収納額を一般被保険者分に含めるなどして過大に算定していた。このため、保険料収納割合が事実と相違して高くなっていて、交付金の減額を一部免れていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で90%となり、交付金の減額率は10%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和63 489 486 445 442 91 90 5 10

 したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、昭和63年度及び平成元年度で計412,425,000円となり、計10,724,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和63
千円
200,443
千円
191,037
千円
9,406
平成元 222,706 221,388 1,318
423,149 412,425 10,724

(158) 福岡県 遠賀郡水巻町 昭和62〜平成2 506,180 20,239
 水巻町では、昭和62年度、平成元年度及び2年度の各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、87%から94%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同町は一般被保険者数が1万人未満であることから、減額率表により昭和62年度は10%、平成元年度は5%の減額とし、2年度は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和62年度から平成2年度までの交付申請を行い、計506,180,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額についてみると、同町では、次のようにして保険料収納割合を事実と相違して不当に高くしていて、交付金の減額の全部又は一部を免れていた。

(ア) 一般被保険者に係る過年度分の保険料として賦課して収納済みとなったものは調定し、未収のものは調定しないままにしていた。

(イ) 退職被保険者の過年度分の保険料として賦課して収納済みとなったものを一般被保険者分に含めて、収納額を過大にするなどしていた。

(ウ) 元年度分においては、保険料を滞納している被保険者の一部について、同町からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額していた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で86%から93%となり、交付金の減額率は、昭和62年度分は15%、平成元年度分は10%、2年度分は5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和62 332 332 290 289 87 86 10 15
平成元 377 378 349 348 92 91 5 10
平成2 396 397 374 373 94 93 減額の対象外 5

 したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計485,941,000円となり、計20,239,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和62
千円
94,289
千円
89,729
千円
4,560
昭和63 105,853 105,206 647
平成元 143,690 136,823 6,867
平成2 162,348 154,183 8,165
506,180 485,941 20,239

(159) 沖縄県 宜野湾市 昭和61〜平成2 2,706,805 154,279
(普通調整交付金)
 宜野湾市では、昭和61年度から平成元年度までの各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、保険料収納割合は前年度収納割合で、91%又は93%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により昭和61年度分は5%の減額になるとし、また、62年度から平成元年度までの各年度分は減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和61年度から平成2年度までの交付申請を行い、計2,701,805,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額についてみると、同市では、保険料収納割合を事実と相違して高くすることにより交付金の減額を全部又は一部免れるなどのため、次のように操作したものであった。

(ア) 一般被保険者に係る過年度分の保険料として賦課して収納済みとなったものは調定し、未収のものは調定しないままにしていた。

(イ) 一般被保険者の資格異動、所得更正等による賦課額の増減額分を集計のうえ一括して調定する際に、それまでの収納の実績に応じて、最終的に収納割合が、交付金減額の対象とならない93%か、又は減額される額が少なくなる91%を少し上回る程度となるようその集計額を調整していた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で82%から92%となり、交付金の減額率は、昭和61年度分は15%、62年度分は10%、63年度及び平成元年度分は5%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和61 774 867 711 711 91 82 5 15
昭和62 827 863 770 770 93 89 減額の対象外 10
昭和63 958 975 892 892 93 91 減額の対象外 5
平成元 979 992 913 913 93 92 減額の対象外 5

(特別調整交付金)

 同市では、昭和62年度において、全被保険者に係る58年度の保険料の収納割合は87.8%であり、これに対し前年度収納割合は93.2%であるとしていた。

 そして、前年度収納割合が58年度の収納割合に比べて3.6%以上向上していること(全被保険者数が1万人以上5万人未満の市町村の場合)などとされている収納割合向上特別交付金の交付要件を満たすとして、交付金5,000,000円の交付を受けていた。

 しかし、62年度における全被保険者に係る前年度収納割合は、実際は89.5%であるのに、前記のとおり一般被保険者に係る前年度収納割合を事実と相違して高くしていたことに伴い、同じく事実と相違する高いものとなっていた。そして、これを58年度の収納割合と比べてみると1.7%向上しているだけであることから、交付金の交付要件を満たさないものであった。

(過大交付額)

 したがって、普通調整交付金及び収納割合向上特別交付金の適正な交付額は、表2のとおり、計2,552,526,000円となり、計154,279,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
373,697
千円
337,509
千円
36,188
昭和62 465,920
(5,000)
414,584 51,336
(5,000)
昭和63 550,489 520,027 30,462
平成元 645,831 613,540 32,291
平成2 670,868 666,866 4,002

(5,000)
2,706,805

2,552,526
(5,000)
154,279

(注)
 ( )書きは、収納割合向上特別交付金を内書きしたものである。

(160) 沖縄県 名護市 昭和61〜平成2 2,633,230 237,384
 名護市では、昭和61年度から平成元年度までの各年度分の普通調整交付金の算定に当たり、表1の各年度(交付申請)のとおり、いずれの年度分についても保険料収納割合は前年度収納割合で、93%であるとしていた。そして、交付金の減額については、同市は一般被保険者数が1万人以上5万人未満であることから、減額率表により各年度とも減額の対象にならないとしていた。これにより算定した交付金の額に基づいて昭和61年度から平成2年度までの交付申請を行い、計2,633,230,000円の交付を受けていた。

 しかし、保険料収納割合算定の基礎となった前年度分の保険料の調定額及び収納額は、同市において、保険料収納割合を事実と相違して高くすることにより交付金の減額を免れるなどのため、次のように操作したものであった。

(ア) 保険料を滞納している被保険者の一部について、同市からの転出や他保険への加入等による被保険者資格の喪失の有無を十分調査しないまま、資格を喪失していないのに喪失していることにして、調定額を減額していた。

(イ) 収納割合の計算上収納額に含めないことになっている前々年度以前分の滞納保険料に係る収納額を含めるなどして、収納額を過大にしていた。

 そして、実際の賦課に基づく適正な調定額及び収納額は表1の各年度(修正)のとおりであり、これによれば保険料収納割合は前年度収納割合で85%から89%となり、交付金の減額率は、昭和61年度、62年度及び平成元年度分は10%、昭和63年度分は15%となる。

表1

年度 前年度分の保険料の調定額(A)

百万円

左に対する前年度の収納額(B)

百万円

保険料収納割合(B/A)

%

減額率

%


(交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正) (交付申請) (修正)
昭和61 584 607 545 545 93 89 減額の対象外 10
昭和62 591 626 552 542 93 86 減額の対象外 10
昭和63 654 687 612 589 93 85 減額の対象外 15
平成元 648 674 606 590 93 87 減額の対象外 10

 したがって、普通調整交付金の適正な交付額は、表2のとおり、昭和61年度から平成2年度までで計2,395,846,000円となり、計237,384,000円が過大に交付されていた。

表2

年度 交付金交付額 適正な交付額 過大交付額

昭和61
千円
385,639
千円
351,777
千円
33,862
昭和62 472,005 424,805 47,200
昭和63 563,806 482,254 81,552
平成元 634,219 567,269 66,950
平成2 577,561 569,741 7,820
2,633,230 2,395,846 237,384

(152)−(160)
の計
37,781,302 3,045,884