会計名及び科目 | 空港整備特別会計(項)航空機騒音対策事業資金貸付金 |
部局等の名称 | 運輸省航空局 |
貸付けの根拠 | 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号) |
貸付けの内容 | 空港周辺整備機構が空港周辺整備計画に基づき行う再開発整備事業、代替地造成事業及び共同住宅建設事業に対し、その事業に要する経費に充てる資金を無利子で貸し付けるもの |
貸付先 | 空港周辺整備機構(昭和60年9月までは大阪国際空港周辺整備機構) |
貸付対象事業 | 共同住宅建設事業 |
事業費 | 4億9204万余円 |
上記に対する貸付金 | 1億9681万余円 |
繰上償還を要する貸付金 | 1億4485万余円 |
<検査の結果> |
上記の貸付けにおいて、貸付金を財源の一部として建設した共同住宅が譲渡されているのに、これに係る貸付金が貸し付けられたままとなっていて、貸付金残高相当額1億4485万余円の管理が適切でないと認められる。 このような事態が生じていたのは、空港周辺整備機構に対する国の貸付金に関する貸付条件に、共同住宅建設後にこの住宅が移転補償事業の対象となる民間会社等に譲渡された場合には、貸付金を繰上償還させることが明確になっていなかったことによるものである。このような場合の繰上償還について貸付条件の整備を図る要があると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成3年10月に通達を発し、空港周辺整備機構が共同住宅建設事業により建設した住宅を移転補償事業の対象となる民間会社等に譲渡した場合には、貸付金の繰上償還を行わせることとする処置を講じた。 |
1 貸付金の概要
運輸省では、航空機の騒音により生ずる障害の防止等のための必要な措置をとることにより、関係住民の生活環境の改善に資するため、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(昭和42年法律第110号)の規定に基づき策定された空港周辺整備計画に定められた各種施策の実施を図ることとしている。その一環として、運輸省は、空港周辺整備機構(以下「機構」という。)が空港周辺整備計画に基づき行う再開発整備事業、代替地造成事業及び共同住宅建設事業に対し、航空機騒音対策事業資金貸付金(以下「貸付金」という。)を貸し付けている。そして、その貸付条件は各事業とも無利子、償還期限20年(うち据置期間3年)、均等年賦償還などとなっている。
このうち、共同住宅建設事業は、機構が、大阪国際空港周辺の航空機騒音の指定区域内から移転補償事業等により住居を移転する借家人等のために移転先の住宅を建設して、賃貸により提供する事業である。この事業に必要な資金に対する国の貸付金の割合は、総事業費の40%となっており、再開発整備事業及び代替地造成事業がそれぞれ20%であるのに比べて高率となっている。
このように共同住宅建設事業に対する貸付金の割合が高くなっているのは、この事業が住居を移転する借家人等のための住宅の提供を前提としていることから、その建設に係る借入金等の利子負担の軽減を通じて共同住宅の家賃を抑制し、ひいては借家人等の経済的負担を軽減させることにより移転等の円滑な推進を図るためである。
機構ではこの貸付金を財源の一部として、昭和50年度から58年度にかけて、利倉西第四住宅(1棟(40戸)、敷地面積2,096.01m2 。以下「第四住宅」という。)ほか6棟の共同住宅(いずれも鉄筋コンクリート造り5階建て、総戸数350戸)を建設している。
2 検査の結果
機構が建設した上記共同住宅のうち、第四住宅について、運輸省は、この建設に必要な資金4億9204万余円の一部として、56年7月に4802万余円(土地分)、59年2月に1億4879万余円(建物分)、計1億9681万余円を貸し付けている。この貸付け及び貸付け後の資金の管理について調査したところ、次のような事態が見受けられた。
第四住宅は、59年3月に完成して以来入居の実績が全くなく、全戸が未使用となっている状態が続いていたことから、機構では、共同住宅全体の今後の入居見込みについて検討を行った。その結果、他の共同住宅においても空家があることなどから、第四住宅については今後も入居の見通しがないとの結論を得た。そのため、機構では第四住宅を所有することを断念し、平成3年1月に移転補償事業の対象となる民間会社に対し、その社宅として16億0472万余円で譲渡した。
しかし、運輸省では、次のような理由により、第四住宅の建設に係る貸付金について、第四住宅が譲渡された後においても貸付金残高を繰上償還させる措置を執ることなく、当初の償還計画(昭和56年貸付分については平成13年まで、昭和59年貸付分については平成15年まで)どおりに償還させることとしていた。
(ア) 第四住宅の譲渡は、住居を移転する借家人等のために移転先の住宅を建設し、賃貸により提供するという共同住宅建設事業の目的とは異なるものの、譲渡後も移転補償事業の対象となる民間会社の代替の社宅として使用されるものであること
(イ) 貸付金残高がある場合に、(ア)のように共同住宅建設事業により建設した住宅を移転補償事業の対象者に譲渡したときには、貸付金残高の繰上償還を行わせることが貸付条件で明確になっていないこと
運輸省が機構に対し、第四住宅譲渡後においても、なおこれに係る貸付金残高相当額1億4485万余円について当初の償還計画どおり償還させることとしているのは、次のような理由から適切とは認められない。
(ア) 第四住宅は、譲渡されたことにより、当初の貸付目的である機構が提供する借家人等のための代替賃貸住宅としての実体を失っていること
(イ) 機構では、第四住宅を時価で譲渡したことによりこの共同住宅建設に要した資金の全額を回収していること
したがって、運輸省において、機構が国から貸付金の貸付けを受けて建設した共同住宅を移転補償事業の対象となる民間会社に譲渡したことによりその建設資金の回収が図られた場合には、当該貸付金を繰上償還させることとし、貸付金の適切な管理を図る要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、機構に対する運輸省の貸付金に関する貸付条件に、共同住宅建設事業により建設した住宅を移転補償事業の対象となる民間会社等に譲渡した場合には、これに係る貸付金を繰上償還させることが明確になっていなかったことによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、3年10月に、空港周辺整備機構に対して通達を発し、共同住宅建設事業により建設した住宅を移転補償事業の対象となる民間会社等に譲渡した場合には、貸付金の繰上償還を行わせることとする処置を講じた。