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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(205) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか22都府県(支給庁)
旭川公共職業安定所ほか146公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 365人
失業給付金の支給額の合計 188,317,834円
不適正支給額 100,580,156円

 失業給付金(基本手当及び再就職手当)の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、上記の365人に対して100,580,156円(基本手当42,712,406円、再就職手当57,867,750円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業給付金の支給)

 失業給付金には基本手当及び再就職手当のほか9種の手当等がある。このうち、基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給されるものであり、再就職手当は、受給資格者が基本手当の所定給付日数の2分の1以上を残して安定した職業に就いた場合に支給されるものである。基本手当及び再就職手当は、公共職業安定所が、次のように支給を決定し、これに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。

(ア) 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定する。

(イ) 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定する。

(注)  受給資格者 離職した被保険者で、公共職業安定所において、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あり、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることなどの認定を受けた者

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道ほか23都府県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか241公共職業安定所)から失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者16,349人について、公共職業安定所における失業給付金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、次のとおり基本手当及び再就職手当が不適正に支給されていた。

ア 基本手当

 北海道ほか22都府県で、本院が調査した10,813人に対する基本手当の支給のうち362人に対する支給(支給額130,450,084円)について、42,712,406円が不適正に支給されていた。これは、旭川公共職業安定所ほか144公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらその事実を失業認定申告書に記載していないため、申告書の内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

イ 再就職手当

 北海道ほか22都府県で、本院が調査した4,750人に対する再就職手当の支給のうち170人に対する支給について、57,867,750円が不適正に支給されていた。これは、旭川公共職業安定所ほか86公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入れ年月日を記載していたのに、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによるものである。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

 これらの不適正支給額を都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数

左の受給者に支給した失業給付金

左のうち不適正失業給付金

北海道

旭川ほか12

1,079

39
千円
12,945
千円
4,347
札幌東ほか3 306 10 3,816 3,816

小計

16,762 8,163
青森県 むつほか3 219 9 2,269 553
野辺地ほか3 141 6 1,521 1,521

小計

3,790 2,075
秋田県 秋田ほか3 235 5 1,498 484
秋田ほか1 98 3 453 453

小計

1,951 938
山形県 山形ほか6 600 15 4,833 2,722
山形ほか2 129 5 1,573 1,573

小計

6,406 4,295
栃木県 宇都宮ほか4 232 7 2,391 554
宇都宮ほか1 77 3 553 553

小計

2,944 1,108
群馬県 前橋 40 1 102 36
前橋 31 1 623 623

小計

725 659
埼玉県 川口ほか9 625 32 9,643 5,192
大宮ほか7 307 18 8,154 8,154

小計

17,797 13,346
千葉県 千葉ほか3 366 5 1,532 535
千葉ほか2 211 4 1,127 1,127

小計

2,660 1,663
東京都 飯田橋ほか17 1,980 54 19,050 7,099
飯田橋ほか15 1,200 30 10,602 10,602

小計

29,652 17,702
神奈川県 横浜ほか7 574 15 7,500 1,159
横浜ほか2 157 5 2,265 2,265

小計

9,765 3,425
新潟県 新潟ほか3 198 9 4,636 1,049
新潟 80 2 735 735

小計

5,372 1,785
山梨県 甲府ほか4 267 7 3,184 917
甲府 48 1 347 347

小計

3,532 1,264
長野県 長野ほか5 339 9 3,491 586
松本ほか2 105 4 997 997

小計

4,489 1,584
愛知県 名古屋東ほか7 496 18 8,117 2,011
名古屋東ほか5 290 9 4,266 4,266

小計

12,383 6,277
三重県 伊勢ほか5 310 17 8,083 2,357
伊勢ほか3 138 10 3,017 3,017

小計

11,101 5.375
大阪府 梅田ほか4 440 9 6,959 1,112
堺ほか1 111 3 844 844

小計

7,804 1,957
広島県 広島ほか5 446 10 4,897 459
広島ほか3 194 5 1,505 1,505

小計

6,402 1,964
山口県 下関ほか3 285 23 6,116 2,402
下関ほか1 92 4 1,957 1,957

小計

8,073 4,359
高知県 高知ほか1 170 6 1,997 1,054
高知 100 5 1,628 1,628

小計

3,625 2,683
福岡県 福岡中央ほか11 885 33 9,728 4,225
福岡中央ほか7 494 24 6,542 6,542

小計

16,271 10,767
大分県 大分ほか4 430 15 4,320 1,527
大分ほか2 131 6 2,099 2,099

小計

6,420 3,627
鹿児島県 鹿児島ほか2 259 7 2,112 662
鹿児島ほか2 127 3 560 560

小計

2,673 1,223
沖縄県 那覇ほか4 338 17 5,035 1.659
那覇ほか2 183 9 2,672 2,672

小計

7,708 4,332
 計 145箇所 10,813 362 130,450 42,712
87箇所 4,750 170 57,867 57,867
合計 188,317 100,580

(注1)  上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

(注2)  公共職業安定所のうち、基本手当と再就職手当の双方について不適正な支給があったものが85、基本手当のみのものが60、再就職手当のみのものが2あり、したがって、公共職業安定所の実数は147である。

(注3)  不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が167人、基本手当のみの者が195人、再就職手当のみの者が3人おり、したがって、不適正受給の実人員は365人である。