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  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(208) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定)(項)保険給付費
部局等の名称 労働本省(支出庁)
北海道労働基準局ほか11労働基準局(審査庁)
支払の相手方 148医療機関
不適正支払額 29,666,096円

 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、上記の148医療機関に対して29,666,096円が不適正に支払われていた。

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、工場、事務所、商店等に雇われる労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働基準局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者に対し診察、薬剤の支給等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働基準局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働基準局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。

 労災診療費は、労働省労働基準局長が定めた「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)の規定に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働基準局ほか20労働基準局において、労災診療費の請求に対する支払の適否について検査した。

(不適正支払の事態) 

 検査したところ、北海道労働基準局ほか11労働基準局において、労災診療費が不適正に支払われていたものが、148医療機関について29,666,096円あった。これは、上記の12労働基準局において、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによるものである。

(主な態様)

 上記の労災診療費が不適正に支払われていた事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 処置料に関するもの 

 手足の傷病に対して処置を行った場合には、労災診療費では、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。また、マッサージ等の消炎鎮痛処置は、運動療法と併せて行った場合には消炎鎮痛処置の点数は算定しないで運動療法の点数だけで算定することとなっている。

 しかし、北海道労働基準局ほか11労働基準局において、75医療機関が2,361件について手足以外の傷病に対する処置についても健保点数の1.5倍の点数で算定したり、消炎鎮痛処置と運動療法の両方の点数を算定したりなどしていて、処置料が10,106,578円不適正に支払われていた。

イ 手術料に関するもの

 手足の傷病に対して傷口を縫合するなど創傷処理等の手術を行った場合には、労災診療費では、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。

 しかし、北海道労働基準局ほか9労働基準局において、91医療機関が727件について上記に該当しない手術を行った場合でも健保点数の1.5倍の点数で算定するなどしていて、手術料が10,007,304円不適正に支払われていた。

ウ 理学療法料に関するもの

 手足の傷病に対して理学療法を行った場合には、労災診療費では、健保点数の1.5倍の点数で算定できることとなっている。

 しかし、宮城労働基準局ほか8労働基準局において、27医療機関が223件について健保点数の2倍の点数で算定したり、手足以外の傷病に対する理学療法について健保点数の1.5倍の点数で算定したりなどしていて、理学療法料が1,737,678円不適正に支払われていた。 

(労働基準局別の内訳) 

 上記の不適正支払額を労働基準局別に示すと次のとおりである。

労働基準局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額

北海道労働基準局

6

493
千円
1,121
宮城労働基準局 6 49 821
栃木労働基準局 3 80 1,057
千葉労働基準局 10 121 1,715
神奈川労働基準局 34 927 5,950
愛知労働基準局 12 390 3,458
三重労働基準局 16 529 2,603
兵庫労働基準局 28 948 6,293
山口労働基準局 9 87 542
福岡労働基準局 11 556 2,976
大分労働基準局 3 662 2,172
宮崎労働基準局 10 97 951
148 4,939 29,666