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  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

トンネル工事における掘削費等の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


トンネル工事における掘削費等の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設費
部局等の名称 札幌、東京第二、名古屋、広島、高松、福岡各建設局
工事名 道央自動車道江丹別トンネル(その2)工事ほか13工事
工事の概要 高速道路建設事業の一環として、トンネルを掘削し道路を築造するなどの工事
工事費 36,971,260,000円
請負人 飛島建設株式会社・新日本土木株式会社道央自動車道江丹別トンネル(その1)工事共同企業体ほか13共同企業体
契約 昭和63年8月〜平成3年1月 指名競争契約、随意契約
過大積算額 1億9300万円
 
<検査の結果>

 上記の各工事において、トンネル工事の掘削費等の積算(積算額157億3242万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億9300万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっていたのは、近年、トンネルの掘削に使用するさく岩用の機械は、大型のさく岩機を搭載した機種が開発され普及してきていることなどから、火薬の装薬孔のせん孔などの作業が効率的に行われているのに、これら施工の実態が積算の基準に反映されていなかったことによるものである。したがって、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。
 
<当局が請じた改善の処置>

 本院の指摘に基づき、日本道路公団では、平成3年10月に、トンネル工事の掘削費等の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算の基準を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

1 工事の概要

 日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施している。そして、札幌建設局ほか5建設局(注1) では、平成2事業年度に、掘削延長が1,500m以上のものを対象として、火薬による発破掘削でNATM(注2) により施工するトンネル工事を14工事で15トンネル(工事費総額369億7126万円、施工総延長18,561m)施行している。これらのトンネル工事はいずれも各トンネル毎に、トンネルの一方向から、さく岩用の機械などの掘削用機械及び換気設備等の仮設備を用いて施工することとしている。
 そして、これらトンネル工事の工事費は、公団が定めた「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づき積算することとされている。この積算要領によれば、工事費は、直接工事費、割掛間接工事費などから構成されている。
 上記14工事の積算に当たっては、トンネル掘削工1,490,535m3 、コンクリート吹付け工467,957m2 、ロックボルト工236,273本についての直接工事費とトンネル工事の施工に当たり間接的に必要となる仮設備に係る保守費などの割掛間接工事費(以下、この直接工事費と割掛間接工事費を合わせて「掘削費等」という。)を、次により、総額157億3242万余円と算定していた。

ア 直接工事費について

(ア) 火薬の装薬孔のせん孔、装薬・爆破、ずりの搬出、コンクリートの吹付け、ロックボルト孔のせん孔及びロックボルトの挿入の各作業(以下、これら一連の作業を「掘削等作業」という。)については上下半同時併進工法 (注3) によることとする。

(イ) 火薬の装薬孔のせん孔などに使用するさく岩用の機械(以下「ジャンボ」という。)については、上半部にクローラ型ジャンボ(油圧さく岩機100kg2基搭載)2台、下半部にクローラ型ジャンボ(空圧さく岩機100kg2基搭載)1台、計3台を配置する。

(ウ) 上半部における1回の掘削等作業に要する時間(以下「サイクルタイム」という。)については、各作業別に定められた一定の所要時分等に基づき、各作業に従事する時間を算出する。そして、これに使用機械の点検、修理等に要する時間を加算してサイクルタイムを算出する。また、下半部については、上半部に比べ掘削断面積が小さいため各作業に従事する時間は短縮されるが、上半部の工事の進ちょくに合わせて施工する要がある。このため、下半部のサイクルタイムは上半部と同じとする。

(エ) 各工事のサイクルタイムにおける掘削進行長などを基に、各作業を施工するのに必要な労務費、材料費、機械経費等から掘削、コンクリート吹付け等の単価を算出し、この単価に各作業の施工数量を乗じて直接工事費を算定する。

イ 割掛間接工事費について

 各工事のサイクルタイムにおける掘削進行長などを基に、1箇月当たりの掘削延長をそれぞれ算出し、これで各トンネルの施工延長を除すなどしてトンネル工事の施工期間を設定し、この期間に必要となる保守費などを算定する。

2 検査の結果

(調査の経緯)

 近年、ジャンボは、大型のさく岩機を搭載した機種が開発され普及してきていることなどから、掘削等作業が積算に比べて効率的に行われているかを調査した。

(実態調査の結果)

 前記の14工事で施工した15トンネルについて調査したところ、上半部については、10トンネルにおいて、積算で想定したものより大型の油圧さく岩機(120kg又は150kg)を2基搭載したジャンボ(以下「大型ジャンボ」という。)を、また、4トンネルにおいて、積算で想定したものより作業能力の向上した油圧さく岩機(100kg)を2基搭載したジャンボを使用していた。そして、この14トンネルのうち10トンネルでは、下半部にも積算で想定した空圧さく岩機より作業能力の向上した油圧さく岩機を搭載したジャンボを使用していた。

 そして、本件14トンネルの工事においては、次のとおり、作業が効率的に行われており、このため、各工事のサイクルタイム及び施工期間は積算に比べ大幅に短縮されるものと認められた。

(ア) 作業能力の向上した大型ジャンボ等を使用しているため、せん孔時間及びさく岩機の移動時間が短縮されたり、せん孔径が大きくなって単位面積当たりのせん孔数が減少したりしたことなどにより、火薬の装薬孔のせん孔に要する時間が短縮されている。

(イ) 作業能力の向上した大型ジャンボ等を効率よく活用してせん孔と挿入の作業を並行して施工することなどにより、ロックボルト孔のせん孔及びロックボルトの挿入に要する時間が短縮されている。

(ウ) 大型ジャンボ等の使用機械の耐久性が向上して、故障が少なくなっていることなどから、使用機械の点検、修理等に要する時間が短縮されている。

 したがって、この種のトンネル工事における掘削費等の積算は、大型ジャンボ等を使用している施工の実態に即して行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 いま、本件各トンネル工事の掘削費等の積算について施工の実態に即して積算したとすれば、割掛間接工事費が約3億9200万円低減されることとなり、大型ジャンボ等に係る機械経費が増加することにより直接工事費が約1億9900万円増加することを考慮しても、積算額を約1億9300万円低減できたと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、3年10月に、トンネル工事の掘削費等の積算が施工の実態に即したものとなるよう積算要領を改正し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  札幌建設局ほか5建設局 札幌、東京第二、名古屋、広島、高松、福岡各建設局

(注2)  NATM New  Austrian Tunnelling Method の略でナトムと呼ばれる。
トンネルを掘削した後、コンクリート吹付け、ロックボルトなどを適宜組み合わせ施工することにより、地山の持っている支持力を最大限に生かす工法

(注3)  上下半同時併進工法 トンネルを上半部、下半部の2段に分け、一定区間上半部を施工した後、上半部と下半部を同時併進で施工する工法

(参考図)

(参考図)