科目 | (住宅・都市整備勘定) | (項)住宅等建設費 (項)利子及債券発行諸費 ほか5科目 |
部局等の名称 | 東京、関東、関西各支社 |
施設用地の概要 | 住宅団地において、日常生活に必要な購買施設等の利便施設を建設することが建設計画で定められている土地 |
利便施設が建設されていない施設用地の面積 | 23,118m2 (8団地) |
上記に対する土地購入費等の費用の合計 | 31億4919万余円 |
<検査の結果> |
住宅団地を建設する場合、その居住者が日常生活を営むために必要な購買施設等の利便施設が必要となる。これらの利便施設が建設される施設用地は、あらかじめ地方公共団体の長と協議して策定している住宅団地の建設計画に基づき、住宅団地内に確保されている。 しかし、調査の結果、建設計画で定められている利便施設が建設されていない施設用地(以下「未建設地」という。)で、住宅建設の完了後既に3年以上経過し、地方公共団体等と協議して建設計画の変更を行えば早期に利用の促進が図れると認められる未建設地が、上記3支社管内の8団地において23,118m2 見受けられた。 このような事態が生じているのは、当初の建設計画策定時に比べ施設の需要が減少しているのに、これに対応した建設計画の見直しを十分に行っていなかったこと、建設計画の変更について地方公共団体等との協議を行っていなかったことなどによると認められた。 |
<改善の意見表示> |
本件未建設地について、当該住宅団地に係る施設需要及び周辺環境等を調査のうえ、他用途への利用の可能性を検討し、関係する地方公共団体等との協議調整を積極的に行うなどして、その利用を促進し、もって投下した多額の事業費の効果の発現を図る要があると認められた。 上記のように認められたので、会計検査院法第36条の規定により、平成3年12月6日に住宅・都市整備公団総裁に対して改善の意見を表示した。 |
【改善の意見表示の全文】
(平成3年12月6日付け 住宅・都市整備公団総裁あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。
記
1 事業の概要
貴公団では、住宅事情の改善を特に必要とする大都市地域等において、健康で文化的な生活を営むに足りる良好な居住性能及び居住環境を有する集合住宅等の供給を行うことを目的として、集団的な住宅及びこれに伴う各種施設が一体として構成される住宅団地の建設事業を多数実施している。
住宅団地を建設する場合、その居住者が日常生活を営むための購買施設、医療施設、教育施設等の利便施設が必要となる。
住宅団地の建設事業は、主として大都市の既成市街地の周辺部で、原則として200戸以上の住宅を集団的に建設するものであることから、住宅の建設と合わせて、利便施設を配置することとし、敷地内に利便施設のための施設用地を確保することとしている。そして、これらの施設用地に建設される利便施設は、当該団地の建設計画に基づき、住宅建設の進ちょく状況に合わせて整備されることになっている。
住宅・都市整備公団法(昭和56年法律第48号。以下「法」という。)第33条の規定によると、貴公団は、住宅団地の建設計画について、あらかじめ当該団地の所在する地方公共団体の長と協議することとなっている。
そして、法に基づき貴公団が定めている「住宅・都市整備公団住宅及び施設建設計画規程」(昭和57年規程第31号。以下「計画規程」という。)によると、建設計画を策定する際には、当該団地及び周辺の立地状況、住宅及び施設の需要動向等を調査のうえ、当該団地の土地利用、住宅及び施設の種別、これらの供給時期等を定めることとなっている。
住宅団地の建設には、土地の取得から事業の完了までに相当の期間が必要であり、このため、建設計画が当該団地及び周辺の立地状況、住宅及び施設の需要等の変化に対応できなくなることがある。このような場合、計画規程によると、それらの変化に適合するよう当該団地の建設計画を速やかに変更することとなっている。この建設計画の変更については、当初の建設計画を策定する際に地方公共団体の長と協議していることから、貴公団の方針により地方公共団体等と協議調整のうえ行っている。
したがって、住宅団地内の施設用地の用途の変更等は、建設計画の変更になるので、地方公共団体等との協議調整が必要になる。
2 本院の検査結果
本院は、貴公団が実施している住宅団地の建設事業において、平成2年度までに住宅建設が完了し、既に入居も行われている東京支社ほか3支社(注1) 管内の31団地を対象にして、団地内に計画されている施設用地の利用状況について調査した。
調査の結果、建設計画で定めている利便施設が建設されていない施設用地(以下「未建設地」という。)で、住宅建設の完了後既に3年以上経過し、地方公共団体等と協議して建設計画の変更を行えば早期に利用の促進が図れると認められるものが、東京支社ほか2支社(注2)
管内の8団地において23,118m2
見受けられた。
これらの未建設地は、住宅建設の完了後平均8年、最長17年経過しているのに、当初の建設計画の用途に供されることなく、いまだに利用が図られておらず、そのほとんどがさら地のままとなっていて適切とは認められない。
上記の事態を施設の種別に分けて示すと、次のとおりである。
(1) 購買施設及び医療施設等の施設用地について
7団地 | 20,118m2 |
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(土地購入費等の費用 26億2628万余円) |
上記の未建設地は、地方公共団体との協議に基づき、購買施設、医療施設及び業務施設を建設する用地として確保したものである。しかし、住宅建設が長期に及んでいるうちに、周辺に大型店舗、総合病院等が建設され需要が減少したことなどの要因により、施設経営の見通しが立たないため、施設経営者の募集ができなかったり、募集しても応募がなかったりなどしているものである。
(2) 教育施設の施設用地について
1団地 | 3,000m2 |
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(土地購入費等の費用 5億2291万余円) |
上記の未建設地は、地方公共団体との協議に基づき、幼稚園を建設する教育施設用地として確保したものである。しかし、住宅建設が長期に及んでいるうちに、その間の出生率の低下による児童数の減少などの要因により、既に建設されている団地周辺の施設で十分対応できることから、新たな施設を建設する必要がなくなっているものである。
このような事態が生じているのは、貴公団において、本件未建設地の利活用について認識が十分でなかったため、次のとおり、その利用促進について適切な方策を講じていなかったことによると認められる。
(ア) これらの未建設地については、当初の建設計画策定時に比べ、団地内及び周辺環境が変化したり、社会情勢が変化したりして、施設の需要が減少しているのに、これに対応した建設計画の見直しを十分に行っていなかったこと
(イ) 建設計画の変更については、住宅建設の完了後、関係する地方公共団体等との協議を行っていなかったり、協議は行っているものの、実効性の少ないものであったりなどしてその取組が十分でなかったこと
3 本院が表示する改善の意見
貴公団の住宅に対する国民のニーズは、依然として高いものとなっており、平成2年度における全国の新規募集に対する応募倍率をみても、賃貸住宅で平均29倍、分譲住宅で平均79倍となっている。
一方、住宅建設事業における土地の取得状況についてみると、近年の急激な地価高騰などにより、一般の土地所有者から民有地等を直接買収する一般買収による土地の確保は極めて困難となってきている。すなわち、一般買収による用地取得面積は、昭和50年代には年間平均で100haを超えていたが、最近5箇年間では著しく減少し平均20haにも満たないものとなっている。
したがって、本件の未建設地について、当該住宅団地に係る施設需要及び周辺環境等を調査のうえ、住宅用地、駐車場用地等への利用の可能性を検討し、建設計画の変更について、関係する地方公共団体等との協議調整を積極的に行うなどして、その利用を促進し、もって投下した多額の事業費の効果の発現を図る要があると認められる。
(注1) 東京支社ほか3支社 東京、関東、中部、関西各支社
(注2) 東京支社ほか2支社 東京、関東、関西各支社