科目 | 営業費用 |
部局等の名称 | 東海事業推進部ほか3事業推進部(平成3年7月3日以前は東海電話帳事業部ほか3電話帳事業部) |
契約の概要 | 電話局総合支援システムから電話帳編集システムに供給された氏名、電話番号、住所等のデータを電話帳の原稿となるように加工し、電話帳編集システムの加入者ファイルを更新する作業 |
契約名 | 電話帳編集システム異動更新処理請負契約(単価契約) |
契約の相手方 | 中部電話印刷株式会社ほか3会社 |
契約 | 平成元年9月〜2年11月 |
調査対象とした契約期間 | 平成2年4月〜3年3月 |
作業件数、支払金額 | 2,212,736件 | 580,351,154円 |
不適切な作業件数、支払金額 | 55万件 | 1億4700万円 |
<検査の結果> |
上記の部局において、コンピュータヘの加入電話等のデータを修正入力する異動更新処理に当たり、電話帳に加入者の住所を完全に掲載するのに必要なデータの入力が十分でなかったため、異動更新処理に係る支払額1億4700万円が適切でないと認められた。 このような事態が生じていたのは、上記の地域事業推進部において処理の目的についての認識が十分でなかったことにもよるが、本社において各地域事業推進部の異動更新処理の内容について十分把握していなかったため、適切な指導を欠いていたことなどによると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成3年10月に、各地域事業推進部に対して住所表記の加工処理を適正に行うよう周知させるとともに、上記の4部局に対して、住所のデータを完全に入力するよう指示した。これを受けた上記4部局は、同年12月以降実施する異動更新処理を適切なものとする処置を講じた。 |
1 契約の概要
日本電信電話株式会社(以「NTT」という。)では、50音別電話帳(ハローページ)、職業別電話帳(タウンページ)等の電話帳を毎年多数発行しており、これらの平成2年度中の発行部数は約1億2100万部に上っている。
これらの電話帳には、5000万を超える電話の加入者の氏名、企業名、電話番号、住所等が掲載され、電話利用者の利便に供されているばかりでなく、それらの膨大な量の情報が分類、整理されて掲載されていることから、近年では、各種の情報媒体としても利用されるなど、電話帳の利用価値は高まっているところである。
NTTでは、加入者との間の電話サービス契約約款において、電話帳には原則として、氏名、電話番号、住所等を掲載することとしている。そして、電話帳発行要綱(昭和61年話帳第166号。以下「要綱」という。)において、加入者の住所については、町丁目、街区番号(番地・号)、住居番号(マンション等の棟番号・部屋番号)まで完全に掲載することとしている。また、具体的な表示方法については、本社電話帳事業推進部から各地域の事業推進部(3年7月3日以前は電話帳事業部)に示されたマニュアルにより行うこととしている。
このマニュアルによる電話帳の掲載例を示すと次のようになる。
〔例〕 |
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加入者氏名 | :甲野乙男 | |
住所 | :神奈川県横浜市東区西幸2丁目11番6号 横浜マンションA棟1402号室 | |
電話番号 | :(314)4213 | |
電話帳への掲載 | 甲野乙男 314-4213 東、西幸2-11-6-A-1402 |
これらの電話帳の原稿の作成、編集の業務は首都圏事業推進部ほか9事業推進部(注1)
で行っており、これらの業務は電話帳編集システムにより、昭和62年度からコンピュータを利用して行っている。
電話帳編集システムは、加入者の氏名、電話番号、住所等の個々の加入者ごとのデータ(以下「個別データ」という。)から、電話帳を作成するのに必要なデータ(以下「電話帳データ」という。)に加工した後、このデータを基に、電話帳の印刷原稿を作成するなど一連の作業を行うものである。
個別データは、主に料金徴収等の各種の業務を効率的に実施するために導入、整備されている電話局総合支援システムから供給されており、62年度の運用開始から63年度までに、既存の加入電話等のデータの電話帳編集システムヘの収容を完了している。
電話帳編集システムでは、運用開始以後、電話の新規加入や移設等の異動の発生の都度、これらのデータを新たに入力したり、既存のデータを修正したりするなどの異動更新処理を行っている。
この異動更新処理は、次の手順で行われている。
(ア) 電話局総合支援システムから供給された個別データを出力してその内容を確認する。
(イ) 個別データの住所のうちマンション、ビル等の名称など電話帳の印刷原稿として必要でない部分を削除するなどの処理を行う。
(ウ) 処理の結果を電話帳データに加工して、電話帳編集システムの加入者ファイルヘ入力して保存する。
各地域事業推進部では上記の異動更新処理の作業を外注することとし、このうち東海事業推進部ほか3事業推進部(注2) では、平成元年9月から2年11月までの間に中部電話印刷株式会社ほか3会社と電話帳編集システム異動更新処理請負契約(単価契約)を締結し、2年度において、総額5億8035万余円を支払っている。
2 検査の結果
電話帳を要綱の定めるとおりに編集発行するためには、電話帳編集システムでの異動更新処理において、住所に関するデ−タを要綱に定める電話帳の掲載事項に合うよう入力することが必要であることから、この異動更新処理の状況について調査した。
東海事業推進部ほか3事業推進部で、上記の契約により実施した異動更新処理件数のうち電話局総合支援システムから供給された個別データに係るものは、2年4月から3年3月までの1年間で221万余件となっていた。これらのうちから75,647件を抽出して調査したところ、電話帳データとして加工する際、次の例のように住居番号を入力しておらず、要綱に定める表示に合う入力が行われていないものが19,082件見受けられた。
〔例〕 |
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(個別データ) | 丙野丁男 | 263-4942 | 名古屋市中央区東5-12-13 | |
○□社宅A棟709号室 | ||||
(要綱に定める表示) | 丙野丁男 | 263-4942 | 中央、東5-12-13-A-709 | |
(電話帳データ) | 丙野丁男 | 263-4942 | 中央、東5-12-13 |
上記のような異動更新処理を行った電話帳データは、データとして不完全なものとなっており、要綱に合った表示の電話帳を発行しようとする場合には再び異動更新処理と同様の作業が必要となるものである。
上記4事業推進部では、上記のような処理を行っている理由として、管内において発行している電話帳には、住居番号を掲載しないで街区番号までの掲載としていることから、電話帳データの入力についても街区番号までの入力にとどめたとしている。
しかし、NTT本社では、主として次の理由により、電話帳の住所の表示について、要綱に定めているとおり、原則として完全に掲載していく方針であるとしている。
(ア) 2年12月からの電話番号案内の有料化に伴い電話帳の利用が増加することが見込まれること
(イ) 電話帳が、個人・企業の電話に関する情報を集約した唯一の情報媒体であることからその価値を一層高めていく必要があること
また、電話帳編集システムには必要に応じてデータを抽出して原稿を作成する機能があるので、データとして完全な形で入力しておけば、電話帳を作成するとき、掲載する範囲に応じて必要な事項を取り出すことができる。そして、完全な形で入力するとしても、異動更新処理に要する経費にほとんど差異はない。
これらのことから、上記の4事業推進部を除く首都圏事業推進部ほか5事業推進部においては、電話帳への住所の表示及びデータの入力を次のように行っている。
(ア) 3事業推進部においては、要綱どおり住居番号まで掲載し、データもこれに見合う完全なものを入力している。
(イ) 4事業推進部においては、電話帳への掲載は現時点では街区番号までにとどめているなどしているが、電話帳データとしては、住居番号まで入力している。
したがって、東海事業推進部ほか3事業推進部において実施している異動更新処理の方法は、適切とは認められず、早急に電話帳データの入力方法を改める要がある。
上記4事業推進部において、上記の期間に実施した異動更新処理221万余件について、調査結果に基づき計算すると、完全に掲載しようとする場合、再び異動更新処理と同様の作業が必要となる不十分なデータは55万9千余件あることとなり、これらの異動更新処理に係る支払金額を計算すると、1億4700万余円となる。
このような事態が生じていたのは、前記の4事業推進部において異動更新処理の目的についての認識が十分でなかったことにもよるが、本社において各地域事業推進部の実施している異動更新処理の内容について十分把握していなかったため、適切な指導を欠いていたことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、次のとおり、異動更新処理を適切なものとする処置を講じた。
(ア) 3年10月に、各地域事業推進部に対して電話帳の住所表記の加工処理について適正に行うよう周知させる文書を発した。
(イ) 東海事業推進部ほか3事業推進部に対して、住所のデータを完全に入力するよう指示し、これを受けた4事業推進部では、同年12月以降実施する異動更新処理の住所の入力に当っては住所番号まで入力することにした。
(注1) 首都圏事業推進部ほか9事業推進部 首都圏、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各事業推進部
(注2) 東海事業推進部ほか3事業推進部 東海、北陸、四国、北海道各事業推進部