科目 | 営業収益 |
部局等の名称 | 日本電信電話株式会社本社 |
物品販売の概要 | テレホンカードを代理店に委託するなどして販売するもの |
物品販売の相手方 | 5会社 |
販売代金の回収未済額 | 264,018,975円(平成3年9月末現在) |
<検査結果> |
上記の物品販売において、テレホンカードの交付等が適切を欠いていたため、販売代金の回収未済額が累増し、その回収が困難な状況となっていると認められるものが2億6401万円見受けられた。 このような事態が生じていたのは、テレホンカードの販売管理が適切に行われているかどうかの審査及び指導が十分でなかったことなどによるもので、販売管理体制を整備することなどにより、販売代金の回収に係る事故の防止を図る要があると認められた。 |
<当局が講じた改善の処置> |
本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、次のとおり、テレホンカードの販売管理体制を整備することなどにより販売代金の回収に係る事故の防止を図るための処置を講じた。 |
(ア) 平成3年7月に、取扱要領を改正し、販売管理に必要な信用調査の活用方法等について定めるとともに、同年11月に、各地域事業本部に対して、取扱要領の遵守の徹底を図ること及び同年12月以降、毎月、委託販売の実施状況を各事業所から上部部局へ報告させることを指示する文書を発した。 |
(イ) 各地域事業本部では、上記の指示を受けて、販売管理体制を整備するとともに、同年11月以降、各事業所において各代理店との契約の見直しの作業に着手した。 |
(ウ) 本社では、上部部局の審査・指導が十分行えるよう「テレホンカード販売代理店管理システム」(仮称)を開発し、4年度に導入することとした。 |
1 テレホンカード販売の概要
日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、カード公衆電話に使用するテレホンカード(以下「カード」という。)を昭和57年度(当時は日本電信電話公社)から販売している。
カードの年間販売枚数は、民営化直前の59年度には935万余枚(販売額約70億3500万円)であったが、その利便性等から、民営化後カード公衆電話の普及とともに年々急増し、平成2年度には3億4495万余枚(同約2466億0200万円)に上っている。
カードの販売方法には、〔1〕 NTTの支店・営業所等の事業所出納窓口で直接販売する方法と、〔2〕 カードの販売に関する委託契約に基づきカード販売代理店に委託して販売する方法とがあり、このうち委託販売による分が総販売枚数のうち約9割を占めている。
NTT本社では、カードの販売に関する取扱いについて「テレホンカードの取扱要領」(昭和63年11月サ本営第295号)を制定しており、また、これを受けて各地域事業本部においても、それぞれカードの販売に関する取扱要領(以下両者を併せて「取扱要領」という。)を制定し、管内各事業所に指示している。
上記の取扱要領によると、カードの販売代金の回収は次のように行うこととなっている。
ア 事業所出納窓口で直接販売する場合は、カードの交付と引換えに現金で販売代金を回収する。
イ 代理店に委託して販売する場合は、代理店にカードを交付した時点で、交付したカードの販売価額と委託手数料(カードの販売価額の5%に相当する額)とを相殺した額(元年度以降は、さらに委託手数料に係る消費税相当額を相殺した額)を販売代金として現金で回収することを原則としているが、例外として、次のような取扱いを認めている。
(ア) 信用のおける代理店については、支払期限をカード交付日の翌日から起算して30日以内の随時の日とした請求書を発行して販売代金を回収する(以下「随時請求払い」という。)。
(イ) 自動販売機でカードを販売する代理店のうち大口でかつ信用のおける代理店については、定期的(月1回以上)にカードの在庫数量を確認し、既往のカード交付枚数から代理店が保有する枚数を差し引いた枚数を販売枚数とし、この販売枚数に見合う額を回収する(以下「出来高払い」という。)。
そして、上記の例外的取扱いを認めるに当たって、取扱要領では、与信限度額(注) の設定、運用等について次のように行うことを定めている。
ア 代理店との契約の締結に当たっては、信用調査を十分に実施するとともに、過去の支払状況、払出状況、資金負担能力等を勘案して代理店の与信限度額を設定する。また、必要に応じて、担保を提供させたり連帯保証人を設定したりする。
イ カードの交付に当たっては、カードを交付することによって売掛金が与信限度額を超えていないことや、支払期限が到来した売掛金の有無を確認する。
ウ 販売代金の滞納が発生した場合は、カードの交付の停止、担保・保証金の徴収、連帯保証人の設定等の債権保全措置を講じる。
(注) 与信限度額 代理店の信用状況に応じて設定する売掛金の最高限度額
2 本院の検査結果
NTTのカードの販売について、代理店との契約及び販売代金の回収状況等について調査した結果、与信限度額の設定、運用等が適切を欠いていたために回収未済額が累増し、販売代金の回収が困難な状況となっているものが5件見受けられ、2億6401万余円(3年9月末現在)が回収未済となっていて適切でないと認められた。そして、このほかにも、販売代金の回収が困難な状況には至っていないが、与信限度額の設定、運用等が適切を欠いているものが多数見受けられた。これらについては、早急に適切な対策が講じられないまま推移すると、今後も同様に回収困難となる事態が生じる可能性があると認められた。
上記の各事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。
(ア) 取扱要領で支払期限は30日以内と定められているのに、これを大幅に超える日を支払期限として設定していた。
(イ) 代理店契約に当たっては、与信限度額を設定し、その範囲内で取引を行うこととされているのに、与信限度額を設定してていなかったり、これを大幅に超える取引を行っていたりしていた。
(ウ) 代理店の信用調査で取引上注意すべきであることなどの調査結果が出ているのに、担保徴収等の債権保全措置を十分に講じないまま取引を継続していた。
(エ) 支払期限の到来した売掛金があるのに、カードを継続して交付していた。
(オ) 出来高払いを認めた代理店についてカードの在庫状況を実地に確認しないまま繰り返しカードを交付していた。
このような事態が生じていたのは、カードの販売を促進するためとはいえ多額に上る金額の信用を特定の者に供与することについての責任意識が必ずしも十分でなかったことを背景としているが、主としてNTTのカードの販売管理体制について次のとおり適切でない点があったことによると認められた。
(ア) 取扱要領を制定した趣旨について、事業所に対する周知徹底が十分でなかったこと
(イ) 取扱要領において、代理店の信用調査を行うことを定めているが、この調査結果をどのように取引上活用させ、担保、連帯保証人の設定等の債権保全措置を講じさせるかについての具体的な方法を定めていなかったこと
(ウ) カードの交付について、取扱要領で基本的な事項を定めているものの、取扱要領が事業所において遵守されているかどうかの審査及び指導を上部部局が十分に行っていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、次のとおり、販売管理体制を整備することなどにより与信限度額の設定、運用等を適切に行うこととし、販売代金の回収に係る事故の防止を図るための処置を講じた。
(ア) 3年7月に、取扱要領を改正し、販売管理に必要な信用調査の活用方法、担保の具体的設定方法について定めた。
(イ) 同年11月に、各地域事業本部に対して、〔1〕 取扱要領の遵守の徹底を図ること及び〔2〕 同年12月以降、毎月、与信限度額設定状況、カード交付状況及び販売代金回収状況を各事業所から上部部局へ報告させることを指示する文書を発した。
(ウ) 各地域事業本部では、上記の指示を受けて、販売管理体制を整備するとともに、同年11月以降、各事業所において、各代理店との契約の見直しの作業に着手した。
(エ) NTT本社では、事業所における与信限度額の設定、運用等が適切に行われているかどうかの審査及び的確な指導を上部部局が十分行えるよう「テレホンカード販売代理店管理システム」(仮称)の開発を開始し、4年度に導入することとした。