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  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 工事|
  • (北海道旅客鉄道株式会社)

駅本屋屋上の防水修繕工事の施行に当たり、下地調整樹脂モルタルを全く打設していないなど、その施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの


(240) 駅本屋屋上の防水修繕工事の施行に当たり、下地調整樹脂モルタルを全く打設していないなど、その施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの

科目 (款)鉄道事業営業費 (項)線路保存費
部局等の名称 北海道旅客鉄道株式会社本社
工事名 (1) 千歳空港本屋1号屋上防水修繕工事(平成元年度)
(2) 千歳空港旅客上家1号外3棟塗装修繕他(平成2年度)
工事の概要
駅本屋屋上の既設防水層が経年劣化したため、平成元、2両年度にこれを修繕するなどの工事

工事費 (1) 2,806,677円
(2) 13,650,590円
16,457,267円
請負人 (1) 札幌パーカライジング株式会社
(2) 日営建設株式会社
契約 (1) 平成元年9月 随意契約
(2) 平成 2年9月 随意契約
しゅん功検査 (1) 平成元年10月
(2) 平成 2年11月
支払 (1) 平成元年11月
(2) 平成2年12月
目的を達していない工事の額 (1) 2,806,677円
(2) 4,459,900円
7,266,577円
 上記の両工事において、監督及び検査が適切でなかったため、防水修繕工事計920m2 (工事費相当額7,266,577円)の施工が、下地調整樹脂モルタルを全く打設していないなど設計と著しく相違したものとなっていて、工事の目的を達していないと認められる。

1 工事の概要

 これらの工事は、千歳空港駅の駅本屋屋上の既設防水層920m2 が経年劣化して雨漏りの原因となっていたため、北海道旅客鉄道株式会社が、平成元年度に既設防水層のうち397.8m2 の防水修繕工事を、また、2年度に残りの522.2m2 の防水修繕工事などを施行したものである。そして、それぞれの工事費は2,806,677円及び13,650,590円である。
 この防水修繕工事は、塗膜ウレタン防水工法(露出非歩行用)により既設の防水層の上に新たな防水層を重ねるもので、設計図書等に基づき、次のような手順により施工することとなっていた(参考図参照)

(ア) 既設防水層の表面の凹凸をならし、(ウ)のシートとの接着面を均一にしたり、接着性を高めたりするなどのため、既設防水層の全面にわたって下地調整樹脂モルタル(元年度は厚さ10mm、2年度は厚さ20mm)を打設する。

(イ) 接着剤として、プライマーを1m2 当たり0.3kg塗布する。

(ウ) 溝付独立発泡ポリエチレンシート(注) (厚さ3.0mm)を敷く。

(エ) 防水塗膜として、耐熱カラーウレタンを1m2 当たり1.0kgで2層塗布する。

(オ) 仕上げとして、トップコート(アクリルウレタン系塗料)を1m2 当たり0.2kg塗布する。

(注) 溝付独立発泡ポリエチレンシート 泡状の空間が中にあるポリエチレン製のシートで、裏面に亀甲状の細かい溝が設けられている。そして、下地から発生する膨張した空気を分散・緩和し、脱気筒から空気を抜いて防水層の膨れを防ぐ機能がある。

2 検査の結果

 本件防水修繕工事の施工状況について調査したところ、次のように適切とは認められないものとなっていた。

(ア) 元年度施工分については、防水層に膨れが発生していた。

(イ) 2年度施工分については、同会社において、工事のしゅん功後に発生した防水層の膨れを押さえようとして、膨れの原因を十分究明することなく、防水層表面の全面に設計には無いモルタル等を打設させていた。そして、このモルタルの全面に多数の亀裂が生じていた。

 上記のように防水層に膨れを生じていたことなどから防水層をはがして調査したところ、設計上打設することとなっている下地調整樹脂モルタルは、元年度施工分及び2年度施工分とも全く施工されていなかった。
 このため、溝付独立発泡ポリエチレンシートと既設防水層とが十分に接着せず、このことなどにより防水層の膨れが発生したものである。そして、この防水層の膨れによって、防水層の経年劣化が著しく早められ、所期の防水効果が発現されないことになると認められる。
 したがって、本件駅本屋屋上防水修繕工事(工事費相当額元年度2,806,677円、2年度4,459,900円、計7,266,577円)は、監督及び検査が適切でなかったため、その施工が設計と著しく相違したものとなっていて、工事の目的を達していないと認められる。

(参考図)

(参考図)