会社名 | (1) | 東日本旅客鉄道株式会社 |
(2) | 東海旅客鉄道株式会社 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社 |
科目 | (収入) | ||
(1) | (款)関連事業収益 | (項)直営店舗等収入 | |
(2) | (款)関連事業営業収益 | (項)販売収入 | |
(3) | (款)関連事業営業収益 | (項)販売収入 | |
(費用) | |||
(1) | (款)鉄道事業営業費 | (項)運輸費 | |
(款)関連事業営業費 | (項)営業費 | ||
(項)関連事業管理費 | |||
(2) | (款)鉄道事業営業費 | (項)運輸費 | |
(款)関連事業営業費 | (項)営業費 | ||
(項)関連事業管理費 | |||
(3) | (款)鉄道事業営業費 | (項)運輸費 | |
(款)関連事業営業費 | (項)営業費 | ||
(項)関連事業管理費 |
部局等の名称 | (1) | 東日本旅客鉄道株式会社東京地域本社ほか8支社等 |
(2) | 東海旅客鉄道株式会社東海鉄道事業本部ほか2支社等 | |
(3) | 九州旅客鉄道株式会社本社ほか4支社 |
売上収入 | (1) | 25,737,329千円 |
(2) | 3,599,253千円 | |
(3) | 7,422,061千円 | |
費用 (本院計算による) |
(1) | 29,894,612千円 |
(2) | 4,449,846千円 | |
(3) | 8,804,016千円 | |
収支差損 (本院計算による) |
(1) | 4,157,283千円 |
(2) | 850,593千円 | |
(3) | 1,381,955千円 |
<検査の結果> |
上記の各会社では、駅施設、鉄道用地、人材等社内の経営資源を最大限活用することにより、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤を確立することを目的として直営店舗事業を展開している。 しかし、各会社では、直営店舗事業については売上収入と売上原価の対比を行う程度にとどまり、この事業全体の収支を把握するのに必要な収支管理を行っていない。そこで、本院において、売上原価以外の費用も含めて各会社の平成2年度の直営店舗事業の収支状況について調査したところ、いずれの会社においても全体として費用が売上収入を大幅に上回り、費用超過となっていることが判明した。さらに、昭和63年度以前に設置した店舗の収支状況をみると、大多数の店舗が費用超過となっていて、売上収入が費用のうち人件費にも満たないものなどが多数見受けられた。そして、費用超過となっている店舗のうち大半の店舗で設置後の推移を勘案した見直しが十分行われておらず、管理が十分でない状況となっていた。 |
<改善の意見表示> |
直営店舗事業については、全体の収支に多額の損失を生じている状況にかんがみ、各店舗の収支状況を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗の要員配置、立地条件、顧客の動向等を的確に把握する要がある。そして、これによって店舗ごとの管理を強化して各店舗の損益分岐点を明確にするなどして、収益性の向上に必要な具体的対策を講じ、収支改善を図る要があると認められた。また、今後新たに店舗を設置するに当たっても、上記の諸点に留意して、適切な設置及び管理を図る要があると認められた。 上記のように認められたので、会計検査院法第36条の規定により、平成3年12月6日に東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社の代表取締役社長に対してそれぞれ改善の意見を表示した。 |
(平成3年12月6日付け 東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。
記
1 直営店舗事業の概要
貴会社では、東京駅ほか296駅の構内において、物品販売、飲食等の店舗を設置し直接経営する事業(以下「直営店舗事業」という。)を行っており、平成2年度末現在の直営店舗数は物品販売等(以下「物販」という。)324店舗、飲食237店舗、計561店舗となっている。
直営店舗事業は、貴会社が、関連事業の一環として、他の関連事業(駅構内での構内営業者による物品販売店、飲食店等の構内営業、鉄道広告事業、土地建物等の不動産貸付事業等)とともに展開している事業である。この事業は、駅施設、鉄道用地、人材等貴会社の経営資源を最大限活用することにより、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立することを目的としている。そして、この事業は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営再建の一環として収入の確保、余剰人員の活用を目的として設置していた店舗のうち302店舗を貴会社が引き継ぎ、貴会社発足後において事業を継続しているものである。
上記事業を実施するに当たり、貴会社では本社に関連事業本部を設置し、直営店舗事業の基本的な経営方針等の策定を行っている。これを受けて支社等では管内の直営店舗が必要とする商品及び原材料の仕入について納入業者と契約を締結するほか、直営店舗の管理等の業務を行っている。そして、各直営店舗は、上記の支社等と納入業者との契約に基づき商品及び原材料を仕入れて営業し、売上収入及び売上原価を支社等に報告している。
貴会社で2年度中に営業していた628店舗(物販377店舗、飲食251店舗。2年度中に廃止した67店舗を含む。)の売上収入は、物販203億7964万余円、飲食119億4748万余円、計323億2712万余円となっている。これを店舗別にみると、物販22万余円から5億4025万余円(1店舗平均5405万余円)、飲食17万余円から3億2509万余円(同4759万余円)となっている。
2 本院の検査結果
貴会社では、直営店舗事業について売上収入と売上原価の対比を行う程度にとどまり、この事業全体の収支を把握するに必要な収支管理を行っていない状況である。しかし、直営店舗事業は、前記の目的のもとに展開している事業であることから、実際にその目的の達成に寄与しているかどうかについて検討するため、この事業の収支状況等を検査することとした。
本院において、2年度の直営店舗事業に係る売上収入と売上原価、人件費(各店舗で、直接、販売等に従事する社員に係るもの)、業務費(光熱水料、消耗品費、通信費等)、一般管理費(本社及び支社等において直営店舗事業の管理等の業務を行う社員の人件費等)及び減価償却費の各費用を店舗ごとに把握し、これに基づき収支の差額及び収支率を計算してみた。その結果、同年度中に営業していた628店舗の売上収入は323億2712万余円、費用は382億4845万余円となっていて、全体として費用が売上収入を大幅に上回り、59億2132万余円の費用超過となっていることが判明した。
上記628店舗のうち、直営店舗として定着するまである程度の期間を要することを考慮し、昭和63年度以前に設置した499店舗(物販310店舗、飲食189店舗)のみの収支状況についてみると、次のような状況になっていた。
この499店舗の収支は、売上収入257億3732万余円(物販161億0531万余円、飲食96億3201万余円)、費用298億9461万余円(物販180億6637万余円、飲食118億2823万余円)となっていて、費用が売上収入を大幅に上回り、物販19億6106万余円、飲食21億9621万余円、計41億5728万余円の費用超過となっている。これを店舗別にみると、499店舗中416店舗(物販250店舗、飲食166店舗)が費用超過となっていて、その割合は83%と高いものとなっている。そして、費用超過となっている416店舗の1店舗当たりの収支の差額は下表のとおりであり、平均で1155万余円となっていて、なかには9871万余円となっているものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
△500万円以下 | △1000万円以下 | △1500万円以下 | △2000万円以下 | △2000万円超 | |
物販 | 65 | 105 | 48 | 13 | 19 | |
飲食 | 30 | 33 | 49 | 19 | 35 | |
合計 | 95 | 138 | 97 | 32 | 54 |
また、499店舗の収支率は下表のとおりであり、平均で116%(物販112%、飲食122%)となっていて、なかには収支率が2,409%と極めて高いものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
100%以下 | 150%以下 | 200%以下 | 250%以下 | 250%超 | |
物販 | 60 | 152 | 50 | 15 | 33 | |
飲食 | 23 | 81 | 39 | 23 | 23 | |
合計 | 83 | 233 | 89 | 38 | 56 |
そして、費用超過となっている416店舗のうちには、売上収入が費用のうち人件費及び売上原価を合わせた額に満たないものが338店舗(物販213店舗、飲食125店舗)、さらに、売上収入が費用のうち人件費にも満たないものが145店舗(物販75店舗、飲食70店舗)となっている状況である。
上記のように499店舗中416店舗は費用超過となっているが、これら店舗は、事業を展開するに当たり、各店舗ごとの要員配置、設置場所、取扱品目、営業時同等について、設置当初の管理形態等をそのまま維持しているものが大半で、その後の各店舗の利用状況、売上状況等の推移を勘案した見直しが十分行われておらず、直営店舗事業の管理が十分でない状況となっていた。
その主な事例を示すと、次のとおりである。
売上収入(A) | 費用(うち人件費)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 30,007 |
千円 66,101(42,368) |
千円 △36,094(△12,361) |
63年4月、旅客等を対象として駅構内に設置されたそば、うどんを扱う通年営業の飲食店であるが、駅構内、駅周辺の既存の店舗と競合する場所に設置されていて利用客が十分確保できないのに、利用客(1日平均127人)に比較して要員(10人)が多数配置されている。
売上収入(A) | 費用(うち人件費)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 15,187 |
千円 29,389(21,443) |
千円 △14,202(△6,256) |
60年4月、自由通路脇に設置された喫茶店であるが、同駅構内には、従来から、喫茶店、軽食等同業種の構内営業者による店舗が4店舗あることを十分考慮しないまま設置されたため、店舗の利用者は1日平均100人で営業時間(10時間)、店舗規模(56m2 )等からみて少ないものとなっている。
売上収入(A) | 費用(うち人件費)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 8,419 |
千円 20,306(13,108) |
千円 △11,887(△4,689) |
62年10月、通勤通学客を対象に設置されたパン等を扱う軽食店で、同店では、半製品を加工して販売しているが、需要見込みの検討が不十分であったなどのため、売れ残ったものの廃棄量が多く、その平均ロス率は10%程度と市中の同業者に比べて高いものとなっている。
このような状況となっているのは、直営店舗事業を展開するに当たり、国鉄当時から収入の確保を目的として収入管理を中心に行い、費用の把握を十分に行ってこなかったこと、鉄道事業に従事しなくなった社員の活用を図ることに重点をおいた管理を行っていることなどによるものである。また、このようなことを背景として、上記のとおり、各店舗ごとの収支計算を踏まえた管理等が不十分であったことなどにもよるもので、これらのことが、費用超過の大きな原因となっていると認められた。
直営店舗事業については、社内の人材を活用するという一面はあるものの、費用超過になっている店舗がその大部分を占め、直営店舗事業全体の収支において多額の損失を生じている。したがって、早急に適切な対応策を講じないでこのまま推移すると、今後も収支の改善が図られない状況が継続するばかりでなく、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立するとして展開している直営店舗事業の目的に沿わないことになると認められる。
3 本院が表示する改善の意見
直営店舗事業については、全体の収支に多額の損失を生じている状況にかんがみ、各店舗の収支状況を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗の要員配置、立地条件、顧客の動向等を的確に把握する要がある。そして、これによって店舗ごとの管理を強化して各店舗の損益分岐点を明確にするなどして、収益性の向上に必要な具体的対策を講じ、収支改善を図る要があると認められる。また、今後新たに店舗を設置するに当たっても、上記の諸点に留意して、適切な設置及び管理を図る要があると認められる。
(平成3年12月6日付け 東海旅客鉄道株式会社代表取締役社長あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。
記
1 直営店舗事業の概要
貴会社では、豊橋駅ほか42駅の構内において、物品販売、飲食の店舗を設置し直接経営する事業(以下「直営店舗事業」という。)を行っており、平成2年度末現在の直営店舗数は物品販売(以下「物販」という。)32店舗、飲食36店舗、計68店舗となっている。
直営店舗事業は、貴会社が、関連事業の一環として、他の関連事業(駅構内での構内営業者による物品販売店、飲食店等の構内営業、鉄道広告事業、土地建物等の不動産貸付事業等)とともに展開している事業である。この事業は、駅施設、鉄道用地、人材等貴会社の経営資源を最大限活用することにより、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立することを目的としている。そして、この事業は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営再建の一環として収入の確保、余剰人員の活用を目的として設置していた店舗のうち57店舗を貴会社が引き継ぎ、貴会社発足後において事業を継続しているものである。
上記事業を実施するに当たり、貴会社では本社に関連事業本部を設置し、関連事業本部は直営店舗事業全般の基本的な経営方針等の策定を行っている。そして、東海鉄道事業本部直轄の直営店舗が必要とする商品及び原材料の仕入については東海鉄道事業本部が、また、支社等管内の直営店舗が必要とする商品及び原材料の仕入については支社等がそれぞれ納入業者と契約を締結し、直営店舗の管理等の業務を行っている。そして、各直営店舗は、上記の東海鉄道事業本部等と納入業者との契約に基づき商品及び原材料を仕入れて営業し、売上収入及び売上原価を東海鉄道事業本部等に報告している。
貴会社で2年度中に営業していた75店舗(物販34店舗、飲食41店舗。2年度中に廃止した7店舗を含む。)の売上収入は、物販29億2565万余円、飲食13億1517万余円、計42億4082万余円となっている。これを店舗別にみると、物販801万余円から7億5268万余円(1店舗平均8604万余円)、飲食760万余円から8778万余円(同3207万余円)となっている。
2 本院の検査結果
貴会社では、直営店舗事業について売上収入と売上原価等の対比を行う程度にとどまり、この事業全体の収支を把握するに必要な収支管理を行っていない状況である。しかし、直営店舗事業は、前記の目的のもとに展開している事業であることから、実際にその目的の達成に寄与しているかどうかについて検討するため、この事業の収支状況等を検査することとした。
本院において、2年度の直営店舗事業に係る売上収入と売上原価、人件費(各店舗で、直接、販売等に従事する社員に係るもの)、業務費(光熱水料、消耗品費、通信費等)、一般管理費(本社及び支社等において直営店舗事業の管理等の業務を行う社員の人件費等)及び減価償却費の各費用を店舗ごとに把握し、これに基づき収支の差額及び収支率を計算してみた。その結果、同年度中に営業していた75店舗の売上収入は42億4082万余円、費用は52億0108万余円となっていて、全体として費用が売上収入を大幅に上回り、9億6025万余円の費用超過となっていることが判明した。
上記75店舗のうち、直営店舗として定着するまである程度の期間を要することを考慮し、昭和63年度以前に設置した66店舗(物販30店舗、飲食36店舗)のみの収支状況についてみると、次のような状況になっていた。
この66店舗の収支は、売上収入35億9925万余円(物販24億2987万余円、飲食11億6937万余円)、費用44億4984万余円(物販26億8185万余円、飲食17億6798万余円)となっていて、費用が売上収入を大幅に上回り、物販2億5198万余円、飲食5億9861万余円、計8億5059万余円の費用超過となっている。これを店舗別にみると、66店舗中63店舗(物販27店舗、飲食36店舗)が費用超過となっていて、その割合は95%と高いものとなっている。そして、費用超過となっている63店舗の1店舗当たりの収支の差額は下表のとおりであり、平均で1386万余円となっていて、なかには4770万余円となっているものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
△500万円以下 | △1000万円以下 | △1500万円以下 | △2000万円以下 | △2000万円超 | |
物販 | 14 | 0 | 9 | 0 | 4 | |
飲食 | 10 | 0 | 10 | 7 | 9 | |
合計 |
24 | 0 | 19 | 7 | 13 |
また、66店舗の収支率は下表のとおりであり、平均で123%(物販110%、飲食151%)となっていて、なかには収支率が296%と高いものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
100%以下 | 150%以下 | 200%以下 | 250%以下 | 250%超 | |
物販 | 3 | 23 | 3 | 1 | 0 | |
飲食 | 0 | 16 | 12 | 4 | 4 | |
合計 |
3 | 39 | 15 | 5 | 4 |
そして、費用超過となっている63店舗のうちには、売上収入が費用のうち人件費及び売上原価を合わせた額に満たないものが53店舗(物販20店舗、飲食33店舗)、さらに、売上収入が費用のうち人件費にも満たないものが18店舗(物販1店舗、飲食17店舗)となっている状況である。
上記のように66店舗中63店舗は費用超過となっているが、これら店舗は、事業を展開するに当たり、各店舗ごとの要員配置、設置場所、取扱品目、営業時間等について、設置当初の管理形態等をそのまま維持しているものが大半で、その後の各店舗の利用状況、売上状況等の推移を勘案した見直しが十分行われておらず、直営店舗事業の管理が十分でない状況となっていた。
その主な事例を示すと、次のとおりである。
売上収入(A) | 費用(うち人件費)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 87,783 |
千円 135,490(101,660) |
千円 △47,707(△13,877) |
62年4月、コンコース内に設置された喫茶、軽食の店舗であるが、同一コンコース内だけでも、喫茶、軽食等同業種の既存の店舗が6店舗あることを十分考慮しないまま設置されたため、これらの店舗と競合し利用客が十分確保できていない状況であるのに、要員17人を配置している。
売上収入(A) | 費用(うち人件費と売上原価)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 38,540 |
千円 57,537(48,693) |
千円 △18,997(△10,153) |
61年1月、通勤通学客を対象に駅舎横に設置されたファーストフード店であるが、民間の類似店舗と比ベパン、飲料等の取扱品目が半数程度と少ないなどのため、利用客が十分確保できていない状況となっている。
このような状況となっているのは、直営店舗事業を展開するに当たり、国鉄当時から収入の確保を目的として収入管理を中心に行い、費用の把握を十分に行ってこなかったこと、鉄道事業に従事しなくなった社員の活用を図ることに重点をおいた管理を行っていることなどによるものである。また、このようなことを背景として、上記のとおり、各店舗ごとの収支計算を踏まえた管理等が不十分であったことなどにもよるもので、これらのことが、費用超過の大きな原因となっていると認められた。
直営店舗事業については、社内の人材を活用するという一面はあるものの、費用超過になっている店舗がその大部分を占め、直営店舗事業全体の収支において多額の損失を生じている。したがって、早急に適切な対応策を講じないでこのまま推移すると、今後も収支の改善が図られない状況が継続するばかりでなく、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立するとして展開している直営店舗事業の目的に沿わないことになると認められる。
3 本院が表示する改善の意見
直営店舗事業については、全体の収支に多額の損失を生じている状況にかんがみ、各店舗の収支状況を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗の要員配置、立地条件、顧客の動向等を的確に把握する要がある。そして、これによって店舗ごとの管理を強化して各店舗の損益分岐点を明確にするなどして、収益性の向上に必要な具体的対策を講じ、収支改善を図る要があると認められる。また、今後新たに店舗を設置するに当たっても、上記の諸点に留意して、適切な設置及び管理を図る要があると認められる。
(平成3年12月6日付け 九州旅客鉄道株式会社代表取締役社長あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。
記
1 直営店舗事業の概要
貴会社では、門司駅ほか67駅の構内において、物品販売、飲食の店舗を設置し直接経営する事業(以下「直営店舗事業」という。)を行っており、平成2年度末現在の直営店舗数は物品販売(以下「物販」という。)64店舗、飲食68店舗、計132店舗となっている。
直営店舗事業は、貴会社が、関連事業の一環として、他の関連事業(駅構内での構内営業者による物品販売店、飲食店等の構内営業、鉄道広告事業、土地建物等の不動産貸付事業等)とともに展開している事業である。この事業は、駅施設、鉄道用地、人材等貴会社の経営資源を最大限活用することにより、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立することを目的としている。そして、この事業は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営再建の一環として収入の確保、余剰人員の活用を目的として設置していた店舗のうち59店舗を貴会社が引き継ぎ、貴会社発足後において事業を継続しているものである。
上記事業を実施するに当たり、貴会社では本社に関連事業本部を設置し、関連事業本部は直営店舗事業全般の基本的な経営方針等の策定を行っている。そして、本社直轄の直営店舗が必要とする商品及び原材料の仕入については関連事業本部が、また、支社管内の直営店舗が必要とする商品及び原材料の仕入については支社がそれぞれ納入業者と契約を締結し、直営店舗の管理等の業務を行っている。そして、各直営店舗は、上記の関連事業本部等と納入業者との契約に基づき商品及び原材料を仕入れて営業し、売上収入及び売上原価を関連事業本部等に報告している。
貴会社で2年度中に営業していた143店舗(物販67店舗、飲食76店舗。2年度中に廃止した11店舗を含む。)の売上収入は、物販75億7381万余円、飲食19億4864万余円、計95億2246万余円となっている。これを店舗別にみると、物販77万余円から5億4223万余円(1店舗平均1億1304万余円)、飲食217万余円から9463万余円(同2564万余円)となっている。
2 本院の検査結果
貴会社では、直営店舗事業について売上収入と売上原価の対比を行う程度にとどまり、この事業全体の収支を把握するに必要な収支管理を行っていない状況である。しかし、直営店舗事業は、前記の目的のもとに展開している事業であることから、実際にその目的の達成に寄与しているかどうかについて検討するため、この事業の収支状況等を検査することとした。
本院において、2年度の直営店舗事業に係る売上収入と売上原価、人件費(各店舗で、直接、販売等に従事する社員等に係るもの)、業務費(光熱水料、消耗品費、通信費等)、一般管理費(本社及び支社等において直営店舗事業の管理等の業務を行う社員の人件費等)及び減価償却費の各費用を店舗ごとに把握し、これに基づき収支の差額及び収支率を計算してみた。その結果、同年度中に営業していた143店舗の売上収入は95億2246万余円、費用は115億5247万余円となっていて、全体として費用が売上収入を大幅に上回り、20億3001万余円の費用超過となっていることが判明した。
上記143店舗のうち、直営店舗として定着するまである程度の期間を要することを考慮し、昭和63年度以前に設置した100店舗(物販44店舗、飲食56店舗)のみの収支状況についてみると、次のような状況になっていた。
この100店舗の収支は、売上収入74億2206万余円(物販58億8944万余円、飲食15億3261万余円)、費用88億0401万余円(物販65億2418万余円、飲食22億7983万余円)となっていて、費用が売上収入を大幅に上回り、物販6億3474万余円、飲食7億4721万余円、計13億8195万余円の費用超過となっている。これを店舗別にみると、100店舗中88店舗(物販33店舗、飲食55店舗)が費用超過となっていて、その割合は88%と高いものとなっている。そして、費用超過となっている88店舗の1店舗当たりの収支の差額は下表のとおりであり、平均で1690万余円となっていて、なかには8130万余円となっているものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
△500万円以下 | △1000万円以下 | △1500万円以下 | △2000万円以下 | △2000万円超 | |
物販 | 8 | 5 | 5 | 0 | 15 | |
飲食 | 9 | 13 | 10 | 14 | 9 | |
合計 |
17 | 18 | 15 | 14 | 24 |
また、100店舗の収支率は下表のとおりであり、平均で118%(物販110%、飲食148%)となっていて、なかには収支率が361%と高いものが見受けられた。
(単位:店舗)
区分
\
業種別
|
100%以下 | 150%以下 | 200%以下 | 250%以下 | 250%超 | |
物販 | 11 | 25 | 6 | 0 | 2 | |
飲食 | 1 | 22 | 22 | 7 | 4 | |
合計 |
12 | 47 | 28 | 7 | 6 |
そして、費用超過となっている88店舗のうちには、売上収入が費用のうち人件費及び売上原価を合わせた額に満たないものが65店舗(物販17店舗、飲食48店舗)、さらに、売上収入が費用のうち人件費にも満たないものが15店舗(物販2店舗、飲食13店舗)となっている状況である。
上記のように100店舗中88店舗は費用超過となっているが、これら店舗は、事業を展開するに当たり、各店舗ごとの要員配置、設置場所、取扱品目、営業時同等について、設置当初の管理形態等をそのまま維持しているものが大半で、その後の各店舗の利用状況、売上状況等の推移を勘案した見直しが十分行われておらず、直営店舗事業の管理が十分でない状況となっていた。
その主な事例を示すと、次のとおりである。
売上収入(A) | 費用(うち人件費)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 12,207 |
千円 27,524(15,631) |
千円 △15,317(△3,424) |
63年1月、若年層の利用を見込んで設置された軽食店であるが、主たる取扱品目であるアイスクリームの需要が下降してきているのに、取扱品目をそのままにして販売を続けているため、利用者は1日平均69人と営業時間(11時間)からみて少ない状況となっている。
売上収入(A) | 費用(うち人件費と売上原価)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 92,994 |
千円 174,298(139,727) |
千円 △81,304(△46,733) |
63年3月、駅舎横に設置された手作りパンを扱う店で、同店では、半製品を加工して販売しているが、需要見込みの検討が不十分であったなどのため、売れ残ったものの廃棄量が多く、その平均ロス率は13.2%と市中の同業者に比べて高いものとなっている。
売上収入(A) | 費用(うち人件費と売上原価)(B) | 収支差額(A-B) |
千円 20,859 |
千円 41,540(29,018) |
千円 △20,681(△8,159) |
62年12月、うどん専門店として設置された店舗であるが、コンコース内に設置されているため、利用者が旅客に限定されその数は1日平均49人と営業時間(9時間)からみて少ないものとなっている。
このような状況となっているのは、直営店舗事業を展開するに当たり、国鉄当時から収入の確保を目的として収入管理を中心に行い、費用の把握を十分に行ってこなかったこと、鉄道事業に従事しなくなった社員の活用を図ることに重点をおいた管理を行っていることなどによるものである。また、このようなことを背景として、上記のとおり、各店舗ごとの収支計算を踏まえた管理等が不十分であったことなどにもよるもので、これらのことが、費用超過の大きな原因となっていると認められた。
直営店舗事業については、社内の人材を活用するという一面はあるものの、費用超過になっている店舗がその大部分を占め、直営店舗事業全体の収支において多額の損失を生じている。したがって、早急に適切な対応策を講じないでこのまま推移すると、今後も収支の改善が図られない状況が継続するばかりでなく、鉄道事業収入に次ぐ収入を確保し、安定的かつ健全な経営基盤をできる限り早期に確立するとして展開している直営店舗事業の目的に沿わないことになると認められる。
3 本院が表示する改善の意見
直営店舗事業については、全体の収支に多額の損失を生じている状況にかんがみ、各店舗の収支状況を把握したうえで、大幅な費用超過となっている店舗の要員配置、立地条件、顧客の動向等を的確に把握する要がある。そして、これによって店舗ごとの管理を強化して各店舗の損益分岐点を明確にするなどして、収益性の向上に必要な具体的対策を講じ、収支改善を図る要があると認められる。また、今後新たに店舗を設置するに当たっても、上記の諸点に留意して、適切な設置及び管理を図る要があると認められる。