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義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(7)−(18) 義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金
(項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 宮城県ほか11都府県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 宮城県ほか11都府県(昭和63年度1県、平成元年度8都府県、2年度9都府県)
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 昭和63年度 40,567,521,537円
平成元年度 383,329,114,915円
平成2年度 585,858,015,741円
1,009,754,652,193円
不当と認める国庫負担金交付額 164,086,012円
 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、教職員給与費等について、教職員の実数及び学級数又は学校数などを基にして算定された教職員の標準定数を基礎とし、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところなどにより算定することとなっている。しかし、上記の12事業主体では、教職員の標準定数を過大に算定したり、国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりなどしていたため、国庫負担金164,086,012円が不当と認められる。

1 国庫負担金の概要

(義務教育費国庫負担金等の交付)

 義務教育費国庫負担金及び養護学校教育費国庫負担金は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)等に基づき、公立の義務教育諸学校(注1) に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、その実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1(昭和63年度においては、一部の経費について3分の1、平成元年度においては、一部の経費について8分の3又は3分の1、2年度においては、一部の経費について3分の1)を国が負担するため都道府県に交付されるものである。ただし、国庫負担対象額については、「義務教育費国庫負担法第2条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令」(昭和28年政令第106号)等により、都道府県の財政力に応じて、その最高限度が定められている。

 この国庫負担対象額の最高限度は、次によることとなっている。

(1) 地方交付税の交付団体である都道府県について

 教職員の職種区分及び休職者等の区分ごとに、教職員給与費等の種類ごとの実支出額から次の額を控除すやなどして算定した額の合計額

〔1〕 教職員の実数(注2) と標準定数(注3) とを比較して、実数が標準定数を超過する場合に、その超過する割合を給料等の実支出額に乗じて算定した額

〔2〕 退職手当等については、国家公務員の例に準じて文部大臣が大蔵大臣と協議して定めるところにより算定した額を超過した額

〔3〕 教育委員会事務局、教育関係団体等の学校以外の教育機関等に勤務する教職員に係る給与費等

(2) 地方交付税の不交付団体である都道府県について

 当該年度の5月1日現在において算定した教職員の標準定数の合計数に、同日現在における休職者等の数を加えるなどして教職員定数を算定し、この教職員定数に、毎年度教職員給与費等の種類ごとに別に政令で定める額を乗ずるなどして算定した額の合計額

(注1) 義務教育諸学校 小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部
(注2) 実数 毎月1日現在の職種区分(校長教諭等、学校栄養職員、事務職員など)ごとの実際の教職員の数。この数には、休職者、「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)に基づき臨時的に任用されている者等の数は含めないことになっている。
(注3) 標準定数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に定める方法により、都道府県全体の公立の義務教育諸学校について、学校の種類(小学校、中学校など)、職種区分ごとに算定された毎月の教職員の数。この数は、校長教諭等にあっては、学級数等を基とし、学校栄養職員、事務職員等にあっては、学校数等を基として算定されることになっている。

2 検査の結果

 検査の結果、地方交付税の交付団体である宮城県ほか9府県及び不交付団体である東京都及び大阪府において国庫負担金164,086,012円が過大に交付されていて不当と認められる。

 これを態様別に示すと次のとおりである。

(1) 地方交付税の交付団体である都道府県について
〔1〕 事務職員や学校栄養職員の実数の算定を誤っていたもの 福島、千葉両県
〔2〕 校長教諭等や事務職員の標準定数の算定を誤っていたもの 群馬、沖縄両県
〔3〕 退職手当について、国家公務員の例に準ずるべき額の算定を誤っていたもの
宮城、岐阜、兵庫各県
〔4〕 学校以外の教育機関等に勤務する教員の給与費等を含めて算定していたもの
京都府、岡山、徳島両県
(2) 地方交付税の不交付団体である都道府県について教職員定数の算定を誤っていたもの
東京都、大阪府

 これを、都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名 年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
(義務教育費国庫負担金)
(7) 宮城県 98,643,462 47,375,257 6,435 3,217
 宮城県では、定年に達したことにより退職した教員のうち、2人(勤続期間16年及び21年)について、同県の定めたそれぞれの勤続期間に応じた支給率を適用して算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、国家公務員の例に準じて文部大臣が定めたところ(以下「文部大臣の定め」という。)によれば、退職手当の算定に当たっては、上記の支給率よりも低率な支給率を適用することとなっているのに、上記の教員について、同県の定めた高率な支給率を適用して算定した退職手当により、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が6,435,834円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、47,372,039,356円となり、3,217,917円が過大に交付されていた。

(8) 福島県 2 118,013,807 57,375,305 33,561 16,182
 福島県では、教職員の毎月の実数を算定するに当たり、休暇中の事務職員の代替として任用されている職員のうち一部の職員(毎月2人から17人)を、事務職員の毎月の実数に含めていなかった。

 しかし、上記の職員は、事務職員の毎月の実数に含めなければならない者であるのに、これらの者を含めることなく実数が標準定数を超過する割合を算定し、これに基づいて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が33,561,442円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、57,359,123,656円となり、16,182,221円が過大に交付されていた。

(9) 群馬県 63 84,881,647 40,567,521 10,832 5,186
 群馬県では、校長教諭等の標準定数を算定するに当たり、小学校2校において、第3学年と第4学年との児童数の合計及び第5学年と第6学年との児童数の合計がそれぞれ18人以下である場合に、標準学級数(注) を第4学年と第5学年を併せて1学級とし第3学年と第6学年をそれぞれ1学級としていた。また、小学校1校において、第5学年と第6学年との児童数の合計が18人以下である場合に、標準学級数を各学年それぞれ1学級としていた。

 しかし、第2学年以上で引き続く2の学年を併せた児童数の合計が18人以下である場合には、標準学級数を1学級とすることとなっている。そして、上記のような場合の標準学級数は、第3学年と第4学年及び第5学年と第6学年をそれぞれ併せて各1学級とすべきであるのに、このような取扱いをしないで標準学級数を算定したのは誤りである。このため、校長教諭等の標準定数が3人過大になっていた。

 この結果、国庫負担対象額が10,832,586円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、40,562,334,548円となり、5,186,989円が過大に交付されていた。

(注)  標準学級数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」等に規定する学級編制の標準により算定した学級数で、標準定数を算定する際の基礎となる。
(10) 千葉県 2 215,078,652 104,306,373 97,361 46,998
 千葉県では、教職員の毎月の実数を算定するに当たり、休暇中の事務職員又は学校栄養職員の代替として任用されている職員のうち一部の職員(事務職員については毎月5人から29人、学校栄養職員については毎月1人から4人)を、事務職員又は学校栄養職員の毎月の実数に含めていなかった。

 しかし、上記の職員は、事務職員又は学校栄養職員の毎月の実数に含めなければならない者であるのに、これらの者を含めることなく実数が標準定数を超過する割合を算定し、これに基づいて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が97,361,283円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、104,259,375,349円となり、46,998,616円が過大に交付されていた。

 

(11) 岐阜県 92,898,164 44,626,037 5,127 2,563
2 98,975,955 48,089,576 5,392 2,696
小計 191,874,120 92,715,614 10,519 5,259
 岐阜県では、平成元年度及び2年度に勧奨を受けて退職した教員のうち、元年度2人(勤続期間21年及び23年)、2年度1人(同19年)について、同県の定めたそれぞれの勤続期間に応じた支給率を適用して算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、退職手当の算定に当たっては、上記の支給率よりも低率な支給率を適用することとなっているのに、上記の教員について、同県の定めた高率な支給率を適用して算定した退職手当により、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が元年度5,127,712円、2年度5,392,062円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度44,623,473,918円、2年度48,086,880,326円となり、元年度2,563,856円、2年度2,696,031円がそれぞれ過大に交付されていた。

(12) 京都府 98,750,606 47,445,740 24,436 12,218
 京都府では、教育委員会事務局に勤務する教員1人に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、教育委員会事務局に勤務する教員は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る退職手当を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が24,436,947円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、47,433,521,816円となり、12,218,473円が過大に交付されていた。

(13) 大阪府 293,933,511 140,376,299 6,602 3,154
2 308,919,506 149,452,269 21,186 10,253
小計 602,853,017 289,828,569 27,788 13,407
 大阪府では、事務職員の標準定数を算定するに当たり、要保護・準要保護児童生徒(注1) の数が一定の要件を満たし事務職員の加算(注2) の対象となる小学校及び中学校の数を、平成元年度は126校、2年度は116校としていた。

 しかし、上記の学枚数には、5月1日現在要保護・準要保護児童生徒に該当しない生徒の数を含めるなどしていたため上記の要件を満たさない学校が、元年度は中学校2校、2年度は中学校4校含まれているのに、これらを含めて算定したのは誤りである。このため、事務職員の標準定数が元年度は1人、2年度は3人過大に算定されており、これに伴い、教職員定数が元年度は1人、2年度は3人過大になっていた。

 この結果、国庫負担対象額が元年度6,602,354円、2年度21,186,433円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度140,373,145,614円、2年度149,442,016,078円となり、元年度3,154,307円、2年度10,253,015円がそれぞれ過大に交付されていた。

(注1)  要保護・準要保護児童生徒 「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」(昭和31年法律第40号)等に基づき、就学が困難なことにより国から援助を受けている児童又は生徒
(注2)  事務職員の加算 事務職員の標準定数は学校数に応じて算定されるが、要保護・準要保護児童生徒の数が100人以上で、当該数のその学校における児童又は生徒の総数に対する割合が100分の25以上の要件を満たす学校がある場合には、その学校数に応じて事務職員を加算することとなっている。
(14) 兵庫県 2 238,109,993 115,655,057 7,912 3,956
 兵庫県では、勧奨を受けて退職した教職員のうち、先に公務員として在職して退職手当の支給を受けて退職し、引き続いて教職員となった者5人(勤続期間28年から30年)について、同県の定めた規定により、先に公務員として在職した期間を通算するなどした勤続期間に応じた支給率を適用して算定した退職手当により国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、文部大臣の定めによれば、退職手当の算定に当たっては、上記の場合、先に公務員として在職した期間を除いた教職員としてのそれぞれの勤続期間に応じた支給率を適用することとなっているのに、同県の定めた規定による支給率を適用するなどして算定した退職手当により、国庫負担対象額を算定したのは誤りである。 この結果、国庫負担対象額が7,912,157円過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、115,651,101,247円となり、3,956,078円が過大に交付されていた。

(15) 岡山県 88,805,427 42,655,293 6,853 3,221
2 94,082,213 45,695,417 6,157 2,990
小計 182,887,641 88,350,710 13,011 6,211
 岡山県では、教育関係団体に勤務する教員(平成元年度及び2年度とも3人)に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、教育関係団体に勤務する教員は国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が元年度6,853,861円、2年度6,157,714円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度42,652,071,777円、2年度45,692,427,110円となり、元年度3,221,658円、2年度2,990,218円がそれぞれ過大に交付されていた。

(16) 徳島県 44,209,181 21,241,312 4,256 2,011
2 47,172,648 22,916,859 5,695 2,738
小計 91,381,829 44,158,172 9,952 4,749
 徳島県では、教育委員会事務局に勤務する教員(平成元年度及び2年度とも1人)に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定していた。

 しかし、教育委員会事務局に勤務する教員は国庫負担の対象にならないものであるから、この者に係る給与費等を含めて国庫負担対象額を算定したのは誤りである。

 この結果、国庫負担対象額が元年度4,256,940円、2年度5,695,238円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度21,239,301,322円、2年度22,914,121,111円となり、元年度2,011,300円、2年度2,738,476円がそれぞれ過大に交付されていた。

(17) 沖縄県 71,284,334 34,238,339 17,298 8,341
2 75,437,526 36,640,058 9,316 4,541
小計 146,721,861 70,878,397 26,615 12,882
 沖縄県では、教職員の標準定数を算定するに当たり、1市の設置する中学校において、1学級を編制する生徒の数をすべての学年について40人として標準学級数を算定していた。

 しかし、上記の市は児童減少市町村に該当しないので、平成元年度は第2学年及び第3学年、2年度は第3学年については1学級を編制する生徒の数を45人として算定することとなっているのに、このような取扱いをしないですべての学年について40人として標準学級数を算定したのは誤りである。このため、標準学級数が元年度は中学校4校で6学級、2年度は中学校3校で3学級過大に算定され、これに伴い、元年度は校長教諭等及び事務職員の標準定数が計7人、2年度は校長教諭等の標準定数が3人過大になっていた。

 この結果、国庫負担対象額が元年度17,298,758円、2年度9,316,290円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度34,229,998,245円、2年度36,635,516,868円となり、元年度8,341,191円、2年度4,541,148円がそれぞれ過大に交付されていた。

(注) 標準学級数の算定に当たっては、中学校の場合、平成元年度から3年度の間に、それぞれ第1学年から順次、1学級を編制する生徒の数を45人から40人に移行させることとしている。ただし、児童減少市町村(昭和55年3月1日現在において、54年度から57年度までの間、公立の小学校に在学する児童の数が毎年減少することとなると見込まれていた市町村)については61年度から63年度の間に同様の措置を行った。
(養護学校教育費国庫負担金)
(18) 東京都 11,226,324 5,370,834 51,106 24,429
2 11,813,055 5,727,098 19,380 9,384
小計 23,039,379 11,097,932 70,487 33,814
 東京都では、校長教諭等の標準定数を算定するに当たり、その算定の基礎となる学級数を、平成元年度は774学級、2年度は797学級としていた。

 しかし、上記の学級数には、都の学級編制基準により学級設置の認可は行ったが5月1日現在児童又は生徒が在籍していない学級が、元年度は5学級、2年度は4学級含まれているのに、これらを含めて標準定数を算定したのは誤りである。このため、校長教諭等の標準定数が元年度は8人、2年度は6人過大に算定されており、これに伴い、教職員定数が元年度は8人、2年度は3人過大になっていた。

 この結果、国庫負担対象額が元年度51,106,261円、2年度19,380,743円それぞれ過大に算定されていた。

 したがって、適正な国庫負担対象額に基づき国庫負担金を算定すると、元年度5,346,404,520円、2年度5,717,713,320円となり、元年度24,429,645円、2年度9,384,873円がそれぞれ過大に交付されていた。

(7)-(18) の計 63 84,881,647 40,567,521 10,832 5,186
799,751,012 383,329,114 122,118 59,158
2 1,207,603,358 585,858,015 205,963 99,740
合計 2,092,236,019 1,009,754,652 338,914 164,086