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国立大学の授業料の免除が不当と認められるもの


(24) 国立大学の授業料の免除が不当と認められるもの

会計名及び科目 国立学校特別会計 (款)授業料及入学検定料
 (項)授業料及入学検定料
部局等の名称 静岡大学
授業料免除の根拠 国立学校設置法(昭和24年法律第150号)
授業料免除の概要 国立大学の学生に対し、経済的理由によって納付が困難であり、かつ、学業優秀と認める場合に、授業料の納付を免除するもの
授業料の免除額 平成3年度 延べ 1,119人 181,686,000円
不当と認める免除額 平成3年度 延べ 356人 30,198,450円
 
 上記の大学において、授業料の免除に当たって、制度の理解が十分でなかったなどのため、半額しか免除できないのに全額免除したり、免除できないのに免除したりしていて、学生延べ356人に対する免除額計30,198,450円が不当と認められる。

1 授業料免除の概要

(授業料の免除)

 国立大学では、学生の奨学援護の一環として修学継続を容易にするため、国立学校設置法(昭和24年法律第150号)等に基づき、経済的理由によって授業料の納付が困難であり、かつ、学業優秀と認められる場合に、一定の範囲内で、免除を受けようとする学生の申請に基づいて授業料の納付を免除している。そして、この授業料の免除は、「国立学校の授業料等免除及び徴収猶予取扱要領」(昭和35年文部大臣裁定。以下「取扱要領」という。)に基づいて、各大学において免除する学生の選考基準を定めて実施することとなっており、静岡大学では、取扱要領に基づき「静岡大学授業料等免除選考要項」(以下「静岡大選考要項」という。)を定めている。また、この取扱要領では、免除の取扱いは年度を前期と後期に分け各期ごとに行うこと、免除の額は学生が属する世帯の所得に応じて、原則として各期分の授業料の全額又は半額とすることとなっている。

(経済的困窮度の判定)

 経済的困窮度の判定は、文部省高等教育局長が定めた「授業料免除選考基準の運用について」(昭和61年文高学第268号。以下「運用通知」という。)により、次のとおり行うこととなっている。

 すなわち、学生が属する世帯の1年間の総所得金額と、世帯の所在地域の区分、構成人員等の別に応じて定める「全額免除に係る収入基準額表」又は「半額免除に係る収入基準額表」の基準額とを比較して、総所得金額が全額免除の基準額以下の場合は全額免除とし、これを超え半額免除の基準額以下の場合は半額免除とする。このうち、総所得金額は、総収入金額(学生の属する世帯の前年1年間における金銭等のすべての収入額で、学生本人等が得ている各種奨学金等を含む。)から必要経費及び所定の特別控除額を控除して得た額とする。

(静岡大学における授業料の免除)

 静岡大選考要項では、学生が属する世帯の1年間の総所得金額と、この要項の収入基準額表(以下「静岡大基準額表」という。)に定める基準額とを比較して、総所得金額が基準額以下の者を授業料免除の対象者とすることとしている。

 そして、同大学では、平成3年度に、総所得金額が「静岡大基準額表」の基準額以下の者を授業料免除の対象者として選考し、延べ1,119人全員を全額免除者として計181,686,000円を免除していた。

2 検査の結果

(不適切な事態)

 検査の結果、同大学において、授業料を半額しか免除できないのに全額免除したり、免除できないのに免除したりしていて、学生数延べ356入に対する免除額計30,198,450円が不当と認められる。これは、授業料の免除に当たって、制度の理解が十分でなかったことなどによるものである。

(態様別の区分)

 上記の授業料免除が適切に行われていなかった事態について、その態様を示すと次のとおりである。

(ア) 収入基準額表の適用を誤ったもの

 免除の判定に当たり、運用通知によれば半額免除しかできない者にも一律に全額免除していた。

 これは、同大学が、「静岡大基準額表」において、全額免除又は半額免除に係る収入基準額を区分せず、運用通知で定める半額免除に係る収入基準額を同表の収入基準額としていたこと、また、この「静岡大基準額表」を適用して、収入基準額以下の者について、一律に全額免除していたことによるものである。

 したがって、授業料を全額免除された者について、運用通知で定める「全額免除に係る収入基準額表」及び「半額免除に係る収入基準額表」によるなどして適切に判定すると、全額免除者1,119人のうち345人が半額免除者となり、免除できない額は28,318,050円である。

(イ) 総所得金額の算定を誤ったもの

 総所得金額の算定に当たり、学生本人の奨学金や学生の属する世帯の収入を、総収入金額に加算していなかったなどの誤りがあり、総所得金額を適正に算定すると、全額免除者1,119人のうち11人については授業料を免除できないこととなり、免除できない額は1,880,400円である。