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  • 平成3年度|
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厚生年金保険の老齢厚生年金の支給が適正でなかったもの


(26) 厚生年金保険の老齢厚生年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 社会保険庁
支給の相手方 4人
老齢厚生年金の支給額の合計 10,210,198円
不適正支給額 6,890,321円
 老齢厚生年金の支給に当たり、審査に当たる府県の社会保険事務所において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、上記の4人に対して6,890,321円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

1 保険給付の概要

 (支給の要件、給付額)

 厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照 )において行う給付には、老齢厚生年金、老齢年金及び通算老齢年金などがある。

 このうち、老齢厚生年金は、所定の被保険者期間を満たしている者が一定の年齢に達したときに受給権者となるものである。その給付額は、〔1〕 受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕 配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっている。

 (支給の停止)

 老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の適用事業所に雇用され、被保険者となっている間は、次のとおり、年金の額の一部又は全部について支給を停止することとなっている。

〔1〕 受給権者が60歳未満である場合は年金の額の全部(加給年金額を含む。)の支給停止

〔2〕 受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注1) の区分に応じ、基本年金額の100分の20から100分の80に相当する部分又は全部(加給年金額を含む。)の支給停止

 (支給停止の手続)

 この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

(ア) 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに雇用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額等のほか、受給権を有することを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて都道府県の社会保険事務所に提出する。

(イ) 社会保険事務所は、これを調査確認のうえ、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定する。

(注1)  標準報酬等級 第1級80,000円から第30級530,000円までの等級に区分されているもので、被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。

2 検査の結果

 (検査の対象)

 栃木県ほか5府県の9社会保険事務所において、厚生年金保険の年金受給権者で被保険者となっている者等180人について、老齢厚生年金等の支給の適否を検査した。

 (不適正支給の事態)

 検査したところ、栃木県ほか2府県で、老齢厚生年金の受給権者4人に対する支給(支給額10,210,198円)について、6,890,321円が不適正に支給されていた。これは、栃木県ほか2府県の3社会保険事務所(注2) において、受給権者又は事業主が制度を十分理解しておらず、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、社会保険庁で年金の支給停止をしていなかったことによるものである。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。

(注2)  栃木県ほか2府県の3社会保険事務所 (栃木県)今市社会保険事務所、(埼玉県)大宮社会保険事務所、(京都府)京都西社会保険事務所