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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(27)−(111) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省

(項)老人福祉費

(項)国民健康保険助成費
(項)生活保護費
厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか27都府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法及び生活保護法に基づく医療
実施主体 国、道府県11、市337、特別区23、町435、村35、国民健康 保険組合62、計904実施主体
医療機関 公立15、法人53、個人23、計91医療機関
不当と認める国の負担額 261,602,447円
 上記の904実施主体において、看護料、処置料、診察料等の診療報酬の支払に当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費467,764,277円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額261,602,447円が不当と認められる。

1 医療給付の概要

 (医療給付の種類)

 厚生省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。

(ア) 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法及び国民健康保険法(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者又は65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行ぅ医療

(イ) 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者((ア)の老人を除く。)に対して行う医療

(ウ) 公費負担医療制度の一環として、都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療

 (診療報酬)

 これらの医療給付においては、被保険者(生活保護法に基づく要保護者を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)がその費用を医療機関に診療報酬として支払う。

 診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)

診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(下図参照)。

(ア) 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数に単価(10円)を乗じて算定する。

(イ) 医療機関は、上記診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、老人保健に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県、市又 は福祉事務所を設置する町村に請求する。

このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。

 〔1〕 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に送付する。

 〔2〕 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

(ウ) 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認のうえ、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。

 (国の負担)

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。

(ア) 老人保健法に係る医療費については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、地方公共団体及び保険者が以下のように負担している(下図参照)

 〔1〕 老人保健法により国は老人医療費の20%を、都道府県・市町村はそれぞれ5%を負担することになっている。残り70%については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。なお、平成4年1月以降、老人医療費のうちの老人保健施設療養費等に係る費用の負担割合については、国、都道府県及び市町村の負担が30%から50%に引き上げられ、老人医療費拠出金は残り50%とされている。

 〔2〕 国民健康保険法により国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の一部を負担している。(3年度における国の負担額は老人医療費の約12%)

 〔3〕 健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(3年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

〔3〕健康保険法等により国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。(3年度における国の負担額は老人医療費の約21%)

 (注) ( )書きは、平成4年1月以降の老人保健施設療養費等に係る費用の負担割合である。

(イ) 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費はその全額を、〔2〕 市町村が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該市町村が支払った額の50%を、〔3〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は当該国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。

(ウ) 生活保護法に係る医療費については、国は都道府県、市又は福祉事務所を設置する町村が支払った医療費の4分の3を負担している。

2 検査結果の概要

 前記の904実施主体(91医療機関)が行った診療報酬の支払について、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費467,764,277円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額261,602,447円が不当と認められる。

 これを診療報酬の別に整理して示すと、次のとおりである。

〔1〕 看護料の支払が適切を欠いたもの
187実施主体(13医療機関) 不当と認める国の負担額 68,559,496円
〔2〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの
119実施主体(11医療機関) 不当と認める国の負担額 55,348,405円

〔3〕 診察料の支払が適切を欠いたもの

37実施主体(21医療機関) 不当と認める国の負担額 38,345,371円
〔4〕 検査料等の支払が適切を欠いたもの
461実施主体(13医療機関) 不当と認める国の負担額 30,027,812円

〔5〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの

274実施主体(19医療機関) 不当と認める国の負担額 29,191,759円
〔6〕 運動療法料等の支払が適切を欠いたもの
31実施主体(6医療機関) 不当と認める国の負担額 17,554,684円
〔7〕 室料等の支払が適切を欠いたもの
64実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 12,834,140円
〔8〕 在宅療養料等の支払いが適切を欠いたもの
57実施主体(4医療機関) 不当と認める国の負担額 9,740,780円

 3 検査結果の詳細

 上記の診療報酬の支払が不当と認められる事態について、診療報酬の別に、その算定方法及び医療機関における実際の算定・請求等の詳細を示すと次のとおりである。

 〔1〕 看護料の支払が適切を欠いたもの

 (看護料の算定方法)

 看護料は、入院料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この看護料には、都道府県知事の承認を得て、厚生大臣の定める基準に該当する看護(以下「基準看護」という。)を行った場合に算定できる看護料(以下「基準看護料」という。)と、それ以外の場合に算定する看護料(以下「その他の看護料」という。)とがある(下図参照)

 このうち基準看護料は、看護婦(厚生大臣の免許を受けて看護に当たる者、以下「正看護婦」という。)、准看護婦(都道府県知事の免許を受けて看護に当たる者)及び看護助手(以下「看護職員」と総称する。)1人当たりの入院患者数並びに看護職員のうち、正看護婦の占める割合、正看護婦及び准看護婦の占める割合(いずれも看護職員の最小必要数に対する割合。以下同じ。)等に応じて特3類看護料以下14種類の看護料に区分される。例えば、基準看護料のうち特3類看護料の承認要件は、〔1〕 看護職員の1人当たりの入院患者数が2人以下であること、〔2〕 看護職員のうち正看護婦の占める割合が5割以上であること、〔3〕 看護職員のうち正看護婦及び准看護婦の占める割合が8割以上であること、〔4〕 入院患者の平均在院日数が20日以内であることなどとされている。

 そして、基本看護料等の点数は、老人の患者については入院期間が6月を超える場合、6月以内の点数よりも1日につき10点低く定められている。

 都道府県知事は、医療機関が、基準看護の承認を得た後に当該看護の所定の要件を満たさなくなった場合には、変更の申請をさせることになっている。また、基準看護の承認を得ている医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、看護職員の員数等を記載した定時報告書を徴して審査を行うことになっている。

医療費に係る国の負担が不当と認められるものの図1

(注)  看護料の点数は、入院期間に応じて逓減するよう定められており、( )書きはこのうち最も高い点数である。

 (検査の結果)

 検査の結果、北海道函館市ほか12市町に所在する13医療機関において、看護料の請求が不適正と認められるものが8,207件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 看護職員のうち正看護婦の数が、基準看護のいずれの要件をも満たさなくなっており、最も点数の低いその他の看護料を算定すべきであるのに、変更の申請を行わないまま1類看護料等を算定していた。

(イ) 看護職員のうち正看護婦の数が、特2類看護又は結核・精神2類看護等の要件を満たさず、それぞれ点数の低い特1類看護又は結核・精神3類看護等に該当することになっているのに、変更の申請を行わないまま特2類看護料又は結核・精神2類看護料等を算定していた。

(ウ) 看護職員1人当たりの入院患者数が、特2類看護の要件を満たさず、点数の低い特1類看護に該当することになっているのに、変更の申請を行わないまま特2類看護料を算定していた。

(エ) 特1類看護料等の請求に当たり、入院期間が6月を超える老人の患者について入院6月以内の場合の高い点数により算定するなどしていた。

(オ) 看護職員のうち正看護婦の数が要件を満たさず、基準看護に係る知事の承認を得ていないのに、結核・精神基本看護料を算定していた。

(カ) 入院患者の平均在院日数が20日を上回っていて、特3類看護の要件を満たさず、点数の低い特2類看護に該当することになっているのに、変更の申請を行わないまま特3類看護料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)、(イ)、(ウ)及び(カ)については、県において医療機関から別途提出される定時報告書の活用などが十分でなく、また、(エ)及び(オ)については、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。

 このため、上記の8,207件の請求に対し北海道函館市ほか186市町村等が支払った医療費について101,657,303円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額68,559,496円は負担の要がなかったものである。 これを医療機関の所在する道県別に示すと次のとおりである。

道県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(27)

北海道

函館市ほか15町

831
千円
2,062
千円
1,269

看護料の支払不適切
(28) 愛知県 名古屋市ほか同45市町等 479 4,483 2,864

(29) 島根県 能義郡伯太町ほか4市町等 494 15,346 11,530 看護料の支払不適切
(30)  同 飯石郡三刀屋町ほか6町村等 167 6,004 4,518

(31) 岡山県 岡山市ほか13市町 693 1,949 1,081

(32)  同 倉敷市ほか6市等 964 33,258 23,944

(33)  同 玉野市ほか17市町等 1,641 14,847 8,830

(34) 香川県 大川郡白鳥町ほか11市町村等 401 5,081 3,508

(35) 長崎県 佐世保市ほか17市町等 1,013 9,094 5,316

(36)  同 島原市ほか13市町 135 1,714 1,063

(37)  同 南高来郡小浜町ほか25市町等 215 2,251 1,279

(38) 宮崎県 都城市ほか27市町等 803 1,247 655

(39) 鹿児島県 曽於郡末吉町ほか16市町等 371 4,315 2,698

小計 8,207 101,657 68,559

 〔2〕 処置料等の支払が適切を欠いたもの

 (処置料の算定方法)

 処置料には一般処置料、救急処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。

 このうち、一般処置料の人工腎臓に係る処置については、外来の人工腎臓実施患者に対して人工腎臓実施中に食事を給与した場合は、所定の点数に食事加算をし、この場合において医療用食品(注1) を給与したときは更に医療用食品加算をすることとされている。また、人工腎臓に使用される特定治療材料の購入価格は、厚生省告示で定められており、この価格には回路の費用が含まれていて、2年4月に低い価格に変更されている。 

 また、一般処置料の酸素吸入及び救急処置料の人工呼吸については、これらの処置の際に使用した精製水の費用は、それぞれの所定の点数に含まれるものとされている。

 (検査の結果)

 検査の結果、北海道函館市ほか10市区町に所在する11医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが15,950件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 特例許可老人病院入院医療管理料(注2) の承認を受けている病院では、同管理料の所定の点数には投薬、検査、注射及び看護の費用が含まれでいる。このため、これらの費用を別途に算定することはできないことになっているが、処置料等については別途に算定することができるので、その承認後、収入の増加を図るため皮膚科軟膏処置料を架空請求していた。

(イ) 人工腎臓に係る処置において、人工腎臓実施中に食事を給与した際に、医療用食品を使用した事実がないなど医療用食品加算の要件を満たしていないのに、所定の点数に医療用食品加算を行っていた。

(ウ) 人工腎臓に使用される特定治療材料について、変更前の高い価格の点数で算定していた。

(エ) 人工腎臓に使用される特定治療材料の購入価格に含まれている回路の費用を、別途に算定していた。

(オ) 酸素吸入及び人工呼吸の所定の点数に含まれている精製水の費用を、別途に算定していた。

(カ) 特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」という。)が本来の業務として行った運動機能回復訓練を、特養ホームの診療所が行った消炎鎮痛処置料として算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなかった。特に(ア)については、審査支払機関等において、当該医療機関の処置料の請求額が、承認以降急激に増加していることを看過していた。
  このため、注射料、特例許可老人病院入院医療管理料の算定を誤っているものも含めて、上記の 15,950件の請求に対して北海道函館市ほか118市区町村等が支払った医療費について110,378,257円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額55,348,405円は負担の要がなかったものである。 

(注1)  医療用食品 主として入院患者の給食に用いられることを目的とする食品であって、厚生大臣が指定する検査機関において調理加工後の栄養成分が分析され、かつ、当該栄養成分分析値が保たれている食品

(注2)  特例許可老人病院入院医療管理料 特例許可老人病院入院患者の心身の特性を踏まえ、介護職員等を重点的に配置しているとして、別に厚生大臣が定める基準に適合していると都道府県知事が承認した病棟に収容されている患者について1日当たりの所定の点数で算定される。

 これを医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(40)

北海道

函館市ほか5町等

854
千円
1,055
千円
753

処置料の支払不適切
(41) 東京都 大田区ほか14市区等 1,221 1,424 772

(42)  同 葛飾区ほか3区等 581 4,310 2,401 処置料及び注射料の支払不適切
(43) 石川県 金沢市ほか11市町等 243 1,306 764 処置料の支払不適切
(44)  同 松任市ほか8市町等 691 1,078 772

(45) 静岡県 沼津市ほか28市町村等 1,387 72,467 32,530 処置料及び特例許可老人病院入院医療管理料の支払不適切
(46) 愛知県 名古屋市ほか9市町等 1,420 1,094 634 処置料の支払不適切
(47) 滋賀県 近江八幡市ほか4町等 154 14,816 8,909 処置料の支払不適切
(48) 京都府 北桑田郡京北町 1,966 3,535 2,050
(49) 島根県 出雲市ほか13市町等 983 1,233 783
(50) 熊本県 熊本市ほか29市町村等 6,450 8,056 4,976
小計 15,950 110,378 55,348

 〔3〕 診察料の支払が適切を欠いたもの

 (診察料の算定方法)

 診察料には、初診料、再診料、老人外来医学管理料等があり、それぞれの診察ごとに所定の点数が定められている。このうち、初診料は患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定できることとされている。また、老人外来医学管理料は、老人の心身の特性を踏まえ、厚生大臣が定める慢性疾患を主病とする入院中の患者以外の患者に対して、計画的な医学的管理を継続して行った場合に、1月に1回を限度として算定できることとされている。ただし、特養ホームに配置されている医師(以下「嘱託医」という。)が特養ホームにおいてその入所者に行っている診療については、その診療が別途国の補助事業として実施されている老人福祉施設保護事業の一環として行われているものであることから、診察料は算定できないこととされている。そのため、患者が特養ホームの入所者である場合には、レセプトにその旨を表示することとされている。

 (検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか18市町に所在する21医療機関において、診察料の請求が不適正と認められるものが18,664件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 特養ホームの嘱託医が特養ホームにおいて入所者に行った診療について、初診料、再診料、老人外来医学管理料等を算定していた。

(イ) 嘱託医となっていない医師が、特養ホームの入所者からの往診の求めによってではなく、定期的に特養ホームヘ赴いて入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には嘱託医と認められるのに、その医師が行った診療について、(ア)と同様に初診料、再診料、老人外来医学管理料等を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、レセプトに患者が特養ホームの入所者である旨が表示されているものについては審査支払機関等においてその審査点検が十分でなく、また、その旨が表示されていないものについては市等において特養ホームの入所者か否かについての点検が十分でなかった。

 このため、上記の18,664件の請求に対し北海道札幌市ほか36市町村等が支払った医療費について74,844,272円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額38,345,371円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する道県別に示すと次のとおりである。

道県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(51)

北海道

札幌市

521
千円
2,301
千円
1,490

診察料の支払不適切
(52) 青森県 弘前市ほか1県 734 4,288 2,458
(53) 神奈川県 横浜市 2,074 7,878 3,525
(54)  同 大和市ほか1市 834 1,831 773
(55) 長野県 長野市ほか1県 502 4,629 2,290
(56) 愛知県 一宮市 458 1,288 697
(57) 滋賀県 彦根市 2,087 4,303 2,246
(58) 兵庫県 相生市ほか2町 189 2,418 994
(59)  同 加古川市 473 2,106 906
(60)  同 宝塚市 818 2,898 1,427
(61) 鳥取県 鳥取市ほか4町村等 2,630 4,465 2,439
(62) 岡山県 岡山市ほか1町 1,473 6,840 3,271 診察料の支払不適切
(63) 広島県 広島市ほか2市等 384 1,174 682
(64)  同 呉市 483 2,972 1,440
(65)  同 因島市 914 4,965 2,739
(66) 福岡県 八女市ほか6町村等 402 3,690 1,878
(67) 熊本県 熊本市ほか2市等 273 1,051 596
(68) 鹿児島県 鹿児島市ほか1市 1,591 12,270 6,590
(69) 沖縄県 具志川市 1,824 3,468 1,896
小計 18,664 74,844 38,345

 〔4〕 検査料等の支払が適切を欠いたもの

 (検査料の算定方法)

 検査料は、尿検査、血液化学検査等の検体検査料及び心電図検査、超音波検査等の生体検査料に分類されており、それぞれの種類ごとに所定の点数が定められている。また、検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととし、診療上必要があると認められる範囲において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。

 そして、検体検査料のうち一定の血液化学検査料については、それらの検体について20項目以上の検査を一括して行った場合は、項目の種類、回数によらず、上限として定められた点数(260点)で算定すること、また、尿及び血液を検体とする生化学的検査を実施した場合は、尿と血液の検査項目数を合算することなどとされている。

 また、救命救急医療で救命救急入院料を算定する場合には、尿検査、心電図検査等の検査料は、同入院料に含まれていることから別途に算定できないこととされている。

(検査の結果)

 検査の結果、宮城県仙台市ほか11市区に所在する13医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが25,185件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 多くの入院患者について検体検査や生体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定していた。

(イ) ほとんどの患者について、毎月、20項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を2回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定していた。

(ウ) 尿及び血液を検体とする生化学的検査を実施するに当たり、尿の検査項目と血液の検査項目とを別々に算定することにより、その都度生化学的検査料を算定していた。

(エ) 救命救急医療で救命救急入院料を算定しているほかに、尿検査、心電図検査等の検査料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等において、医療機関からほとんどの患者に対し画一的に同一の検査を行ったとする請求がなされていることなどを看過し、更に(ア)については、検査の項目とレセプトに記載された傷病名とが対応していないものが多数あることを看過していた。

 このため、診察料、処置料の算定を誤っているものも含めて、上記の25,185件の請求に対し宮城県仙台市ほか460市区町村等が支払った医療費について58,268,896円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額30,027,812円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する都府県別に示すと次のとおりである。

都府県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(70)

宮城県

仙台市ほか71市町村等

680
千円
2,306
千円
1,376

検査料及び処置料の支払不適切
(71) 東京都 文京区ほか229市区町村等 2,487 9,206 4,935 検査料の支払不適切
(72)  同 板橋区ほか131市区町村等 2,002 3,521 1,887
(73) 神奈川県 川崎市ほか48市区町村等 530 1,491 728
(74) 愛知県 名古屋市ほか24市町等 2,384 9,071 5,053
(75)  同 半田市ほか13市町等 3,093 7,274 4,299
(76)  同 半田市ほか22市町等 3,137 2,360 1,249 検査料及び診察料の支払不適切
(77) 京都府 福知山市 749 9,027 3,029 検査料の支払不適切
(78)  同 舞鶴市ほか25市町村等 3,459 9,086 5,057
(79)  同 亀岡市ほか7市町 2,063 1,134 577
(80) 兵庫県 三木市ほか37市町等 3,164 2,370 1,124
(81)  同 加西市ほか25市町等 1,437 1,417 708
小計
25,185 58,268 30,027

 〔5〕 注射料等の支払が適切を欠いたもの

 (注射料の算定方法)

 注射料は、点滴注射、静脈内注射等の注射の種類に応じた技術料の点数に、使用した薬剤に係る薬剤料の点数を加算して算定することになっている。

 このうち、人工腎臓の回路を通して点滴注射、静脈内注射等を行った場合の技術料については算定できないことになっており、救命救急医療で救命救急入院料を算定する場合には、点滴注射及び中心静脈注射に係る精密持続点滴注射料は、同入院料に含まれていることから、別途に算定できないこととされている。

 そして、この注射に使用する薬剤については、厚生大臣が承認した用法等によることを標準とし、患者個々の症状に応じて使用することとされている。

 また、特例許可外老人病院(注) の入院患者についての皮下・筋肉内注射、静脈内注射及び点滴注射の技術料は、入院時医学管理料に含まれていることから、別途に算定できないこととされている。

 (検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか17市区町に所在する19医療機関において、注射料等の請求が不適正と認められるものが12,871件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った点滴注射、静脈内注射等について、人工腎臓の処置料のほかに注射に係る技術料を別途に算定していた。

(イ) 救命救急医療で救命救急入院料を算定しているほかに、点滴注射及び中心静脈注射の精密持続点滴注射に係る技術料の加算を行っていた。

(ウ) 標準とされる用法等によることなく画一的に患者に薬剤を使用し、注射料を算定していた。

(エ) 同一薬効の投薬と注射とを傾向的に併用したり、食事を給与している患者に点滴注射を頻繁に行うなど必要ではないとされる注射を行い注射料を算定していた。

(オ) 特例許可外老人病院において、入院時医学管理料のほかに静脈内注射等の技術料を別途に算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、審査支払機関等においてレセプトの審査点検が十分でなかった。

 このため、検査料、画像診断料及び運動療法料の算定を誤っているものも含めて、上記の12,871件の請求に対して北海道札幌市ほか273市区町村等が支払った医療費について51,162,345円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額29,191,759円は負担の要がなかったものである。

(注)  特例許可外老人病院 特例許可外老人病院は、主として老人慢性疾患の患者を収容する病院であって、医師、看護婦等の配置が、医療法(昭和23年法律第205号)の基準に達しないことなどから特例許可老人病院としての許可や基準看護の承認等を受けていないもの

 これを医療機関の所在する都道県別に示すと次のとおりである。

 

都府県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(82)

北海道

札幌市ほか16市町等

974
千円
1,409
千円
856

注射料の支払不適切
(83) 青森県 八戸市ほか15市町村等 1,530 8,411 3,928
(84) 宮城県 栗原郡築館町ほか11町村等 906 2,158 1,011
(85) 東京都 文京区ほか142市区町村等 1,715 3,329 1,775 注射料及び検査料の支払不適切
(86)  同 台東区ほか10区等 423 1,880 835 注射料の支払不適切
(87)  同 練馬区ほか12市区町等 861 2,131 1,185

(88) 神奈川県 平塚市ほか11市区町等 608 1,533 789

(89) 長野県 塩尻市及び国 593 6,040 4,160 注射料、画像診断料及び運動療法料の支払不適切
(90) 愛知県 名古屋市ほか27市区町村等 449 1,660 985 注射料の支払不適切
(91) 滋賀県 大津市ほか6市町等 713 5,235 2,786

(92) 鳥取県 鳥取市ほか16市町村等 893 4,094 2,300 注射料及び検査料の支払不適切
(93) 岡山県 真庭郡久世町ほか9市町村等 241 1,174 651 注射料の支払不適切
(94) 広島県 広島市ほか4町等 233 1,981 1,082
(95) 愛媛県 八幡浜市ほか10市町等 723 1,407 759
(96) 佐賀県 伊万里市ほか2町等 152 1,203 966
(97) 宮崎県 宮崎市ほか10市町等 508 1,402 800 注射料の支払不適切
(98) 沖縄県 沖縄市ほか4町村等 379 2,897 1,857
(99)  同 石垣市ほか3市町等 970 3,209 2,459
小計
12,871 51,162 29,191

 〔6〕 運動療法料等の支払が適切を欠いたもの

 (運動療法料の算定方法)

 運動療法料には、運動機能回復訓練の内容に応じて複雑な訓練に係るものと簡単な訓練に係るものとがある。このうち、前者は、医師の指導監督の下に1人の従事者が1人の患者に対して重点的に個別的訓練を1対1で40分以上専用施設で行った場合に、後者は、医師の指導監督の下にそれ以外の運動機能回復訓練を15分以上行った場合にそれぞれ算定できることとされている。

 また、常時勤務する専従の理学療法士がいることなど厚生大臣が定める施設基準に適合しているとして都道府県知事が承認した医療機関においては、承認施設として高い点数によって算定できることとされている。そして、都道府県知事は、医療機関が上記の承認後に施設基準の要件を欠くに至った場合には、変更の申請をさせることになっている。

 (検査の結果)

 検査の結果、京都府船井郡丹波町ほか3市に所在する6医療機関において、運動療法料等の請求が不適正と認められるものが5,865件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 特養ホームが本来の業務として行った医師の指導監督の伴わない運動機能回復訓練を、同ホームの診療所が行った連動療法料として算定していた。

(イ) 複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定していた。

(ウ) 常勤の理学療法士が退職したため承認施設に該当しなくなったのに、変更の申請をしないまま従来どおり、承認施設に適用される高い点数で算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)については、府において医療機関に対する指導が十分でなかった。(イ)については、審査支払機関等におけるレセプトの審査点検が十分でなく、運動療法とレセプトに記載された傷病名等とが対応しないものがあることや、ほとんどの患者に対し複雑な訓練を画一的に繰り返し行ったとする請求がなされていることを看過していた。また、(ウ)については、県において、理学療法士の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。

 このため、注射料、処置料の算定を誤っているものも含めて、上記の5,865件の請求に対し京都府船井郡丹波町ほか30市町等が支払った医療費について33,757,693円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額17,554,684円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する府県別に示すと次のとおりである。

府県名
実施主体
不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(100)

京都府

船井郡丹波町

319
千円
1,462
千円
725

運動療法料の支払不適切
(101) 大阪府 大阪市ほか11市町 1,294 11,271 5,091 運動療法料及び注射料の支払不適切
(102)  同 堺市ほか4市町 3,572 11,725 6,566 運動療法料及び処置料の支払不適切
(103) 福岡県 田川市ほか15市町等 680 9,297 5,171 運動療法科の支払不適切
小計 5,865 33,757 17,554

 〔7〕 室料等の支払が適切を欠いたもの

 (室料の算定方法)

 室料は、入院料の一部であり、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この室料については、病院における月平均の入院患者数が、許可を受けた病床数に100分の110を乗じて得た数を超過した場合(以下「定数超過入院」という。)、翌月分の請求に当たり、所定点数に100分の80を乗じて得た点数を用いて算定することとされている。

 また、厚生大臣が定める基準により都道府県知事が承認した病床に、重症者の収容を行った場合は、所定の点数に重症者室料特別加算ができることとされている。この加算の対象となる重症者は、医師又は看護婦が常時監視を要し、随時適切な措置を必要とする患者とされている。

 (検査の結果)

 検査の結果、北海道札幌市ほか3市に所在する4医療機関において、室料等の請求が不適正と認められるものが1,043件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 定数超過入院となっているのに、翌月の室料について前記の率を乗ずることなく算定していた。

(イ) 厚生大臣が定める基準による重症者に該当しないのに、多数の患者について重症者室料特別加算を行っていた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)については、道県において医療機関から別途提出される定時報告書の活用が十分でなく、また、(イ)については、審査支払機関等において、レセプトの審査点検が十分でなかった。

 このため、看護料、入院時医学管理料の算定を誤っているものも含めて、上記の1,043件の請求に対し北海道札幌市ほか63市町村等が支払った医療費について20,871,279円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額12,834,140円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する道県別に示すと次のとおりである。

道県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(104)

北海道

札幌市ほか10市町村等

68
千円
1,392
千円
933

室料、看護料及び入院時医学管理料の支払不適切
(105) 山口県 下関市ほか46市町等 613 11,791 7,014
(106)  同 防府市ほか7市町等 210 4,073 2,335
(107) 沖縄県 石垣市ほか3町村等 152 3,613 2,551 室料の支払不適切
小計 1,043 20,871 12,834

 〔8〕 在宅療養料等の支払が適切を欠いたもの

 (在宅療養料、給食料、投薬料の算定方法)

 在宅療養料のうち寝たきり老人訪問診察料は、常時寝たきりの状態又はこれに準ずる状態にあり家庭において療養を行づている患者に対して、計画的な医学的管理の下に、定期的に訪問して診察を行った場合に算定できることとされている。

 給食料は、都道府県知事の承認を得て、厚生大臣が定める基準による給食(以下「基準給食」という。)を行った場合に、所定の点数に基準給食の点数を加算することとされており、さらに、厚生大臣が定める特別食を給与したときは、この点数を加算することとされている。この基準給食の承認基準は、医療機関を単位として、給食部門が組織化され、かつ、栄養士が必ず置かれているなど給食を担当する職員が適正に配置されていることなどとされている。そして、都道府県知事は、医療機関が基準給食の承認を得た後に承認の内容と異なった事情が生じた場合には、変更の申請をさせることになっている。また、基準給食の承認を得ている医療機関に対しては、毎年、実地調査を行うとともに、申請書記載の事項について報告を徴し審査を行うことになっている。

 投薬料は、調剤料等の技術料の点数に薬剤の価格相当の点数を加算して算定することとされている。そして、薬剤の使用については、厚生大臣が承認した用法、用量等によることを標準とし、患者個々の症状に応じて使用することとされている。 

 (検査の結果)

 検査の結果、千葉県野田市ほか3市町に所在する4医療機関において、在宅療養料、給食料、投薬料の請求が不適正と認められるものが1,899件あった。その態様は次のとおりである。

(ア) 有料老人ホーム内診療所の非常勤の医師が、同診療所で有料老人ホームの患者に対して行った診療について、同医師が開設する診療所から訪問したとして寝たきり老人訪問診察料を算定していた。

(イ) 基準給食に係る知事の承認を得ていないのに、特別食の点数を加算していた。

(ウ) 栄養士が退職していなくなり、基準給食の承認基準に適合しなくなったのに、変更の申請をしないまま従来どおり、基準給食の点数を加算していた。

(エ) 標準とされる用法によることなく画一的に患者に薬剤を投与し、投薬料を算定していた。

 このように医療機関から不適正な請求がなされていたのに、(ア)、(イ)及び(エ)については、審査支払機関等において、レセプトの審査点検が十分でなかった。(ウ)については、県において、栄養士の配置状況に関する資料の活用が十分でなかった。

 このため、上記の1,899件の請求に対し千葉県流山市ほか56市区町等が支払った医療費について16,824,232円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額9,740,780円は負担の要がなかったものである。

 これを医療機関の所在する府県別に示すと次のとおりである。

府県名

実施主体

不当と認める医療費の支払件数 不当と認める医療費 不当と認める国の負担額

摘要


(108)

千葉県

流山市

277
千円
7,594
千円
4,147

在宅療養料の支払不適切
(109) 神奈川県 横浜市ほか31市区町等 721 4,113 2,317 給食料の支払不適切
(110) 愛知県 名古屋市ほか20市町等 384 2,960 1,814 給食料の支払不適切
(111) 京都府 京都市ほか3市 517 2,156 1,460 投薬料の支払不適切
小計 1,899 16,824 9,740

〔1〕 〜〔8〕 の計

89,684 467,764 261,602