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  • 第2章 個別の検査結果|
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空港整備事業の実施に当たり、道路トンネルの覆工コンクリートの施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していなしいもの


(162)(163) 空港整備事業の実施に当たり、道路トンネルの覆工コンクリートの施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していなしいもの

会計名及び科目 空港整備特別会計 (項)空港整備事業費
(項)空港整備事業資金貸付金
部局等の名称 運輸省航空局
補助の根拠 空港整備法(昭和31年法律第80号)
事業主体 和歌山県
補助事業 南紀白浜空港整備事業
補助事業の概要 新空港の建設に伴う付替道路として、平成元年度から4年度に、次の2工事により道路トンネルを施工するもの

(1) 県道白浜紀伊富田停車場線(仮称新鴨居トンネル)工事

(2) 県道白浜紀伊富田停車場線道路工事
事業費 (1) 1,054,519,000円 (平成元〜3年度)

(2) 130,510,270円 (平成3、4両年度)

1,185,029,270円
上記に対する国庫補助金交付額(無利子貸付金を含む。) (1) 527,259,500円 (平成元〜3年度)
(2) 32,705,000円 (平成3年度)
559,964,500円
不当と認める事業費 (1) 12,232,098円
(2) 18,183,000円
30,415,098円
不当と認める国庫補助金交付額(無利子貸付金) (1) 6,116,049円
(2) 9,091,500円
15,207,549円
 上記の補助事業において、道路トンネルの覆工コンクリートの施工が設計と著しく相違したものとなっていて工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額15,207,549円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、和歌山県が、南紀白浜空港整備事業の一環として、西牟婁郡白浜町の県道白浜紀伊富田停車場線のうち新空港の滑走路用地にかかる部分を付け替えるため、平成元年度から4年度までに、道路トンネル延長435mを新設するものである。そして、(1)の工事ではトンネル掘削、ロックボルトの据付け及び覆工コンクリート等を工事費1,054,519,000円(国庫補助金527,259,500円)で、また、(2)の工事では覆工コンクリート等を工事費130,510,270円(国庫補助金65,255,135円、うち3年度末までの交付済額32,705,000円)でそれぞれ施工することとしていた。

 このうち、覆工コンクリート(総延長434.3m)は、トンネル内壁に沿ってコンクリートをアーチ状に打設するもので、トンネルの安定を確保する支保構造の一部となるものである。

 本件各工事において、3年度末までに施工し検査を完了していた覆工コンクリートは延長198.3m((1)工事分156.7m、(2)工事分41.6m)で、このうち延長113.1mの区間については、次のとおり鉄筋コンクリート構造として設計していた(参考図1参照)

(ア) トンネルの出入口である坑口の区間(延長35.6m)については、将来の変化に備えるなどのため、直径19mmの鉄筋で補強した厚さ35cmの鉄筋コンクリート構造とする。

(イ) 在来地形の谷部を盛土した区間(延長77.5m)については、安定計算の結果に基づき、直径16mmの鉄筋を2列に配置して補強した厚さ55cmの鉄筋コンクリート構造とする。

 そして、上記(ア)及び(イ)の覆工コンクリートは、設計図書等によれば、延長10.5mを1打設区間とし、全体を12の区間に分割して打設することとして、次のように施工することとしていた。

 鉄筋は、図面に示されている正しい位置に配置し、コンクリートを打設する際に動かないよう必要に応じて組立用鉄筋を用いて十分堅固に組み立てる。鉄筋コンクリート構造物としての耐久性を考慮しコンクリートと鉄筋との付着強度を十分に発揮させ、鉄筋の腐食を防止するなどのため、鉄筋とコンクリート表面とのコンクリートの厚さは10cm(鉄筋の表面とコンクリートの表面とでは、(ア)の場合90.5mm、(イ)の場合92mmとなる。以下「鉄筋のかぶり」という。)を確保することとし、この鉄筋のかぶりを正しく保つためにスペーサ(注) を適切な間隔に設置する(参考図2参照)

(注)  スペーサ 鉄筋のかぶりを確保するため、鉄筋と型枠との間に設置するプラスチック又はモルタルで作成した部材

2 検査の結果

 上記の鉄筋コンクリート構造の覆工コンクリートの施工状況について検査したところ、トンネルの頂部付近のコンクリート表面に、鉄筋の配置をそのまま示すような格子状の模様が浮きでていたため、施工延長113.1m(コンクリートの打設区同数は12区間)にわたって計504箇所の表面をはつり、覆工コンクリートの鉄筋のかぶりを調査した。 

 その結果、延長83.4m(8打設区間)において調査した369箇所のうち、すべての区間にわたる145箇所で、鉄筋のかぶりが平均4.9cmと設計厚さに比べて大幅に下回っており、特に鉄筋の配筋状況が表面に浮きでていたトンネル頂部付近では、調査した65箇所の平均かぶりが2.6cmとなっていた。  これは、覆工コンクリートの施工に当たり、組立用鉄筋及びスペーサを十分に設置していなかったなど、その施工が粗雑であったため、コンクリートの重量及びその打設時の圧力で鉄筋が所定の位置からずれたことによるものと認められた。

 したがって、覆工コンクリート延長83.4m(工事費相当額(1)工事12,232,098円、(2)工事18,183,000円、計30,415,098円)は、その施工が設計と著しく相違したものとなっていて工事の目的を達していないと認められ、これに係る国庫補助金相当額6,116,049円((1)工事)及び9,091,500円((2)工事)、計15,207,549円が不当と認められる。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)