会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)運輸本省 | (項)船員雇用促進対策事業費 |
部局等の名称 | 北海道運輸局釧路海運支局ほか4海運支局 |
支給の根拠 | 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法(昭和52年法律第94号) |
給付金の種類 | 船員離職者職業転換等給付金(訓練待期手当) |
給付金の内容 | 若年の漁業離職者で船員となろうとする者に対し、職業能力の向上を図るなどのため海運支局が職業訓練を受けるよう指示したときに、当該訓練を受けるまでの待期期間に応じて支給する給付金 |
支給の相手方 | 61人 |
目的に沿わない訓練待期手当の支給額 | 平成2年度 | 11,676,790円 |
平成3年度 | 44,324,500円 | |
計 | 56,001,290円 |
上記の部局において、訓練待期手当の支給に当たり、受給者に対し職業訓練の受講意志等の確認や受講指示を行っていないなどのため、調査した受給者全員が職業訓練を受けていない結果となっていて、漁業離職者の労働力の再開発及び有効活用を図り、早期の再就職を促進しようとする手当支給の目的を達していないと認められた。
このような事態が生じていたのは、運輸省において、職業訓練の受講意志等の確認及び受講指示を適切に行うための具体的な事務処理方法を定めていないこと、海運支局において手当の趣旨等に対する理解が十分でなかったことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成4年10月に地方運輸局に通達を発し、職業訓練の受講意志等の確認及び受講指示を書面により確実に行うこととするなど、事務処理を適切に行うための手続を定めるとともに、海運支局等に本件手当制度等の趣旨を周知するよう指導を徹底させることとする処置を講じた。
1 制度の概要
運輸省では、国際協定の締結に伴う漁船の隻数の縮減により漁業からの離職を余儀なくされた者の再就職を容易にするなどのため、「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法」(昭和52年法律第94号)に基づき、特定の漁業(中型さけ・ます流し網漁業等)に従事していた離職者であって船員となろうとする者を対象として、船員離職者職業転換等給付金を支給している。
この給付金には、訓練待期手当、就職促進手当等7種の手当があり、そのうち訓練待期手当は、若年の離職者に職業訓練を受けさせることによって、その労働力の再開発及び有効活用を図り、早期の再就職を促進することを目的とするものである。
訓練待期手当は、離職日における年齢が35歳未満であって、運輸省の海運支局等から労働の意思及び能力を有するなどの要件を満たすとして漁業離職者求職手帳の発給を受けている者(以下「受給資格者」という。)が、海運支局等の指示する職業訓練を受けるために待期しているときに支給することとなっている。
そして、その支給期間は、海運支局等から職業訓練の受講指示を受けた日から職業訓練が開始される日の前日までの期間(1年を限度とし、船員保険の失業保険金の受給期間を除く。)となっており、支給額は、この期間の日数に、離職前の賃金日額に応じて別に定められた額(平成3年度では2,570円〜5,320円)を乗じた額となっている。
訓練待期手当の支給に当たっては、受給資格者に対し、〔1〕 職業訓練を受ける意志や訓練内容の希望等を確認すること、そして、〔2〕 それに基づき受講指示をすることとし、この場合、速やかに職業訓練の期間、内容、施設等について具体的に指示することとなっている。
2 検査の結果
訓練待期手当の支給額は、2、3両年度で総計8066万余円となっているが、その支給額の多い北海道運輸局管内の3海運支局(注1) 及び東北運輸局管内の3海運支局(注2) において、両年度に支給した99名分、69,474,390円のうち78名分、66,866,150円(2年度17,628,550円、3年度49,237,600円)について、その支給状況等を調査した。
(注1) 北海道運輸局管内の3海運支局 函館、釧路、根室各海運支局
(注2) 東北運輸局管内の3海運支局 小名浜、気仙沼、石巻各海運支局
調査の結果、北海道運輸局管内の釧路、根室両海運支局及び東北運輸局管内の3海運支局において支給された訓練待期手当のうち、本院が調査した61名全員分、56,001,290円(2年度11,676,790円、3年度44,324,500円)について、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
(ア) 北海道運輸局管内の2海運支局(受給者11名、支給額4,440,380円)では、受給資格者に対し、職業訓練の受講指示の前提となる受講意志や希望等の確認を行っておらず、一方では、その受講意志等にかかわりなく受講指示をしていた。しかし、職業訓練を受けるために必要な訓練期間や施設等についての具体的な指示は行っていなかった。
(イ) 東北運輸局管内の3海運支局(受給者50名、支給額51,560,910円)では、受給資格者に対し、職業訓練の受講意志や希望等の確認を行っておらず、受講指示もしていなかった。
このため、61名の受給者は全員、本件手当制度が意図している職業訓練を受講していない結果となっていた。
このように、訓練待期手当を支給しながら、受給者が職業訓練を受けていない事態は、訓練を受けさせることによって漁業離職者の労働力の再開発及び有効活用を図り、早期の再就職を促進しようとする支給の目的を達しておらず、改善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 運輸省において、受給資格者に対する職業訓練受講の意志及び訓練内容の希望等の確認並びに受講指示を適切に行うための具体的な事務処理方法を定めていないこと
(イ) 運輸省及び地方運輸局において、海運支局に対し、法令等に準拠した適切な制度の運用について指導が十分でなかったこと
(ウ) 海運支局において、訓練待期手当の趣旨に対する理解が十分でなかったこと、及び受給者に対し手当の趣旨を周知させるための方策を執っていなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、4年10月に地方運輸局に対し通達を発し、次のとおり、訓練待期手当の支給を適切に行い、その目的の達成を図ることとする処置を講じた。
(ア) 受給資格者に対する職業訓練の受講意志等の確認及び受講指示を、所定の様式の書面により確実に行うこととするなど具体的な手続を定め、事務処理を適切に行うこととした。
(イ) 海運支局等に本件手当制度及び関係法令等の趣旨を周知し、制度の適切な運用が図られるよう指導を徹底させることとした。