会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)運輸本省 | (項)離島振興事業費 |
港湾整備特別会計 | (港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 (項)港湾事業資金貸付金 (項)離島港湾事業資金貸付金 |
部局等の名称 | 第一、第二、第三、第四、第五各港湾建設局 |
補助の根拠 | 港湾法(昭和25年法律第218号)、離島振興法(昭和28年法律第72号)、海岸法(昭和31年法律第101号) |
事業主体 | 都、府1、県7、市2、管理組合1、計12事業主体 |
補助事業 | 宮城県塩釜港ほか11港の港湾整備事業等 |
補助事業の概要 | 港湾及び海岸の整備を計画的に推進するため、港湾施設及び海岸保全施設の整備を行う事業 |
事業費 | 平成2年度 | 2,412,768,590円 |
平成3年度 | 983,457,180円 | |
計 | 3,396,225,770円 | |
上記に対する国庫補助金交付額(無利子貸付金の貸付額を含む。) | 平成2年度 | 1,192,360,904円 |
平成3年度 | 465,121,481円 | |
計 | 1,657,482,385円 | |
低減できた積算額 | 1億3100万円 | |
上記に対する国庫補助金相当額(無利子貸付金の貸付額を含む。) | 6450万円 |
上記の補助事業において、桟橋式岸壁等の支保工費及び型枠費の積算(積算額5億5190万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億3100万円(国庫補助金相当額約6450万円)過大になっていた。
このように積算額が過大になっていたのは、積算の基準において、支保工や型枠の歩掛かりの適用の基準が示されていなかったことなどによるものである。したがって、積算の基準において歩掛かりの適用の基準などを明確にし、補助事業における工事費の積算を適切に行う要があると認められた。
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成4年11月に、支保工や型枠の歩掛かりの適用の基準を示すなどして適切に積算が行われるよう積算の基準を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
1 工事の概要
運輸省では、港湾整備事業等を実施する地方公共団体等の港湾管理者及び海岸管理者(以下「事業主体」という。)に対して毎年度国庫補助金(無利子貸付金を含む。以下同じ。)を交付している。
そして、宮城県ほか11事業主体(注1) では、平成2、3両年度に塩釜港ほか11港において、港湾改修事業又は海岸保全施設整備事業の一環として、桟橋式岸壁、波除堤(注2) 及び護岸を築造する工事を23工事(工事費総額33億9622万余円、国庫補助金16億5748万余円)施行している(参考図参照) 。
これら23工事の施行内容は、次のようになっていた。
(1) 桟橋式岸壁工事について
宮城県ほか9事業主体(注3) では、塩釜港ほか9港において、桟橋式岸壁の新設又は改築工事を19工事(工事費総額26億7834万余円、国庫補助金12億9948万余円)施行している。
このうち、桟橋式岸壁の上部工は、打ち込まれた鋼管杭の上部に、支保工としてH形鋼を架設し、この上に角材を敷き並べて作業足場を確保した後、この支保工上で型枠等の組立てを行い、上部コンクリートを打設し、その後型枠及び支保工を取り外すことにより施工している。
そして、上記19工事の桟橋式岸壁の上部工の支保工費及び型枠費の積算に当たっては、運輸省制定の「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)」(以下「積算基準」という。)に定められた歩掛かりを適用するなどして、支保工費を1億2582万余円、型枠費を3億4994万余円、計4億7576万余円と算定していた。
(2) 波除堤及び護岸工事について
東京都ほか2事業主体(注4) では、東京港ほか2港において、波除堤や護岸の新設又は改築工事を4工事(工事費総額7億1788万余円、国庫補助金3億5800万余円)施行している。
このうち、波除堤等の上部工はおおむね桟橋式岸壁と同様の方法により施工するが、上部コンクリートの底面部は平坦な構造となっている。
そして、上記4工事の波除堤等の型枠費の積算に当たっては、積算基準にその型枠の歩掛かりが示されていないことから、施工方法が類似している桟橋式岸壁の歩掛かりを適用するなどして、型枠費を7615万余円と算定していた。
上記の(1)及び(2)により、23工事の桟橋式岸壁等の上部工の支保工費及び型枠費を計5億5190万余円と算定していた。
2 検査の結果
前記の23工事における桟橋式岸壁等の上部工の支保工費及び型枠費の積算について、その歩掛かりの適用を調査したところ次のようになっていた。
(1) 桟橋式岸壁工事について
積算基準では、桟橋式岸壁の上部工の支保工及び型枠の組立て・取り外しの歩掛かりは、主として海上から作業船を使用して作業する場合のもの(以下「海上歩掛かり」という。)と、主として陸上から直接作業するなどの場合のもの(以下「陸上歩掛かり」という。)とに区分されているが、この両歩掛かりの適用の基準は示されていない。
そこで、両歩掛かりの適用条件について調査したところ、次のとおりとなっていた。
(ア) 海上歩掛かりは、工事施工場所が陸上部から隔たった海域等にあるため陸上からの直接作業が不可能で、支保工や型枠の搬入・搬出、作業員の移動をすべて作業船によって行う場合に適用することを前提としている。
(イ) 陸上歩掛かりは、工事施工場所が既設岸壁等に接続しているためトラッククレーンが工事箇所直近まで進入することが可能であったり、作業員が陸上から支保工上へ移動することが可能であったりする場合に適用することを前提としている。
上記の(ア)、(イ)に基づき前記19工事の積算において適用した歩掛かりについて調査したところ、次のとおりとなっていた。
すなわち、19工事のうち、桟橋の築造形態が横桟橋(既設岸壁等の前面に、水際線に平行に張り出して築造される桟橋)の12工事の場合にはすべての施工区画が、また、縦桟橋(既設岸壁等の前面に、直角方向に突き出して築造される桟橋)の7工事の場合には陸上部直近の施工区画が、いずれも既設岸壁等に接続している。このため、工事箇所直近までトラッククレーンが進入でき、陸上から作業員が支保工上へ移動できるのに、支保工費(11工事)及び型枠費(11工事)について陸上歩掛かりによらず海上歩掛かりを適用していた。
したがって、これらについては陸上部からの施工が可能であるので、作業船の運転経費が多額なため工事費が割高となる海上歩掛かりではなく、陸上歩掛かりを適用すべきであると認められた。
現に、これら19工事では、作業員の移動、支保材の運搬等を陸上から行っていた。
(2) 波除堤等工事について
波除堤等の上部コンクリートの底面部は凹凸がなく平坦で、桟橋式岸壁に比べて構造が単純である。このため、上部コンクリートの型枠は、底面部に使用する型枠が平板であるので、その加工、組立ては桟橋式岸壁に比べて容易であり、同じく底面部が平坦な構造となっている棚式岸壁(注5) の施工形態に相当するものである。
したがって、前記の4工事における波除堤等の型枠費の積算に当たっては、桟橋式岸壁の歩掛かりによることなく、積算基準に定められた「棚式岸壁」の歩掛かりを適用すべきであると認められた。
いま、桟橋式岸壁等の上部工の支保工費及び型枠費の積算に当たり、上記の(1)により、陸上部からの施工が可能な施工箇所について、陸上歩掛かりを適用し、また、(2)により、「棚式岸壁」の歩掛かりを適用して計算したとすれば、次のとおり、積算額を合計で約1億3100万円(国庫補助金相当額約6450万円)低減できたと認められた。
(1) 桟橋式岸壁工事19工事については、支保工において新たにトラックレーンの運転経費の計上が必要となるものの作業船の運転経費が不要又は少なくなることから、支保工費及び型枠費の積算額を約9288万円(国庫補助金相当額約4574万円)低減できた。
(2) 波除堤等工事4工事については、新たにトラックレーンの運転経費の計上が必要となるものの作業船の運転経費等が少なくなることから、積算不足となっていた型枠費の機械経費の一部を考慮しても、型枠費の積算額を約3815万円(国庫補助金相当額約1880万円)低減できた。
3 当局が講じた改善の処置
本院の指摘に基づき、運輸省では、4年11月に、陸上施工と海上施工に対応する支保工や型枠の歩掛かりの適用の基準を示したり、桟橋式岸壁の上部工とその他の形式の構造物の形状の特徴を示したりして、適切に積算が行われるよう積算基準を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 宮城県ほか11事業主体 東京都、大阪府、宮城、新潟、愛知、鳥取、島根、大分、宮崎各県、神戸、佐世保両市、名古屋港管理組合
(注2) 波除堤 船舶の係留区域の静穏を保つため、港内の発生波及び航行船舶による航跡波等を低減させる構造物
(注3) 宮城県ほか9事業主体 東京都、大阪府、宮城、新潟、愛知、大分、宮崎各県、神戸、佐世保両市、名古屋港管理組合
(注4) 東京都ほか2事業主体 東京都、鳥取、島根両県
(注5) 棚式岸壁 杭等とその上部に打設した底面部が平坦な棚状のコンクリートから成る岸壁
(参考図)