会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) | (項)港湾事業費 (項)離島港湾事業費 (項)沖縄港湾事業費 (項)港湾事業資金貸付金 (項)国土総合開発事業調整費 |
部局等の名称 | 第一、第三、第四各港湾建設局、沖縄県 |
補助の根拠 | 港湾法(昭和25年法律第218号)、奄美群島振興開発特別措置法 (昭和29年法律第189号)、沖縄振興開発特別措置法(昭和46年法律第131号) |
事業主体 | 県5、市1、計6事業主体 |
補助事業 | 秋田県秋田港ほか11港の港湾整備事業 |
補助事業の概要 | 港湾施設の整備を行う事業 |
事業費 | 平成2年度 | 1,615,537,780円 |
平成3年度 | 1,429,761,710円 | |
計 | 3,045,299,490円 | |
上記に対する国庫補助金交付額(無利子貸付金の貸付額を含む。) | 平成2年度 | 744,313,037円 |
平成3年度 | 546,635,017円 | |
計 | 1,290,948,054円 | |
低減できた工事費 | 123,737,965円 | |
上記に対する国庫補助金相当額(無利子貸付金の貸付額を含む。) | 47,368,020円 |
上記の補助事業で築造した岸壁等の裏込工の設計に当たり、必要のない防砂板を設置することとしていたため、工事費約1億2373万円(国庫補助金相当額約4736万円)が不経済になっていた。
このような事態が生じていたのは、運輸省において、防砂板の設置について具体的な基準を定めていなかったことなどによるもので、この基準を整備し経済的に施工する要があると認められた。
本院の指摘に基づき、運輸省では、平成4年10月に、直立消波ブロック又は方塊による護岸、岸壁及び物揚場築造工事の裏込工の設計における防砂板設置の基準をとりまとめ、今後、この基準により、現場条件を考慮して必要のない箇所に防砂板を設置しないよう港湾管理者を指導することとする処置を講じた。
1 補助事業の概要
運輸省では、港湾施設の整備を計画的に推進するため、港湾整備事業を実施する地方公共団体等の港湾管理者に対し、毎年度国庫補助金(無利子貸付金を含む。以下同じ。)を交付している。
そして、秋田県ほか4県1市(注) の計6事業主体では、平成2、3両年度に、秋田港ほか11港において、秋田港重要港湾改修工事N101−40ほか29工事を工事費30億4529万余円(国庫補助金12億9094万余円)で施行している。
上記の各工事は、港湾管理者が港湾整備事業の一環として護岸、岸壁及び物揚場(以下「岸壁等」という。)を築造するものである。これら岸壁等は、地盤の強度により基礎工の施工方法に多少の差異はあるが、基礎捨石上に壁体としてコンクリート製の直立消波ブロック又は方塊(以下これらを「ブロック」という。)を据え付け、その背後に裏込工として厚さ5mm程度の合成樹脂系の防砂板を設置したうえ割石(以下「裏込石」という。)を投入し、更にその背後に裏埋工として土砂(以下「裏埋土」という。)を投入するなどして築造するものである(参考図参照) 。
上記の各工事においては、裏込工における防砂板について、次のとおり設計していた。
(ア) ブロック背後の裏込石が波浪による吸出し作用によって隣接するブロックの間隙から海外へ流出し、岸壁等の背後上面に施工するエプロン舗装、水叩き等が沈下したり陥没するのを防止することを目的として、ブロックの背面に防砂板を設置する。
(イ) 秋田港重要港湾改修工事N101−40ほか9工事では、(ア)に加え、裏込石の背後に施工する裏埋土が流出し海水を汚濁させるのを防止するため、基礎捨石と裏込石との間にも防砂板を設置する。
そして、上記の30工事における防砂板の設置費(材料費及び施工費)を総額123,737,965円と積算していた。
2 検査の結果
このように、上記の30工事では、いずれも防砂板を設置しているが、その設置については具体的な基準が定められておらず、各事業主体が独自の判断で行っていることから、各工事における防砂板設置の必要性について調査した。
調査したところ、木件各工事においては、次の理由により防砂板を設置する要はないと認められた。
(ア) 裏込工の素材として使用される裏込石の品質規格については、運輸省港湾局編集の「港湾工事共通仕様書」(以下「共通仕様書」という。)によれば、図面及び特記仕様書の定めによることとなっている。そして、本件各工事においては、裏込石の規格を1個当たりの径が5cmから15cm、又は重量が5kg(一辺が約12cmの砕石に相当)から200kg(同じく約42cmの砕石に相当)としていた。
一方、ブロック据付工における隣接ブロックとの間隔の許容範囲については、共通仕様書及びこれに準じて各港湾管理者が定めた港湾工事の仕様書等において出来形管理の基準が定められており、これによればいずれも3cm以下でなければならないとされている。
(イ)本件各工事においては裏埋土の流出を防止するために、別途、図面又は特記仕様書により裏込石と裏埋土との間に合成繊維系の防砂布を敷設することとしている。
このように、上記の30工事においては、裏込石の径は隣接ブロックとの間隔の許容値を上回っており、また、裏込石と裏埋土との間には防砂布を敷設することとなっているので、現場条件からみて裏込石が波浪により海側へ流出して構造物に悪影響を及ぼしたり、裏埋土が流出して海水を汚濁したりするおそれはないと認められた。
したがって、ブロックの背面又は基礎捨石と裏込石との間に防砂板を設置することとして設計しているのは適切とは認められない。
現に、本院が4年中に、他の事業主体が行っている同種のブロックによる岸壁等築造工事の裏込工について実地に調査したところ、11県、1市では、防砂板を設置していない状況であった。
上記により、本件各工事について防砂板を設置しないこととして施工したとすれば、工事費を約1億2373万円(国庫補助金相当額約4736万円)低減できたと認められた。
3 当局が講じた改善の処置
本院の指摘に基づき、運輸省では、4年10月に、ブロックによる岸壁等築造工事における防砂板設置の基準をとりまとめ、今後、この基準により、現場条件を考慮のうえ必要のない箇所に防砂板を設置しないよう港湾管理者を指導することとする処置を講じた。
(注) 秋田県ほか4県1市 秋田、石川、佐賀、鹿児島、沖縄各県、大阪市
(参考図)